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桃(こうはく)~Hold hands with you~  作者: 4G
第1章 紅葉
35/67

第35話

「くっ、またあいつら…。倒しても倒しても湧いて出てきやがる」

「どういうことですか?何回も倒してもってことは何度かあいつらと戦ったことがあるんですか⁈」


男が迫ってくるスカイ君軍団を見てぼそっと言った一言を聞き逃さなかった光春はその疑問を一気に男にぶつける。男は眉ひとつうごかさず目の前の軍団を睨みながら続ける。


「あれはだいたい2か月ほど前。突然展望階でスカイ君のぬいぐるみが動き出し、お客様や従業員を襲い始めたんです。それから特に規則性もなく今日まで何体も化け物になり、人を殺し、そのたびに倒してきたんですけど…。何度倒しても、次遭遇した時は必ず復活しているんです。一匹も倒しきれていないので、ああやって束になって…」

「冬樹、2か月前って…」

「あぁ、俺と葵が渋谷で襲われたのも2か月前だ」

「やっぱり、2か月前のあの日この世界が変わっちまったってことは間違いなさそうだ」

「あぁ、でも光春。その話は後にしないとっぽいぞ」

「一匹一匹はそんなに強くないんですけど、数の暴力で戦うたびに手ごわくなっていっているんです。気を付けて」

「ありがとうございます。光春っ!」

「あぁ、さっきみたいなヘマはしねぇよ」


冬樹と光春は目線を合わせることもせず、年季のはいったコンビネーションで迫りくる敵に向かう。それほど動きも早くなく、統率もとれておらず、遠距離攻撃の術を持っていないスカイ君軍団はものすごい勢いで迫ってくる二人に大きな口と、鋭い歯を使って威嚇する他ない。


「うぉりゃ」


サバイバルナイフで弱点と思われる胸の中心辺りに刃を突き刺す冬樹。勢いよく刃を引き抜くと、『きえぇぇ』と雄たけびを上げながらスカイ君は光に粒となって消えた。確かに殺した手ごたえ、冬樹はそれを糧にして自らが風になったかのように空を切り、スカイ君たちの間を縦横無尽にかけながら、そのスカイ君の集団を抜けた冬樹の後ろにはまばゆいほどの光がその強さを証明するかのように輝いていた。


「光春、どうだ⁈」


自分の目の前の敵を倒し終え、少し余裕のできた冬樹は仲間の方を振り向く。敵と交戦しながらなんとか冬樹の問いに光春が答える。


「くそっ、倒しても倒してもこいつら起き上がってきやがる。ナイフの差し込みが甘いのか?それとも、指す場所が間違ってるのか?」

「俺も加勢するっ!」


光春の苦戦ぶりをみて口よりも先に足がでていた冬樹。光春が一度切りつけ床に倒れたが、立ち上がろうとしているスカイ君に後ろからナイフを突き刺す。光の粒となって消えていくそれを見届けることなく、次のスカイ君にナイフを突き刺す冬樹は死の案内人のようである。


