第33話
少し悩んでいたらいつの間にか日をまたいでいた…すいません
「はぁぁっ!やっと下りきったぁ」
「流石に疲れましたね…」
4000m上空から一同が地上への帰還とでもいうべきであろう、階段下りをはじめてから数時間。やっとの思いで再び大地を踏みしめることができた四人はその場にへたり込んでしまった。
「すっかり真夜中になっちまったみたいだな」
「途中で休憩をちょくちょくはさんだり、まぁそもそもの段数が多いわな。でもよく下りきったと思うぞ」
「途中で誰かさんはへばってもう無理~とかぼやいてたけどね」
「なんだ!俺がへばってた意気地なしだって言いたいのか⁈」
「あら、誰も冬樹がへばってたなんて一言も言ってないけど…。何か思い当たる事でもあったのかしら?」
「くっ…」
「まぁ、冬樹をいじるのはそれくらいにして。さっさとここをでて冬樹の家に帰ろう」
「おいちょっと待て光春」
「ん?どうした、お前だけここに残って帰って一晩過ごすか?」
「いや、それは嫌だ。じゃなくて、なんでお前さらっと俺の家に帰るって言っちゃってんの?あの家はお前の家じゃなくて、俺の家だよ?」
「誰も一言も、俺の家だなんて言ってないぞ。ちゃんと冬樹の家に帰ろうっていったじゃんかなー紅葉さん」
「光春さんはちゃんと冬樹さんの家に帰ろうって言ってましたよ」
「あんたとうとう頭だけじゃなくて、耳までおかしくなったの?かわいそー」
「…もういいよ」
「まぁ次こそ家に帰ろう。とりあえずここを出るのが先決だな」
「ですね。とりあえず来た道を戻る感じでいいんですかね」
「そうだな。じゃあ、階段の時と同じみたく俺と冬樹が前の方を歩いて安全を確かめながらいくから、二人は後をついて来てくれ」
光春の号令とともに立ち上がるほか三人。うち一名は若干ふてくされているが、他の三人は気にも留めていない様子である。四人はエレベーターホールを出て再びスカイタウンの中へと足を踏み入れた。
「流石に暗すぎない…」
「まぁ、とっくの昔に営業時間は終わってるだろうからな。あの非常口の看板と俺の朧気な記憶を頼りにどうにか脱出するしかなさそうだな」
「だな。なぁ、葵………葵?」
冬樹の呼びかけに返事がない。冬樹は咄嗟に後ろを振り返った。そこには生まれたての小鹿の様に足をプルプルさせている葵と、それを苦笑いしながら支えている紅葉の姿があった。
「なっ、何よ。何かあたしに言いたいことがあるのかしら」
「そういえば昔から葵って暗いところ苦手だったよな」
「そっ、そんなわけないでしょ。今だって余裕よ」
「わっ!」
「きゃぁぁっ」
強がって見せているものの足ががくがく震え、紅葉の介助なしでは立っていることもままならない葵の様子をみて、ここぞとばかりに攻撃を仕掛ける冬樹。
「あははっ!愉快愉快。いつも俺はお前に蹴りやら拳やら暴言やらで散々痛い思いさせられてるんだ。これくらいやっても罰は当たんねぇだろ」
「くぅぅぅ…、家に帰ったら覚えときなさいよ」
「おぉーこわこわっ」
「冬樹、お前あんまり調子に乗りすぎると後で何倍返しされるかわかんねぇぞ」
「今楽しけりゃいいんだよ。それより、出口ってあれだよな」
光春の優しさゆえの忠告を軽く受け流しつつ、冬樹は目の前に見えてきた自動ドアを指さし、余裕の表情である。
「よっしゃ、とっとと帰って晩御飯、、、ゴハッ⁉」
「調子乗って前見ずに歩くからそうなるんだよ」
「あんたって昔からそうよね、自分が優位になるとすぐに調子に乗って何かやらかす。小学校の時だって…」
「あぁぁぁぁぁぁ!」
