第29話
予約投稿忘れてたぁ
「ここがエントランスか。噂には聞いてたけど広いな、あとめっちゃ人が多い…」
「こんなので怖気づいてたら今度の修学旅行で行く東都ワンダーランドなんてもっとやばいぞ。お前はもう少し人混みになれるべきだ」
「そういう光春も人込み苦手だろうが。昔つくしちゃんがそれこそ東都ワンダーランド行きたいってごねた時、人混みが嫌とか何とか言って俺と葵に任せようとしたじゃねぇか」
「そんな昔の話…。結局あの時つくしにお兄ちゃんが一緒じゃなきゃ嫌って泣かれて一緒に行ったじゃねぇかよ。俺が言ってないみたいな言い方すんなよ」
「そうだったけか?もう覚えてねぇや」
「自分の都合が悪くなるとはぐらかしやがって…。そういうところは昔から変わってねぇよなお前」
「あの~。他のお客様のご迷惑になりますのでエントランスでの喧嘩はご遠慮いただけますと…」
殴り合いの一歩手前…までとは言わないが、スカイタワーのエントランスで冬樹と光春がお互いににらみを利かせ合っていると、チケットブースの若い女性が少し困った顔をしながら二人の喧嘩の仲裁に入った。我に返った二人は他のお客がヒソヒソと二人の方を見ながら話している周りの状況を一瞬で理解し、若干赤面しながらエントランスホールの端へと小走りで退散した。
「おいこら、いつものノリで俺に突っかかってくんな!怒られちまったじゃねぇかよ」
「それはこっちの台詞だ。はぁ、なんで冬樹が最初に突っかかってきたのに俺まで怒られなきゃいけねぇんだよ」
「…。まぁ、なんだ。悪かったよ」
「……。急に素直に謝ってくんな」
「さっきから何なんだよ。俺が悪いだ、謝ったら結局謝ってくんな。お前は二重人格か⁈」
「俺は二重人格なんかじゃねぇ」
「じゃあなんだよ」
「まぁ、なんだ…。昔から自分が悪いと思ったことは直ぐに謝ってくる。そういうとこ…、いいと思うぜ」
「……。お前は俺を惚れさせたいのか?」
「うげぇっ、気持ち悪い。俺とお前がそんな仲になれるわけねぇだろうが」
「…っあはは!やっぱり光春と話してると楽しいな。何にも遠慮せずにありのままの自分で話せる」
「まぁ、それは俺も同じだ」
東都スカイタワーのエントランスホールの端っこでこんな物語が展開されているとは、彼らの4000m上にいる女子二人組は知る由もないだろう。二人はチケットブースに足を向け、歩き始めた。
「よしちゃっちゃとチケット買って上に上がろうぜ。なんやかんやで俺、東都スカイタワーに昇るの初めてなんだ」
「冬樹もそうなのか。実は俺もだ。すみませーん、高校生二枚」
「いらっしゃいませぇ…。あっ、さっきのお二方」
二人がチケットブースにたどり着くと、チケットブースには先ほど二人の喧嘩をたしなめた若い女性が受付をしていた。
「あぁ、さっきはご迷惑をおかけしました…」
「いえいえ、ちゃんと仲直りはできましたか?」
「まぁ、おかげさまで」
「それは良かったです。それでは、こちら高校生2枚のチケットです。楽しんできてくださいね」
チケットブースのお姉さんに見送られ、冬樹と光春はエレベーターホールを目指す。流石は休日と言ったところか、エレベーターホールは人で溢れかえっていた。冬樹と光春は何とかスペースを見つけて落ち着くことができた。
「にしても人多いな。さっきまでこんなに人いたか?」
「言うてもう少しでお昼だしな。みんな動き出す時間なんだろう。」
「なるほどな」
光春の考察に適当な相槌を打ち、冬樹は周りをひとしきりにきょろきょろと見渡した後、相変わらず周りを警戒しながら光春の耳元でささやき始めた。
「いいか、もう一回作戦を確認しとくぞ」
「おい、そんなくっつくな。何度も言うが俺にはそっちの趣味はねぇぞ」
「誰がお前の事そんな目で見るか。あいつらがどこにいて聞き耳立てられてるかわかんないだろ。俺はさっきの一件から学んだんだ」
