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桃(こうはく)~Hold hands with you~  作者: 4G
第1章 紅葉
42/67

第42話

「馬鹿め、本当にコーヒーをラッパ飲みさせられるとは思ってなかったぞ」

「なによ、最初は調子いいこと言ってノリノリで口付けてたじゃない」

「まぁまぁ冬樹。ここは穏便に、なっ?葵がキレてまたどこかにいくと面倒だぞ」

「それを本人の目の前で言うあんたもどうかと思うけど、まぁいいわ、さっそく抽選会場行くわよ」


軽くエイエイオーしている女子二人を冷ややかな目で見る男子ふたり、そんな男どもの視線に興味がない葵は前に突き出した右手をそそくさと戻すとなんの前触れもなく歩き出した。こいつ何考えてんだ?と言わんばかりに冬樹と光春は顔を見合わせた。


「ところで葵、一つ聞いてもいいか」

「どうでもいい事なら一つでも聞かないで頂戴」

「話の内容を聞いてから突っぱねろ、さっきからお前たちが言ってるショーってどんなのなんだ?いっつもワンダーランド来るときは乗り物ばっかり乗るからまじまじと見た事ねぇんだよ」

「あら、ショーに興味あるの?」

「興味あるというか、何を見せられるのかなぁと。先にちょっとでも情報知ってた方が面白いだろ」

「ちょっとでも面白くショーを見ようとしている時点で興味津々じゃない。まぁいいわ、このショーはね…」


と言うと、葵は急に手の平を目の前で組み、うっとりとした表情でショーのあらすじを語った。あまりにも長いので軽くまとめると、ある国の王子と姫の話でラストに自身の父である王との対決が迫力満点の花火と共に繰り広げられるというストーリーである。ここまでいつ息継ぎをしていたかこっちが心配になるくらいのマシンガントークで語りつくした葵。間髪入れずに冬樹からツッコミが入る。


「なぁ、葵。俺はショーのあらすじが知りたかったんだよ、結末までは知りたくなかった…。盛大にネタバレしてんじゃねぇよ!このドアホがっ」

「あっ…」

「何があっ、だよ。ショーで黒幕の王さまばっかり目で追いかけちゃうじゃねぇかよ。俺はかわいい姫さまを追いかけてぇよ、なんで1時間以上もおじさんのこと考えながらショー見なきゃいけねぇんだよぉ…」

「ちょいちょい冬樹。本音が口からぽろぽろしてるぞ」

「葵も、冬樹さんがショーに興味持ってくれたからって言っておいたが過ぎますよ?猛省してください」

「「ごめんなさい」」

「まぁ俺たちに謝られてもなぁ?紅葉さん」

「えぇ、ただせっかくみんなで遊園地に遊びに来てるんですから楽しくいきましょ」

「紅葉の言う通りだわ、せっかく遊園地来たのに喧嘩ばっかりだなんてなにも面白くないものね。あっ、あそこよ目指してた抽選会場」

「抽選会場って言う割には人少ないんだな。葵の言い方的に今日ここにきてるお客さんみんながみんな抽選に来てるのかと思ってたぞ」

「まぁ、抽選自体は開園からショーが始まるぎりぎりまでやってるしね。冬樹がさっき言ってたみたいに乗り物乗りにきて、ショーとかパレードとかには一切興味ありませんって言う人もいるだろうし」

「まぁ、なんにせよ早いとこ抽選して暴走機関車のリベンジ行こうぜ」

「言ったそばから…。みんなチケット貸して、抽選に必要だから」


そう言うと葵は手馴れた手つきで三人のチケットを回収し、自分の分もまとめて機械に通す。冬樹と光春は葵が何をしているのかさっぱり分かっていないので、抽選に興味なさげにハニーソルトポップコーンをむさぼりながら談笑していた。突然ぱっぱかぱーんというけたたましい音と光春の驚き何かを見つけた声が同時に抽選会場に響き渡った。


