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桃(こうはく)~Hold hands with you~  作者: 4G
第1章 紅葉
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第03話

「ここが私の家よ。さぁ、入って」

「ただいまー」

「わぁ、素敵なお家です~」

「急いでご飯作るから、紅葉さんはお風呂に入っちゃって。あんなところで寝ていたから体冷えているでしょ。ご飯作ってる間に温まって」

「そうですかぁ、それじゃお言葉に甘えてお風呂いただきますね~」


紅葉はそう言い残し、足早に脱衣所の方に消えていった。葵は慌ただしそうにエプロンに袖を通し、キッチンに立つ。


「なぁ、葵。今日は何を作るんだ?」

「そうねぇ…、冷凍庫には、冷凍しておいた豚肉とミンチがあるし。あと、冷蔵庫には人参、じゃがいも、あれっ葉物がないや。」


冷蔵庫の中身を確認する葵だが、冷蔵庫の上の方は背足りず、届かないらしい。どこからか踏み台が、葵の足元に置かれていた


「よしっ、今日はカレーにしよっ!」

「カレーか…」

「なにぃ?何かご不満でも。ご不満があるならどうぞご自宅で寂しいボッチ飯をきめなさい」

「いっ、いやいや。ご不満なんてそんな滅相もございません。いつも美味しいご飯を作っていただきありがとうございます」


(親が家にいないから、葵がご飯を作ってくれるし、一緒に食べてくれるからありがたいけど…。9日連続カレーは…いや、世界にはカレーしか食べるものがないのか。きっとそうに違いない)


冬樹は現実逃避に走った。

葵は冷蔵庫から食材を手際よく取り出し、ピーラーで人参の皮をむき始めた。


「ところで冬樹。あの子の事なんだけど」

「あぁ、紅葉さんのことか。あの子は一体何者なんだろうか」

「まさか、あんなことまで覚えていないなんて。咄嗟にうちまで連れてきちゃったし」


話しは、1時間と少し前。葵が紅葉に散々お説教し終わった後まで遡る。


「はぁはぁはぁ…。とっ、ところであなたはどこから来たの?家への帰り方分かる?」


辺りが薄暗くなり、冬樹たちを照らす光がいつの間にか夕日から電灯の明かりへと変わったころ、葵は怒り疲れたのか、電柱のそばにしゃがみ込み、紅葉にそう尋ねた。


「えっ、えっとぉ…。私は、どこから来たんでしょうか。家ってどこでしょうか。葵さんと冬樹さん、何か知ってますか?」

「ちょっ、ちょっと待ってくれ。まさか、紅葉さん。どうしてこんなとこに眠ってたかも分からない、どうやって、どこからここに来たかも、家がどこにあるかすら分からないってこと…か?」

「はい…。お力になれずごめんなさい」

「何でもいいんだ、どんな些細なことでも、だからっ」

「まって冬樹、落ち着いて。ねぇ、紅葉さん、紅葉さんさえよければ私の家で一緒にご飯食べない?おいしい料理作ってあげるわよ」

「本当ですか⁈ぜひ、お邪魔したいです~」

「よしっ、そうとなれば。冬樹、あんた紅葉さんの事おぶってあげなさい。急いで帰るわよ」


こういう成り行きで3人は葵の家に帰ってきたわけである。


人参の皮をむき終えた葵は、次にジャガイモの皮を、これまた手際よくむき始めた。


「でも良かったのか?あの子を葵の家まで連れてきちゃって」

「誰かほとんど分からないから不安はあるわよ。でも、あんな薄暗い夜道に女の子一人、それも自分で自分の事が分からない、そんな子をほったらかしにしてあの場を立ち去るなんてことできないでしょ」

「まぁ、確かにそうだよな。でも、自分がどこから来たか、家がどこか。忘れることがあると思うか?」

「いいえ、普通なら忘れることはないと思う。紅葉さんの場合、自分の名前は言えるし、言葉もさっとでてきた。完全に記憶を失っているっていう訳じゃないと思うの」

「でも、どうするんだ。さっき葵が、紅葉さんの服のポケットとか、持っていたカバン、財布の中身を確認したけど、身分証の類がなかったんだろ。それじゃ、警察に行って捜索願が出ているか確認することもできないぞ」

「とりあえず、紅葉さんがお風呂から上がったら、もう一度話を聞いてみましょう。たぶん今日はうちに泊めてあげることになるかもね」


葵は、むき終えたジャガイモをまな板に移しながら、キッチンから見えるリビングの壁掛け時計を見た。時刻は9時少し前、確かに今から、家がどこかも分からない、どこかすこし抜けている女の子を一人で外に放りだす事はできないだろう。