「あははっ。いい気味」
「葵、悪徳令嬢みたいな笑い方と台詞になってますよ。私まだ葵に死んでほしくないのでもっとつつましく可憐な令嬢みたいに笑ってください」
「ごめん、葵。次から気を付ける」
「ちゃんと私のいう事聞いてくれる紅葉が大好きですよ‼」
「すごいな紅葉さん、あの猛獣を完全に手懐けるなんて。こんど俺にもこいつの手なずけ方教えてくれよ」
「誰が猛獣ですって⁈」
「はぁ…こいつも懲りねぇな…。お前ら、そんな事より営業時間が終わってるせいか知らないが自動ドアが開かない。ここから脱出するのは無理そうだから他の出入り口を手分けして探そう」
「えっ、もう一回この暗い中に戻るの?明かりが目の前にあるのに…」
「なんかいつもの葵じゃないみたいで可愛いです」
「葵は昔から暗いところとか怖いものにめっぽう弱くてな。お化け屋敷行ったあかつきにはお化け役のキャストさんを何人もなぎ倒して出てくる始末だ」
「ありゃ…、それは重症ですね」
「ねぇ、あたしもう一回この中に戻るのいや…。ここで朝が来るの待と?」
「ここで待ってもいいが、俺は一刻も早く冬樹の家に帰って寝たいんだ。俺は先に帰るけど、それでもいいならここで一晩過ごしてもいいぞ」
「冬樹さん、ちょっと冷酷です…」
「うぅぅぅ…。分かったわよ、歩けばいいんでしょ歩けば」
「あぁ、歩けば次期に光が見えてくる。みんなで一緒に家に帰ろう」
「なんかフラグみたいだな」
「おい、冬樹。その発言もまたフラグになってるの気が付いてるか?」
「あっ…」
「まぁいい、よし、他の出口を探しに出発しよう」
そういうと光春は再び真っ暗なスカイタウンの中へと足を踏み入れたのだった。その後を他の三人が追う
「なぁ、光春」
「ん?どうした、なにか面白いものでもあったか?」
「あっ、いや。そういうわけじゃないんだけどさ。なんか昼間よりスカイタウンの中が荒れてねぇか?って思ってよ」
「そうか?昼間もこんな感じでぐちゃぁとしてたけど思うけど」
「あぁ、確かにそうなんだけど。なんか違う気がするんだよな…」
「まぁ、気のせいだろ。それよりもとっととここ出ようぜ」
「あぁ、そうだな」
冬樹は自分の中でもやもやとしたものを抱えつつも、とりあえずこの若干薄気味の悪いスカイタウンから脱出することに集中することにした。しばらく歩いていくと、一同にとって少し見覚えのある店が見えてきた。
「これって、上にあったお土産屋さんと同じよね。あぁ、いろいろあったから結局お土産買いそびれちゃった」
「ですねー。もう少しゆっくり見て、品定めしたかったです」
「いやっ、紅葉さんはスカイ丸買ったじゃないかよ。それもいいお土産だぜ」
「おっ、噂をすれば。ここにもスカイ丸売ってるじゃんか」
「えっ…」
「あはは。ホントだ、紅葉、あんた大変思いしなくても下で買えたのね」
「いっいや、スカイ丸は展望階限定のお土産なんですけど…」
「…っ⁈」
刹那の沈黙のあと、光春が声を荒げる。
「みんな全力で後ろへ走れっ!」
光春の叫び声と共に走り出す一同。それとほぼ同時にスカイ丸は暗闇にきらりと光り、その瞬間彼らの命を奪わんとブンッと大きく振られた。
「はぁはぁ、なんでこいつがここにいんだよ…。死んだんじゃないのかよ」
「死んでるも死んでないも、こいつが未だにスカイ丸持ってるってことはまだ戦わないといけないってことだろうな…」
そう、一同の目の前には数時間前に紅葉が頭を切り落とし、4000mから突き落としたはずのスカイ君が首から赤く染まった綿をたらしながら佇んでいたのだった。




