第45話
た、大変お久しぶりです…
「紅葉―っ!冬樹―っ!こっちよ」
「わるい、人混みにのまれちまって」
「まぁ、あたしも一人だけ気持ちが焦っちゃって先走っちゃたから…。ごめんなさい」
「どうしたんですか葵。いつもなら、遅いっ!って怒ってそうなのに」
「俺がちょっと叱ったんだよ、紅葉さんと冬樹がついてこれてないだろ!お前だけ先に行っても会場には入れないんだからって」
「光春にしてはまともなこと言ったんだな」
「おい冬樹、俺はいつもまともだぞ?」
「はいはい、せっかくいい感じでまとまりそうだったんだからそれでいいじゃない。それよりも流石に時間がまずいから入るわよ!」
葵の号令と共に一行は入場ゲートをくぐり、観覧エリアに入った。ショーの開演間近ということもあり、ほとんどの観客は席についており、今から始まるショーの事や今日一日の思い出を笑顔と共に振り返っていた。
「私たちの席はここよ」
「本当に最前列のど真ん中なんだな」
「このチケットが当たった時からそういってるじゃない。あたしのいう事が信じられないとでも言いたいわけ?」
「いや、そうじゃなくてそんなに運がいい事あるんだなってちょっとびっくりして」
「冬樹は昔からくじ運ないもんな」
「あっ、小学生の頃の商店街のくじ引き覚えてる⁈」
「あーっ!あれか、あれはこいつがちかって思ったし、こいつほんとにくじ運ないんだなって」
「おいもうやめろよ…。その話何回するんだよ…」
「そのくじ引きのはなしって何ですか?」
「あっ、この話紅葉にしたことなかったっけ。あのね、あたしたちが小学生のころ商店街でくじ引きがあったんだけど、冬樹が行った時くじがのこり2枚だったの」
「で残ってた景品が当時流行ってたゲーム機と残念賞のティッシュで、こいつにぶいち外してポケットティッシュ貰って帰ったんだよな」
「うるせぇーな。ポケットティッシュももらって嬉しいだろ?」
「ふふふ。そんなことがあったんですね、でも私は冬樹さんが二分の一を外しても運がないとは思わないかもです」
「えーなんで?」
「二分の一って言ってしまえばそれとそれ以外しかないんですよ、他に選択肢がないそれとそれ以外。それでティッシュが当たったということはそれはある意味運がいいのでは?」
「うーん、あたしには難しいけど…」
「紅葉さんのいう事も見方を変えるとそうなるのかも」
「まぁ、私の考え方なので、これが正解って言うことでもないと思います」
紅葉がここまで言い終えると、会場は急に暗転し、会場の人々は思い思いに話していた口を止め、ステージを注視する。
『これは私たちが暮らす世界とは別の、絶対に相容れることがないそんな世界の物語』
「今日もいいお天気、あっ郵便屋さんこんにちは。今日は何か面白いお話ある?」
「ごきげんようメイ王女。今日は隣国の面白い話題があるよ、なんでも隣の国が建国を記念したパーティーを開くらしい。それも周辺諸国のお偉いさんたちを招くらしいから、もしかしたら国王陛下も招待されるかも」
「なんて素敵!もしもお父様が招待を受けたら私もお願いして一緒に連れて行ってもらう事にしますわ」
「えぇ、それがいい。メイ王女は生まれてこの方国外に出たことがないですから、国の外を見てみるいい機会になるかも」
「こうしてはいられないわ、さっそくお父様の所にいってお願いしなくっちゃ。郵便屋さんありがとう、また面白い話題があったら教えてくださいね」
「あっ、メイ王女…」
郵便屋の掛け声空しく、メイ王女はあっと言う間に宮殿の中へと消えていった。
「ここから場面が変わって宮殿の謁見のまでの父と娘の会話になるのよ」
「おいうるさいぞ葵、俺このショー見た事ないんだから黙っててくれよ」
場面は葵の言う通りうって変わって宮殿の謁見の間になった。ワンダーランドのシンボルである城には美しいプロジェクションマッピングが施されショーを彩っている。
「メイ、どうして私の願いが聞けぬのだ。国外は危険が多すぎる、か弱いお前を何が起こるか分からない国外に連れていくことなどできぬ。絶対にできぬ」
「私は国の外を知らぬまま老いぼれていくなど絶対に嫌ですお父様!」
「メイ!待ちなさい、メイ!」
国王との謁見から数週間、メイは国を飛び出し周辺の国を周遊し、危ない目に遭いながらもたくさんの良い人に恵まれ国に帰ってくるシーンに移る。数週間ぶりの故郷への帰省、しかしメイが見たのは静まり帰った故郷の姿であった。
「おぉ、メイ王女!ご無事でしたか」
「郵便屋さん、これは一体何事ですか。なぜ町がこんなに静かなんですか!」
「どうやら、この国の住人は悪い者によって永い眠りにつかされてしまったようです。私は小包の運送で隣国にいましたから無事だったのです」
「私はお父様の喧嘩してしまい…、はっ!お父様!」
その時、BGMがぷつりと途切れ、ステージ袖から出てくる王様の格好をした演者の靴音だけが静かな会場にこだまする。
「お父様!無事だったんですね」
「メイ…」
「メイです、お父様の娘のメイが無事に戻ってまいりました。ごめんなさいお父様、お父様がおっしゃる通り国の外は恐ろしいことばかりでした。でも、美しい髪をもつ人、瞳を持つ人、心を持つ人。そして草木と小鳥と、わたしはたくさんの世界を知ることが出来ました」
「メイ…」
小刻みに震える国王、会場はその次の動きやセリフを息を呑んで待った。
「ちがう、」
「どうしたんだ、何が違うんだ葵」
「王様のセリフと動きがいつもと違うの…。何が起こってるの」
「ちょっとセリフ飛ばしちゃったとかよくあることだよ」
「ああっっっっ」
静かな会場に雄叫びがこだまする。みるみるその人影は大きくなっていき、城の背丈を悠々と超え、なにかに取り憑かれ苦しむように腕を振り回す。
「うそっ…」
「おい、何してるんだ、パニックが伝播する前に逃げるぞ」
次の瞬間、大きな音と共に城が崩れ落ちた。これはプロジェクションマッピングなどではない、紛れもない現実だ。
書きながら机に頭こすりつけてました…書かなきゃってわかってても別のことに気をそらしてしまう自分がいて、いつの間にかこんなに時が経っておりました。いっそのこと3日連続投稿とか自分にあえて負荷をかけていこうかな…