「すみませ~ん…。どなたか来ていただけませんか~…」

「どうしたんだろ、ごめん冬樹、私いま手が離せないから代わりに様子を見に行ってもらってもいい?」

「あぁ、分かった」

「くれぐれも、裸の女の子がいるからって変な気を起こすんじゃないよ」

「そっ、そんなことしねぇよ!」


コンコン「どうした紅葉さん。なにかありましたか?」


冬樹は、脱衣所の扉をいきなりは開けず、しっかりとノックして扉越しでの応答を心掛けた。


(ラノベじゃあるまいし、いきなり脱衣所の扉を開けたら、湯上りの女の子と鉢合わせてっていうラッキーイベントは絶対に起こらないぞ、てか俺が絶対に起こさない。もしもそんなことになったら…、明日の命はないな…)


冬樹は、小さな幼馴染の事を思い出しながら憂鬱な気持ちになった。


「あぁ、冬樹さんですか。お風呂頂いたのはいいんですが、体を拭くタオルの場所が分からなくて~」

「あぁ、タオルか。確かタオルなら、洗濯機の上の棚に重ねて置かれてないか?それを使っていいと思うぞ」

「えっと~、どこでしょうか。これかな?いやこれはお風呂のマットだし。これか!…いやこれは雑巾ですか~。……、あっ!ありました、ありましたよ冬樹さん!それじゃ使わせていただきますね~」

「あっ、あと使い終わったら洗濯機の中に入れておいてくれ。その辺りにほったらかしにしておくと、葵が怒りだすぞ」

「ひっ、ひぇぇ…。絶対に洗濯機の中に入れておきますね。ところで、葵さんは何を作ってくれるんでしょうかぁ?楽しみです~」

「今日はカレーらしいぞ。今、一生懸命作ってくれてるからな。葵のカレーは美味いぞ」

「そうなんですかぁ、それは楽しみです~」


その時、脱衣所の扉が開き、冬樹の目の前に純白の肌をした少女のあられもない姿が現れた。

咄嗟に冬樹は目を背けた。


(おいおい、まさかそっちから扉が開くとか、そんなの知らねぇよ!)


「ななななんで服着てないんだ!」

「それが、生憎着替えを持っていなかったので、葵さんにお借りしようと思って~」

「だっ、だからってなんでさっきまで扉を挟んで男と話してたのに、そんな恰好で出てこようと思うんだよ」

「それもそうですねぇ、それでは」


そういうと、紅葉は脱衣所の方に戻り、扉を閉めて、


「すみませ~ん、生憎着替えを持っていないので、葵さんに貸していただきたいんですけど、冬樹さん、私今あられもない姿なので代わりに葵さんにお願いしに行ってもらってもいいですか~?」

「その必要はないわよ」


(なんだか寒気、いや殺気を感じる。気のせいか、いや気のせいであってくれ…)


冬樹は恐る恐る殺気のする方を見た。


「ひっっ!」


葵が、着替えを持ってそこに立っている。その髪はメデューサのように一本一本自我を持っているかのように暴れており、葵は下を向いているが、その顔に笑顔がないことは容易に想像できた。


「へぇー、私言ったよね。裸の女の子がいるからって変な気起こすんじゃないよって。その忠告を無視して、女の子の裸体を見た挙句、証拠隠滅のために女の子を脱衣所に戻すんだ」

「ちっ、違うんだ葵、これには訳があって」

「わけぇ?今日、それもたった数時間前に出会ったばかりの女の子の裸を見るのに、私も納得できるわけがあるんだ。聞かせてほしいな、その訳ってやつを」


冬樹は、そのあまりの迫力にその場に崩れ落ちた。じわりじわりと葵が冬樹に迫ってくる。


「人の家に来てまであんた、ヘンタイなのねぇ…」


『次やってみなさい、問答無用で殺すよ』

耳元で、ドスが効いた低い声でそう囁かれた冬樹は、あまりの恐怖にしばらくの間震えが止まらなかった。


「あっ、葵さん。着替えの服もってきてくださったんですね~。ありがとうございます~」

「紅葉さん、あなた冬樹に変なことされてない?大丈夫?」

「変なことですか…、裸を見られたこと以外には特に思いつきませんねぇ」


葵はそれを聞くと、冬樹の事を思いっきり蹴り飛ばした。


「さっ、ご飯ができたから冷めないうちに食べちゃお」

「今日はカレーですかぁ?お腹ペコペコなので楽しみです~」

「おっ、よく分かったわね。さっ、服着替えてダイニングに来てね」


『冬樹、あなたは一人でリビングよ』(にこっ)

その有無をも言わせぬ葵の笑顔に冬樹はただただ頷くしかなかった。


皆さんお初にお目にかかります、4ふぉーじーという名のものです。

この作品はあらかじめプロット(プロットと呼べるものかどうかわかりませんが笑)を書いて作品を作っております。最後まで冬樹たちの冒険を楽しんでいただけたら幸いです!

さっさと葵と冬樹をいちゃつかせろこのやろう!とか紅葉の入浴シーンはないのかよこのクソ作者!などと感じた方はブックマークやレビュー、感想を書いていただけると作者が泣いて踊り狂います()

処女作故見苦しい文があるかもしれませんが、愛情の眼差しで見守っていただけるると嬉しいです。

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