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桃(こうはく)~Hold hands with you~  作者: 4G
第2章 冬樹
58/67

第58話

出すのを忘れていただけなんです!!

…‥いえ、結局私のミスです…すいません!

「図書館に来るのなんて何年ぶりだろ」

「あんた、あたしと光春がいくら誘っても頑なに図書館に行こうとしないわよね。なにか嫌な思い出でもあるの」

「本が苦手なんだよ…」

「あんたが毎日アホ面しながら呼んでる漫画も本よ?」

「本は本でも文章はばぁって書かれてるやつが苦手なんだよ。読んでると頭が痛くなるというか」

「活字読まないとだめよ?まぁ今はあんたの本嫌いをお説教する時間も、直す時間もないけど」

「あぁ、そうだな。とりあえずっぽい本を片っ端から集めてもらったけど…」


次の日、光春の残した紙切れに書き残されていた「RDC」という謎のアルファベットについて調べるため、冬樹と葵は近くの図書館へと来ていた。二人の目の前には大量の本、雑誌、新聞のスクラップが置かれている。


「司書さんに聞いたらRDCついて書かれたり、それを取り扱った記事がある本はないそうよ。だからNGについて書かれてるだろうってやつを集めてくれてるんだから泣き言言うんじゃないわよ」

「確かにそうだけど…。この量は流石に吐き気がしてくるぞ…」

「じゃあ、あんたはあきらめるのね(ニコッ)」

「…よしっ。やるか」


冬樹は自分の頬を軽くたたき、目の前の資料に手を伸ばし中を確認し始めた。


「あんな一言でやる気になるなら、最初からやればいいのに」


葵も、冬樹に負けじと資料の山を漁り始めた。二人は次々に資料を読み進め、机の上にあった資料はみるみるその量を減らしていった。




「くぅっーー。結構読み進めたけどこれと言った手掛かりはないわね」

「なんかどの本とか雑誌とかを読んでも、おんなじことしか書いてないよな」

「これでしょ」


葵は、ちょうど手元に広げていた雑誌を冬樹の方へ向け、文章を指さしながら読み上げ始めた。それに被せるように冬樹も朗読する。


「「多世代型移動通信システム(以下NG)は国内の主な公共交通事業者がその主たる管理システムに採用することを表明している。もちろん、国内の通信事業者も現状の6Gからの段階的移行を表明しており総務省は45年度までの完全移行を事業者に求めている」」


静かな館内に、絞った二人の声だけが響く。窓からはまばゆいオレンジ色の夕日が差し込んで来て、二人がどれだけ長い時間資料を読みふけっていたかを暗にしめしていた。


「これじゃあ何も分からないわよ…」

「というか読み始めてから「RDC」って一回も見てないぞ…。本当、光春のやつどこで「RDC」なんて……。本当に存在するのか?」

「そもそも、それが組織なのか、何かのシステムなのか、はたまた人名なのかが分からない以上これ以上調べようがないものね…」


二人は、半ばあきらめムードで資料をまとめはじめた。なにも得られなかった喪失感、貴重な一日を無駄に費やしてしまった虚無感。自然と二人の間には沈黙が流れる。


「あのー」その沈黙を破るかのように、黒髪おさげでまんまる眼鏡をした小柄な司書さんが二人に話しかけてきた。その手にはなにやら雑誌が握られている。

「あっ、閉館ですか?すぐに片付けますので、ごめんなさい」

「あっ、閉館もそうなんですけど、今日新しく収蔵されたこの雑誌にNGのことが書かれているみたいなので一応お渡ししておこうかと」


司書さんが持ってきた雑誌の表紙には「週間ヌ~」と書かれていた。いわゆるオカルト雑誌のようだ。確かに表紙に隅っこの方にNGと書かれている。


「ありがとうございます」

「閉館まであと15分くらいなんですけど、私がある程度本を片付けておきますのでぎりぎりまでその雑誌ご覧になってください」

「えっ、いいんですか?」

「その雑誌、今日収蔵されたものなので貸し出しができないんですよ…。なのでせめて観覧して帰るだけでもできればなぁと思ったんですが」

「ありがとうございます、お言葉に甘えさせてもらいます」


葵がぺこりと頭を下げると、司書さんはにこりと笑って二人がまとめておいた本の山を軽々と持ち上げて本棚の森へと消えいった。


「持ってきてもらったのはいいものの、あんまり期待できないな」

「オカルト雑誌だし、たぶんいわれもない陰謀論とか書いてるんじゃないかしら。でも、せっかく司書さんの好意で持ってきてもらったわけだしぱぱっとみちゃいましょ」


葵はぱらぱらと雑誌をめくり目当てのページを探す。本全体を2,3周ぱらぱら目を通したところで葵は手を止めた。


「やっと見つけた…。どこかのページに特集が組まれてるのかと思ったら端の方に、それもこれだけ?」

「みせてくれ」


葵は、そのページを開いたまま机の上においた。二人は頭を突き合わせそれを覗き込む。


「なになに、NGにささやかれている噂。毎日大々的に宣伝しているにも関わらず、どのメディアも誰が開発者なのか、開発者の開発秘話と言った話、それに開発元の情報を一切記事にしようとしない。これは単に取材力がないのか、それとも何かしらの陰謀なのか…。我々週刊ヌ~は現在独自取材を慣行している。続報を待たれよ…か」

「なんか今までの雑誌とは毛色が違う記事じゃない?」

「あぁ、それにこの独自取材の内容、気にならないか?」

「もしかすると、RDCにつながる情報がゲットできるかもしれないわね」

「あぁ、じゃあ善は急げだ。本を戻したら、この出版社まで行くぞ」

「分かったわ、はやく片付けちゃいましょ」


静かだった図書館が活気に包まれ、館内には本を片付け回るせわしない足音が響き渡る。


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