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桃(こうはく)~Hold hands with you~  作者: 4G
第2章 冬樹
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第59話

「えぇっと、後藤くんと三塚さんと言ったかな?もう一度用件を聞かせてもらってもいいかな…?」

「先週発売されたヌ~にNGのことが少し書かれていましたよね。ここに書かれた続報ってのを教えてほしんです」

「んー。情報は僕らにとって商品だからね、タダでそれも急に訪ねてきた見ず知らずの君たちに教えることはできないよ」


頭の後ろで結われた長い白髪を手で梳きながら、田中と名乗ったヌ~の編集者は二人に説明した。冬樹と葵は、何度も同じ説明をさせられ、その度に同じ回答を返されイラついていた。


「だからさっきからその対価として、あたし達が持ってる情報を差し上げると言ってるんですよ」

「うーん。うちの雑誌は歴史ある雑誌だからね、信頼できる情報筋からしか情報を買わないことにしてるんだよ。過去にそれでガセネタ掴まされて、大変なことになったから」

「分かりました。じゃあ、まずは私たちの情報をお伝えしますから、それで信頼できると思っていただけたら、そちらがつかんでる情報を教えてください」

「うーん…。まぁ、あんまり期待しないでね」


葵はカバンからノートの切れ端を取り出し田中の前に差し出した。


「これは?」

「あたし達の友達が残したメモです。ここにRDCに書かれてるRDCについてあたし達は調査してるんです」

「なんで君たちはRDCについて調査してるんだい」

「田中さんはNGの稼働日以降、日本中の至る所で多くの人が失踪しているのを知っていますか」

「あぁ、その類の情報は毎日のように提供されるからね。それに昨日も君たちと同じようにそのことについて情報提供してくれた少年がいるんだ」

「……もしかして、その少年の名前、羽生光春じゃないですか」

「…っ⁈んんっ、僕たちに情報を提供してくれる人たちは僕たちの事を信頼して情報を提供してくれているんだ。情報元は明かせないよ」

「あたし達、光春の友達なんです。このメモだって襲われた光春が唯一残してくれたもので」

「羽生君が襲われた⁈それは本当なのか」


光春が襲われたと聞かされた田中は突然立ち上がり、机をバンっと叩きながら葵を問い詰める、突然の出来事とあまりの迫力に葵は小さな体をビクッと震わせたが、すぐに姿勢を戻し続ける。


「昨日の夜、何者かに襲われて今も意識が戻っていません」

「そうだったのか…」


田中は嘆きのような声でそうつぶやくと、力なくソファに体を戻した。葵は構わず続ける。


「田中さん、昨日光春に教えた事、あたし達にも教えてもらえませんか」

「俺たち、あいつが命がけで守ったこの情報を無駄にしたくないんです。どうか。お願いします」

田中は少し悩んでいたが、すぐにその顔は真剣な顔になった。

「…分かった。羽生君のお友達という事なら、君たちにも情報を提供しよう。ただし、一つ条件がある」

「それは…」

「君たちがRDCやこの事件の事について何か情報を掴んだら逐一僕に情報を提供する事。もちろんタダとは言わない。僕の方も何か情報を掴んだら君たちに情報を提供する」

「つまり、互いが情報の提供者になるという事ですか」

「ふむ、流石羽生君のお友達だ、話が早くて助かるよ」

「分かりました。それでよろしくお願いします」

「よしっ、契約成立だ。それじゃあ、昨日羽生君に提供した情報と、今日羽生君に提供しようと思っていた新しい情報。それを君たちに提供しよう。くれぐれも他言無用で頼むよ」


そう言うと田中は昨日光春に話した情報を、時折葵と冬樹の反応を確かめながら語った。一通り話し終えると、田中はおもむろに立ち上がり奥の部屋へ行き、3人分のお茶をお盆に載せ戻ってきた。


「と、ここまでが昨日羽生君に話したことだ」

「RDCは研究機関の名前だったのか。という事は、このメモは光春がここに来る前にメモとして残していたものなんですかね」

「いや、昨日羽生君がここに来たときはメモの類を一切取っていなかったんだ」

「あいつ記憶力いいから…」

「だとしても、メモを取った方がいいと僕がアドバイスしたから、このメモはここを出てから書いたものじゃないかな」

「なるほど、ちなみに田中さんはRDCが何の略か掴むことはできたんですか」

「いいや、申し訳ないがそこまでは…」

「そうですか…」


光春の残したメモの答えを解き明かせるかもと一瞬期待した葵は、田中の返答に明らかに肩を落とした。


「ところで、今日光春に話そうと思っていた情報って何ですか」

「あぁ、実は明後日RDCでホームカミングデーが行われるらしい」

「えっ?RDCってどこにあるんですか」

「渋谷だ」

「渋谷?でも、NGを開発するような研究機関の施設がそんな都心のど真ん中にあったら噂になるんじゃ」

「それが噂になっていない。これは君たちが巻き込まれている人々の目に亡くなった人、壊れた町が映らないという現象に酷似しているのではないかと思っているんだ」

「確かに…。じゃあ、そのイベントに潜り込めば」

「あぁ、RDCが一体どんな研究機関なのか。上手くいけばNGとはいったいどんなシステムなのか、そこまでたどり着けるかもしれない。ただ、危険は伴う」

「葵、いこう」

「行くって、まさかホームカミングデーに⁈そんなの無茶よ、まだ決まった訳じゃないけど最悪の場合、敵の総本山に自分からのこのこと行くことになるのよ⁈」

「でも、この機会を逃すと二度と事件を解決できないかもしれない。光春…、紅葉のことを考えると居ても立っても居られない。俺は一人でも行くよ」

「ちょっ!冬樹?!」

「後藤君、ヌ~の編集部として君に正式に取材協力を申し込みたい」

「田中さんまで!」

「大丈夫だ、葵。俺は大丈夫だから」


葵の両肩に手をのせ、小さな子をあやすように語り掛けた冬樹は、そのまま田中との打ち合わせに入ってしまった。蚊帳の外に出された葵は、疎外感と心臓が握りつぶされそうなほどの不安感に襲われていた。


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