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桃(こうはく)~Hold hands with you~  作者: 4G
第2章 冬樹
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第57話

ここをちょっと…ここもちょっと…と書き直していたらいつの間にか水曜日でした…

言い訳です。申し訳ない!


「じゃああたし帰ります」


びしゃびしゃになった私服がすっかり渇き、借りていた病院着から着替えた葵は光春の病室の前で光春の母親にそう告げた。


「来てくれて本当にありがとう、葵ちゃん。光春が目を覚ましたらすぐに連絡するから」

「はい、電話待ってます」


ぺこりと一礼をし、目線を戻すと「羽生光春」とかかれた札が目に留まった。あふれだしそうな涙をなんとかこらえ、葵は病院を後にした。


――――――――――――


玄関を勢いよく開け家の中に入ると、そのままの勢いで階段を駆け上がり冬樹の部屋の前にたどり着いた。一呼吸おいて、おもいっきりドアをたたいた。


「冬樹、あんたいつまでくよくよしてんのよ。光春が…、光春がどんな思いで殴られたと思ってんの!


ノート片を見た時、叫びたくなった気持ちをここぞとばかりにぶちまける葵。ドアをたたく拳にも力がこもる。


「あんたが部屋に籠り始めてから、もう1か月以上よ。紅葉を刺殺した責任取ろうと思わないの…?」


絶叫といっても良い声で、いつしか泣き叫びながら部屋の中にいる冬樹に感情をぶつける。


「そろそろ出て来なさいよ…。じゃないと紅葉と光春に…顔向けできないじゃない…」


葵の手のひらは爪が食い込み、真っ赤に染まっていた。額をドアに擦り付けながらへなへなとその場にへたりこんだ。儚い少女の涙を隠すかのように、長い黒髪が重力に逆らうことなくまっすぐ垂れた。その時、突然ドアが開き、体重をすべてドアに預けていた葵は、そのまま床におでこを勢いよくぶつけた。


「いったいっっ!いきなり開けるんじゃないわよ!」

「さっきまではヒステリック気味にあけろあけろ言ってたくせに、開けたら開けたで開けるなって。情緒不安定かよ」


懐かしい声がして葵は、涙でぐしゃぐしゃになった顔をあげる。そこには、やつれた幼馴染みの姿があった。


「ひっでぇ顔だな、葵」

「…久しぶりに話したかと思えば、それしか言えないの…」


再び葵の目に溢れんばかりの涙があふれだす。しかし、これはさっきの涙とはちがう涙であった。


「その、なんだ…。悪かったな」

「ずずっ…なにがよ」

「たくさん心配かけて」

「…言葉だけじゃ信用できない」

「じゃあ何しろって言うんだよ」

「……何したらいいと思う?」

「えっ…」


葵は背伸びをして静かに目を閉じた。その二人の間には永遠にも思える沈黙の時間が流れる。冬樹は、突然の出来事に頭が追いついていないのかしどろもどろしている。


「…いくじなし」


いつしか葵は目を開けていて、顔には怒りがにじみ出ていた。


「もういいわ、とりあえず下に来て頂戴。下で話をしましょう」

「なな、なにについて話し合うんだよ」

「RDCについてよ」

「??RDC?なんだそりゃ」

「それはご飯食べながら。とりあえずお風呂入ってきて、ひどい匂いだから」

「うっ…。そんなに匂うか」

「匂うとかそんな次元じゃない。臭すぎて鼻が使いものにならなくなりそう」

「あっ、はいお風呂入ってきます」


――――――――――――――――


「あんたこの1か月何食べて暮らしてたのよ。あたしがつくったご飯にほとんど手を付けてなかったじゃない」

「自分の部屋に非常食というか、お菓子と言うかを隠してあったんだよ。それもかなり大量に」

「あんた、1か月お菓子しか食べてなかったの?」

「たまに葵が学校に行ってる間に冷蔵庫を漁った」

「たまに冷蔵庫の中に入れてた食料が無くなってると思ったらあんただったのね。あたしが作ったご飯は食べなかったくせに…」

「それは…わるかった…」


冬樹がお風呂から上がると、二人は久しぶりにダイニングテーブルを囲んだ。葵が入れた紅茶と葵が焼いたクッキーがテーブルのうえを彩っている。


「葵?それで、さっき言ってたRDCって何なんだ」


クッキーをつまみながら、冬樹が葵に答えを急かすように質問をぶつける。葵は傍らに置いていたくしゃくしゃの紙を広げて冬樹の前に差し出した。


「これは?」

「その前に光春のこと話させてよ」

「あぁ…」

「おばさんが言うには何者かに突然襲われて、意識不明の状態で病院に運ばれたみたい。そして今も、意識が戻ってない」

「そうか…」

「ねぇ、誰が光春を襲ったんだと思う?」

「本当に光春を襲ったのが人なのかも怪しいけどな」

「…っ!まさか、魔物が光春のことを襲ったって言うの⁈でも、あいつはなんども魔物と戦ってそのたびに勝ってきてる」

「でもそれは、俺たちと一緒に戦った結果だろ。あいつ一人に何体も魔物が襲ってきたとしたら、勝てっこない」

「それはそうだけど…」

「まず光春のことを俺に話したって事は、この紙は光春と関係あるんだな」

「えぇ、おばさんから託されたの。光春のポッケにくしゃくしゃにまるまった状態で入ってたらしいんだけど、おばさんが持っていても仕方がない、あたしたちに渡した方が役に立つだろうって」

「そうなのか…。でも、なんでこんなにくしゃくしゃになってるんだ。それも、無理やり引きちぎったみたいにぼろぼろだし」

「あたし、おばさんの前では言わなかったんだけど、光春がそのページだけ引きちぎってポケットに入れたのかなって」

「…つまり?」

「今日の昼間、光春がうちに来たのよ。でも、何か調べ物をするからって飛び出して行っちゃって」

「まめだからな、光春は。集めた情報をノートにメモしておくと思う」

「光春を襲った犯人の目的って、もしかして光春の口封じと、集めた情報を奪う事だったんじゃ」

「その可能性もある。でも、本当の所はわからいから先入観は捨てるべきだ。それよりも、光春が俺たちに残したこのRDCっていう3つのアルファベット、それを解読するがいましないといけないことじゃないか」


冬樹は、親友の残したくしゃくしゃのノート片をぎゅっと握った。

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