第27話
…
「ここが東都スカイタウンで、あの奥に立ってるのがスカイタワーですよね?とっても高いです〜」
「あたしも初めてきたけど、こんなに高いなんて知らなかったわ。でも…」
「もっときれいな状態の時に来たかったな」
「冬樹の言う通りだ。それに見てみろ、あの人」
光春の指さす先には、壁が所々崩壊し、窓ガラスが割れ、商品が床に散乱し荒らされ、破壊された東都スカイタウンに何事もないかのように談笑しながら吸い込まれていく家族連れやカップルの姿があった。
「やっぱり昨日の渋谷と同じで、あたし達以外の人たちはこの状況に微塵も疑問を感じてないみたいね」
「なんだか気味が悪いです…」
「とりあえず俺たちもスカイタワーを目指そう。何か手掛かりが得られるかもしれない」
「そうだな、じゃあ光春が先頭で」
「いや、なんでだよ」
「お前が言い出しっぺだろうが、早く行けよ」
「あぁー、もう分かったよ!行けばいいんだろ行けばっ!」
半ば投げやりに光春は先陣を切ってスカイタウンに歩みを進めた。
「…ほんとあいつらバカよね」
「でも喧嘩するほど仲がいいって言うじゃないですか~」
「どうだかね。さっ、あたし達も行きましょ紅葉。あいつらに置いて行かれちゃう」
「はい~!」
スカイタウンの街に入った一同が目の当たりにしたのは、外観同様に店の棚やショーケースが破壊され、商品が至る所に散乱し、明かりがまばらに付いているだけで全体的に暗いショッピングモールの実情であった。
「でもこの荒らされ方は何もああいう化け物が暴れてこうなったってわけじゃないんじゃねぇか。たまにネット動画見てると車が店に突っ込んだり、夜に強盗が店に押し入って大暴れした後もこんな感じになってる気がするんだけど」
「確かに冬樹の言う通りそういう可能性も否定できない。けど、どうして俺たち以外の人たちがこれだけ荒れ果てた場所であんなに楽しそうにしてるのか説明がつかない」
「もしかすると、あの人たちはスカイタウン全体がこんな状況って知っててあえて来てるんじゃないか。ほら、廃墟マニアとか」
「まぁ…。もっといえばこのスカイタワーは別に道路に面していたり、駐車場があるわけじゃない。もっと言えば道路よりこのフロアの方が高いだろ。車が入ってくることは無理だ。あれを見てみろ冬樹」
光春が指さす先には粉々に割れたショーケースとその中で光り輝くお高めの腕時計の数々であった。
「冬樹が言うように物取りの犯行って言う可能性もあるけど、そういう奴はさほど単価の高くない日用雑貨なんかに目はくれず、ああいう腕時計とかを盗むだろ。ショーケースがあんなに粉々に割られているのに中の腕時計がそっくりそのまま残ってる。入った強盗が飛んだ大馬鹿か…」
「強盗の仕業じゃないって事か…」
「俺はやっぱり、ここでも昨日の渋谷で俺たちを襲ってきたみたいな化け物がひと暴れしたと思う」
「光春さん、すごいです~!あの一瞬でそこまで観察してたんですか⁈」
「まっ、まぁ」
「女の子に褒められ慣れてない光春、なんか面白いな」
「いや女の子に限らず俺は褒められ慣れてないんだよ。お前と言い葵と言い俺を褒めた試しないじゃん」
「失敬な!冬樹はともかくあたしはたまにあんたのこと褒めてるわよ!なんで覚えてないのかしら」
「あははっ!そりゃ誰もお前のこと女だっth」
「冬樹さんサイテーですっ!」
「自業自得だ冬樹」
葵の強烈なビンタを受け、顔の形が変形し、体が半周しながら床に倒れこんだ冬樹。その滑稽な姿を葵は半泣きで、紅葉は冷めた目で、そして光春はあきれた目で見た。スカイタウンにいた他のお客も「痴話げんかか?」「あの人ほっぺ真っ赤」「なんかえげつない音したな」などヒソヒソ話しながら奇異の目で冬樹のことを見ながら関わらないように横を通り過ぎて行った。
「もういいわ!紅葉、あたしたちはスカイタワーに上りましょ。あんたたちはむさくるしく二人でデートでもしときなさい!」
「冬樹さん、当分の間話しかけないでくださいね」
支離滅裂な暴言を女子たちから吐かれ、すっかり意気消沈した冬樹と何故か巻き添えをくらった光春の事など目にもくれず女子二人は東都スカイタワーのエントランスへ歩いていった。
「あそこまで怒らなくてもな……」
「まぁ、今のはお前が悪いぞ。いくら葵だからって言葉に気をつけないとあれだけやられるんだからな」
「別に葵のことを馬鹿にしたいとかそう言うわけじゃないんだよ。なんていうか、あいつと話してる時は変に正直になるというか」
「正直すぎだ。でも、葵が怒ってビンタとか蹴りをお前に入れるのはいつもの事として、なんで紅葉さんがあんなに怒ったんだ」
「確かに。別に紅葉さんを馬鹿にしたわけじゃないんだけどなぁ」
「いや待て、その口ぶりだと葵のことは馬鹿にしたみたいになるぞ」
「おぉ、あぶねぇ」
「とまぁ、無駄話しはこれくらいにして…」
「あぁ、確実に一度あれが現れたここで女子二人だけで行動させるのはまずいな。急いで追いかけよう」
「でもっ!」
女子二人を一刻も早く追いかけようと駆け出した光春を大きな声で呼び止めた冬樹。光春は後ろ髪を引かれるかのように勢いよく立ち止まり後ろを振り返った。
「でも、なんだよ?」
「俺、あの二人と顔合わせるのが怖いんだ…」
「あぁ~…」
「だから、後ろからこっそり付いていこうぜ」
「めんどくせぇ」
「友のためと思ってそこを何とか」
顔の目の前で両手を合わせながら軽く腰を折る冬樹の姿を光春は心底あきれた様子で見ながら
「はいはい。ほらっ、さっさと行くぞ」
「よっしゃ!俺東都スカイタワー上るの初めてなんだ」
「何しに行くんだよお前はっ!」
イチャコラしながら二人は、東都スカイタワーのエントランスめがけて荒れ果てたスカイタウンを軽快に走るのであった。
週を追うごとに投稿が遅くなっているのはまずいと思いながらゴロゴロしてます…。
来週こそh(