「おい、冬樹これ見てみろよ!」

「リスみたいな顔してしゃべるな。…えっ⁈」

「あんたたち、なんで抽選結果にひとつも興味示さずポップコーン片手に盛り上がってんのよ」

「いや、葵!これ見てくれよ」


光春が興奮しながらポップコーンを葵の方に差し出す。しかし、葵は瞬く間にそのポップコーンを食べてしまった。


「あら?あーんしてくれたんじゃないの?」

「お前それでも人間か?誰がお前なんかにあーんするかよっ!」

「よーしよしよし、大丈夫だぞ光春、こいつは人間の皮かぶったなにかだから。せっかくいい形のポップコーン見つけたのにつらかったなぁ」

「この二人何やってるんですか?」

「紅葉、みちゃだめよ。ねぇあんたたち仲良しこよしはあとにして!ほらこれ見なさい」


そういうと葵は四枚の紙をひらひらさせて見せた。


「なんだよそれ。お前との奴隷契約書なら俺たちは一切サインしないぞ」

「誰があんたたちと契約するのよ。当たったのよ、ショーの席!めったに当たらない超超ちょープレミアチケットなんだから幸運の持ち主であるこのあたしに感謝しなさいよね。」

「それもなんと!席が一番最前列なんですよ!」

「あー紅葉に先に言われちゃった」

「最前列だと何かいいことあるのか?」


完全に半べそをかいて当分立ち上がれそうにない光春の頭を撫でながら、冬樹が紅葉に質問する。


「最前列だと、ショーの途中でキャラクターたちがハイタッチしに来てくれることがあるんです。めったにできない体験ですよ!」

「そしてそしてこの席って言うのは完全ランダムで決まるからどれだけ座りたくても、どれだけお金積んでもなかなか手に入らないプレミア中のプレミアなのよ。だからポップコーン一つでくよくよしないでちょうだい」

「なんだその言い方!あの形のポップコーンは世界にたった一つしかないんだぞ。二度と出会えないんだぞっ!」

「今のは葵が悪いですよ?言い方に気を付けないと、ほら光春さんに謝りましょ?」

「…ごめんなさい」

「はい、よくできました!」

「なんか最近紅葉さんが保育園の先生に見えるときが時たまあるんだが気のせいだよな」

「きっと葵の扱いがうまくなったってことですね」

「それって、あたしが保育園児ってこと…」

「言葉を字面だけでとらえるな、例え、比喩だよ」

「まぁ、険悪なムードになりかけてますし、はやいところ乗り物乗りに行っちゃいますか」

「そうですね。最初は何乗ります?」

「そりゃぁ約束通りなぁ?」

「おっ、びっくりした。いきなり復活するな光春。まぁそうだな、それじゃあいきますか暴走機関車、いくよな?葵」

「うっ…、あたしの辞書に言い訳の三文字はないわ、いいわよ。暴走機関車でも暴走宇宙船でも暴走丸太ボートでもなんでも乗ってやるわよ」

「おっ、三大コースター制覇宣言来ましたっ!」

「やっぱりワンダーランドにきたらそうこなくっちゃな」

「二人ともジェットコースターに乗れるとなると元気もりもりですね」

「だってジェットコースター楽しいもんな」

「葵がべそ掻くのも見れるしな」

「二つ目が本当の目的でしょうがっ!」

「んなわけねぇだろ、てかつべこべ言ってないでさっさと行こうぜ。三大コースター今日一日で制覇できなくなっちまうぞ」


そういうと冬樹と光春は葵の事を両脇からがっちりとホールドし、ジェットコースターに連行し始めた


「こんか恰好で園内回るのはいやぁっ!」

「あはは…。ふぁいと葵…」

まずは投稿が最近遅れていること、本当に申し訳ありません。

先日からあまり体調(特に精神面)がすぐれず、執筆するのが遅れております。体調を万全に戻せるように過ごしつつ、できる限り金曜日投稿を心がけてまいります。

いつも読んでいただき、ありがとうございます!

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