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桃(こうはく)~Hold hands with you~  作者: 4G
第1章 紅葉
28/67

第28話

最近遅れているので、たまには早めに…

「ほんと冬樹さんってデリカシーのかけらもないですよね⁉葵に向かって女の子じゃないなんて何言ってるんですか~?こんなに身長に見合わない立派で大きいおっぱい持ってるのに。冬樹さんはこんなにおっぱいが大きい男の子を見たことあるんですかね」

「ちょっ、紅葉落ち着いて…。あたしの中での紅葉のイメージが若干崩れかかってる」

「イメージ何てどうでもいいですよ!次葵にあんなこと言ったら、私がひっぱたいてやりますっ!」

「あはは…」


デリカシー無し男こと冬樹の愚痴が溢れんばかり出てくる紅葉と若干引き気味の葵とのコンビがスカイタウンを進んでいく。周りを歩く人々が時々紅葉の放つ『おっぱい』という言葉に動揺してひそひそと話すのが何とも滑稽である。


「あっ、ここね。東都スカイタワーエントランスだって」


話を逸らすことに成功し、肩の荷が下りた顔をしている葵の指さす先には大きなチケットブースと土産物屋、そして広いエレベーターホールが広がっている。二人は手早くチケットを購入し、エレベーターホールに案内される。


「あの葵。エレベーターってあれですよね。小さな部屋に入ってそれが上下して自分の好きな階に行けるっていう」

「そうよ。紅葉ってエレベーター乗るの初めてだっけ?」

「いえ、買い物行ったときにショッピングモールで乗ったことが何度か。でも…」

「でも…?」

「エレベーターどこにあるんですかっ⁉」


紅葉が混乱するのも無理ないだろう。二人が案内されたエレベーターホールにはエレベーターの乗降口はどこにもなく、50人ほどの人が無理なく集まれるただただ広いスペースがあるだけである。


「あぁ、そっか。紅葉は東都スカイタワーの事何にも知らないんだったね。まぁ、あたしも実際に乗るのは初めてなんだけど…」

「…?」


『まもなく、展望階行エレベーターが上昇を開始します。ホール内におられますお客様はできるだけ中央にお詰めいただきますよう、ご協力お願いいたします』


「まぁ、あたしが説明するより体験した方が早いか。ほら、しっかり踏ん張ってないと落とされるかもよ!」

「えっ、えっ?どういうことですかぁってきゃぁぁぁぁぁぁ」


アナウンスが終わると、ホール全体がゆっくり上昇し始め、次の瞬間ものすごい速さで4321mある東都スカイタワーの展望4000mまで上昇を始めた。


「なっ、なんなんですかぁこれぇぇぇぇ~!」

「これが東都スカイタワーではじめて導入されたホールエレベーター。これまでのエレベーターはゴンドラ式だったけど、このエレベーターは床自体が上下することで一度に多くの人を運べるようになったらしいわよ」

「それはいいんですけど、このエレベーター早すぎませんかぁぁぁ~~!」


20秒ほど紅葉が絶叫し続けていると、床は減速を始め、一面ガラス張りの広い空間へと到着した。


『ご搭乗ありがとうございました。東都スカイタワー4000m展望階でございます』


「ほら、着いたみたいよ!」

「はぁはぁ…。死ぬかと思いました」


紅葉の美しい栗色の髪の毛は寝起きの様に爆発しており、エレベーターの過酷さを物語っている。一方の葵はケロッとしており、展望階に着くや否や一目散に東京の街並みを見下ろそうと駆け出した。


「うわぁすごい…」

「もう葵ってばどんだけタフなんですか」

「そんなことよりほらっ!紅葉も一緒に見ようよ」

「分かりましたよ。あんまり引っ張らないでください…………すごいっ」

「でしょでしょ!」

「家も車も川も、いつもはあんなに高いビルとか山も今は全部私たちの下なんですね」

「そうだね。あたし達そんなに偉い人じゃないのに、高いところからこうやって見下ろすとなんだか偉くなった気になっちゃうね」

「……」

「ん?どうした紅葉。もしかして高いところ苦手だった⁈」

「いっ、いえ…。高いところは大丈夫なんですけど。なんででしょう、ついこの前までこうして上から何かを見下ろしていたような、いなかったような…」

「…‼もしかして、紅葉の記憶が戻りかけてるんじゃ」

「だといいんですけど、結局なにも思い出せません。ごめんね葵」

「そっか…」

「さっ!なんだか湿っぽくなっちゃったし、ここだけ景色を見るのももったいないですよ!なんたって私たちは360度景色を独り占めできるんですから!いや二人占めか…?」

「あははっ!そうだね、二人占めだねっ。よしっ、あっちは確か東京湾の方向だよ」

「東京湾というと海ですか?」

「うん。もしかして紅葉って海見たことない?」

「そうですね…。少なくとも葵やデリカシー無し男とはいったことないですよね」

「あはは…。まだ根に持ってるんだ…」

「冬樹さんが葵にきちんと謝るまであたしは許しませんよ!」

「そうだね…。よしっ、今回はあたしも徹底的に怒ってみる!」

「二人で頑張りましょう!」

「うんっ!」

「葵、あれって何ですか?」

「ん?どれどれ…」

「海の近くに他とはちがってとってもカラフルな場所があるじゃないですか。あそこですっ」

「あぁ!東都ワンダーランドね。なんて言えばいいのかな…、紅葉は遊園地って分かる?」

「遊園地…。ごめんわかんない…」

「遊園地って言うのはいろいろな乗り物に乗って遊んだり、おいしいもの食べ歩いたり、買い物を楽しんだりするとっても楽しい場所なの」

「すごいっ…。私たちも行けるんですか⁉」

「もちろん、あたしと冬樹、あと光春は今度の修学旅行の最終日東都ワンダーに行くのよ」

「いいなぁ…。私も葵たちと一緒に行ってみたいです」

「そうねぇ…、修学旅行であたしたちが東都ワンダーランドに行く日に合わせて紅葉も遊びに行けば、あたしたちと一緒に回れるかも…?」

「本当ですか⁉」

「まぁ、あいつらに聞いてみないと分かんないけど、たぶん大丈夫」

「やったぁ!楽しみです」

「紅葉と一緒に遊園地か。絶対楽しいだろうな」


東京上空4000m。どこであっても友達との話は弾むもので、葵と紅葉は時間も忘れて二人で会話に華を咲かせていくのであった。太陽が西に傾き始める頃、二人の話もひと段落しふたりはエレベーターホールへと戻り始める。


「時間忘れてしゃべっちゃったね」

「はい~。こんなに時間が経ってるなんて驚きです~」

「そろそろ下にもどろっか」

「そうですね~。………?」

「ん?どうしたの紅葉」

「いえ、あれ…」

「あれって、ここのマスコットキャラクターのスカイくんのぬいぐるみじゃない。小さい子が落としていったのかな」

「もしそうだったら今頃その子泣いてるかもしれませんね」

「だね。地上のチケットカウンターの届けてあげよっか」

「ですね~。私拾ってきますね」


そう言い、紅葉は床に転がったぬいぐるみの元へと走り出すのであった。


やっと落ち着いてきたので、金曜日投稿も安定すると思います。

遊園地…。昔は行きたいランキングナンバーワンだった場所ですが、今考えるとつかれるから温泉とかに行きたいって思ってしまう…(年寄か?)

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