「冬樹、お前そんなに強かったか?昨日、ねずみと戦った時はあんな間抜けな動きしてたのによ」

「今日はナイフが手になじむというか、ナイフを突き刺す感覚がしっくりくるんだよな。っておい、誰が間抜けだ」

「まぁ、今のお前はめっちゃ頼りになるから許せよ。とりあえず、あとちょっと一気に駆逐するぞ」

「おうっ!」


そしてものの数分で、スカイ君軍団は跡形もなくスカイタウンから姿を消したのであった。


「ふぅ、疲れた疲れた。いい動きだったぞ、冬樹。昨日の動きが嘘みたいだった。お前ほんとに冬樹か?」

「お前が中学校の時告った女子の名前全員言えるが、俺が本物って証明した方がいいか?最初は、なn

「あぁぁぁぁぁぁーーー!分かった分かった、ふざけて悪かったよ」

「そんなに言ってほしくないなら最初から変なこと言うなよ。まぁ、お疲れ。光春がある程度ダメージ与えてくれてたから倒しきれたよ、サンキューな」

「まぁ、最後のいいところは全部お前に持っていかれちまったけどな。あれっ、お前ほっぺから血が出てるぞ、…ほら」


冬樹の頬を右手で軽くなぞり、人差し指の側面についた血を冬樹にみせる光春。冬樹自身も自身の左手で頬をなぞり、出血を確認した。


「あれぇ、いつ血が出ちまったんだろ」

「まぁ、そんなに深い傷じゃなさそうだから、手当は後回しだ」


そういいながら、事の一部始終を見ていた男の元へ駆け寄る光春。それに遅れまいと冬樹も後を追う。


「けがは大丈夫ですか。とりあえず、あいつらは倒しきれたと思います」

「君たちは一体…」

「それは、あいつを倒してから。おたくの話も聞きたいですから」

「分かった。それじゃあさっさと倒してしまおう。君たちなら一瞬で片付けてしまいそうだ」


一同の視線の先には、頭の上半分が無くなったスカイ君が、立ちふさがっていた。目が無くなったためか、その足取りはどこかおぼつかない。


「今日絶好調の冬樹、とどめを刺しちまえ」

「おうよっ」


光春に軽く背中を押され、勢いよく駆け出す冬樹。ナイフを構え、勢いよくスカイ君の胸にそのナイフを突き刺す。スカイ君は光の粒となって消えていく、その場にいた誰もがそう思っていた。しかし…


『きえぇぇぇぇぇっっっ』


スカイ君は消えるどころか、胸にナイフが刺さった痛みからだろうか、奇声を発しながらその体を勢いよくねじり、暴れ始めた。


「っいってぇ…」


当然光の粒となって消えると踏んでいた冬樹は、スカイ君が暴れ始めるとは微塵も思っておらず、暴れ始めたスカイ君に対処することができず、その場に尻餅をついてしまった。


「冬樹っ、大丈夫か⁈」


その一部始終を見ていた光春が慌てた様子で冬樹の元へ駆けよる。


「なんでやりきれなかったんだ…」

「今は反省会してる場合じゃない。いったん引くぞ」

「あぁ」


光春に引き起こされ、立ち上がった冬樹は素早くその場を立ち去る。その間もスカイ君の胴は大暴れしていたが、目も耳もなくなってしまったためか、冬樹たちの場所を特定し、攻撃を仕掛けてくることはなかった。


「今の攻撃でやりきれないのか…」

「私が見ていた限りでは、きれいに胸の真ん中に当たっていたと思います」

「僕もそう思います。冬樹の攻撃が悪かったわけじゃない…、さっきの軍団とあいつの違いは一体」

「私の体感ですけど…」

「何か気づいたことがあるんですか?」

「私の勘違いかもしれませんが、攻撃を与えた回数とかダメージ量の差じゃないでしょうか。さっきの軍団は私たちが何度も対峙して、それなりに攻撃を当ててますし、ダメージも蓄積してたと思います」

「なるほど…。そして、弱点であろう胸の胸の真ん中に冬樹が攻撃を当てたから、倒せた」

「確かに、だとしたら、あいつもそろそろ」

「正直俺の体力も限界に近い。だから、最後一気に決めたい。冬樹、えっと…」

「あっ、すいません。余裕がなくて名乗ってませんでした…。私スカイタウンで設備管理やってます林といいます」

「いえ、俺たちも必死でお名前聞くタイミング逃してましたから。じゃあ、林さん、冬樹、一気に勝負を決めましょう。三人で一斉に攻撃して、ダメージ量と攻撃回数を稼ぎましょう。隙あらば胸の真ん中に」

「あぁ、俺も正直体力が限界だからお前の案でいこう」

「私も微力ですがお手伝いします」

「それじゃ、いきましょう」


光春の合図とともに一気にスカイ君に襲い掛かる三人。暴れ疲れたのか、すこし落ち着いていたスカイ君はその不意打ちの攻撃を防ぎようがなく、冬樹の攻撃が右腕をかすめる。続けて林の攻撃が左腹を光春の攻撃が右腹を捕えた。


「よし、攻撃の手を緩めないで!」

「光春、俺の後ろに!スイッチの準備を、林さんはそのまま左から無理のないように攻撃を!」

「分かりました!」


冬樹の指示のもと、攻撃の手を緩めないその息の合った攻撃。右から左から立て続けに繰り出される攻撃に、敵の数や次の攻撃を把握できないスカイ君は明らかに混乱した動きをしている。その隙を逃さない冬樹。胸に刃を突き刺す


「くそっ、まだか。光春、スイッチ!」

「おりゃぁぁっ!」


冬樹が軽やかに右に避けるのと同時に光春の攻撃が再びスカイ君の胸を捕える。確かな感触、光春は勝利を確信した。そんな彼を、まばゆいほどの光が包み込んだ。


「よっしゃぁぁぁっ!」

「ナイスだ、光春っ」

「やっ、やったぁ・・・」

「林さんもありがとうございました」

「いえ、お二人がいなかったら。こちらこそありがとう」


空に続く街で、互いに命を賭けて戦った戦士たちは、互いの健闘をたたえ合う。そんな彼らをねぎらうかのように東の空から新しい朝がやってくる。

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