「学ぶのが遅すぎだろ…」
「うるせぇ!」
「はいはいそれでそれで」
耳元で大声で怒鳴られた光春は、両手で耳を塞ぎ、怪訝そうな顔をしながら適当に返事を返す。
「紅葉さんと葵を見つけたら、見つからないように物陰から尾行する。できれば、二人の近くまで行ってどんな会話してるか聞きたい。もしも運悪く見つかったら俺は一目散に退避するからあとはよろしく」
「あとはよろしくって…。まぁ、いいけどよ…。でもこれだけは言わせておいてくれ」
「…何だ」
「お前のやってることストーカーと一緒だぞ」
「俺をストーカーと一緒にすんな!」
『まもなく、展望階行エレベーターが上昇を開始します。ホール内におられますお客様はできるだけ中央にお詰めいただきますよう、ご協力お願いいたします』
「おぉ、出発するみたいだぞ。それじゃあ冬樹の楽しいストーキングライフにレッツゴー」
「今回は協力してもらう立場だから我慢するけど、後で覚えとけよ…」
「おーこわこわ」
こうして二人を乗せたエレベーターは葵と紅葉がいる地上4000mの展望階に向けて上昇を開始したのであった。
20秒ほどすると、かろうじて展望階を取り囲むガラス張りの壁が見えるほどに人で大賑わいの展望階に到着した
「相変わらずここも人が多いな」
「まぁー、エレベーターがあれだったからな。そりゃ多いだろ。それより冬樹」
「あぁ、分かってる。敵にこっちの姿が見つかる前に、こっちが見つけなきゃだよな」
「それもそうだが、俺たちがここに来た本来の目的も忘れるなよ」
「あぁ、もちろんだ」
先ほどとは違って少し神妙な面持ちでそう答える冬樹。本来二人がここに来た意味…、それは彼らにとってこの展望階からの景色を無邪気に楽しめるものではない。
「まぁ、せっかく安くない金払ったんだ。楽しめるときは楽しんどこうぜ」
「それもそうだな」
少し落ち込んだ気分をすこしでも盛り上げようと、光春がした提案を合図に二人はエレベーターホールから足を踏み出し、景色を見に歩き始めた。
「おい冬樹、あれを見てみろ」
「んっっ?どれだどれだ」
「あれだよ、茶色の工場地帯の一角に妙に色がごちゃごちゃしてる一角があるだろ」
「…あぁ!あそこか、ってもしかしてあそこは…」
「あぁ、俺たちの敵対組織の連中がこぞって集まる夢の王国だ」
「くっ…、こんなところまで来てもまであいつらは俺たちへの精神攻撃の手を緩めるつもりはないってことかよ…」
「まぁ、言っちまうとこんど俺たちも行くんだけどな、修学旅行で」
「なんでお前と葵と三人で回らなきゃなんないんだよ。結局いつものメンツでドキドキもくそもねぇ」
「そりゃそうだ」
「おっ、悪い。誰かからラインだ…って葵からかよ」
「何だって、見終わって下いるから早く来いってか?」
「いや、こんど行くワンダーランド、紅葉さんも一緒に回りたいって言ってるんだけどいいかだってよ」
「紅葉さん、うちの学校の生徒じゃないじゃんかよ」
「それな。まったく、あいつも意味不明なライン送ってくんなよ」
「あとで落ち合った時返事するって返しとけ」
「そうするわ」
光春からのアドバイスを素直に聞き入れ、冬樹はさっそく返事を返し始めた。暇になった光春は、視線を窓の外から展望階の中の人々へと移した。
「おい、冬樹あれ」
「なんだよ。今返してんだろ」
「葵と紅葉さんじゃないか」
「…っ!どこだどこだ⁉」
「ほらあそこ、今二人が別れて紅葉さんが走り出したぞ」
「あれか!ってこんな近くにいたのかよ。それだったら直接声かけてくれればいいのにな」
「まぁ、この人混みだ。きっと見つけられなかったんだろ」
「それで紅葉さんは何してるんだ」
「えぇっと…、ぬいぐるみ?」
「ぬいぐるみ…?」
次は忘れないようにシマス…




