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桃(こうはく)~Hold hands with you~  作者: 4G
第1章 紅葉
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第24話

気持ち早めの投稿

「冬樹―、俺先風呂に入ってもいいか?」

「あぁ、いいぞ。バスタオルの位置とか分かるよな」

「何回泊まりに来てると思ってんだよ。それじゃお先―」


冬樹の心配を手をひらひらさせながら軽く受け流し、光春は風呂場へと消えていく。女子たちが風呂からあがって一時間ほど。女子たちがお湯を抜き風呂場をきれいに掃除してしまったために男子陣の入浴が遅くなってしまっていた。よい子は寝る時間を時計は指している。


「冬樹さん、葵。私は先に寝させていただきますね~」

「確かに今日はハードな一日だったもんな。疲れて当たり前だ」

「おやすみ、紅葉」

「はい~、おやすみなさい紅葉~」


紅葉が階段で二階に上がっていくのを見送った葵は、ソファーに深く腰をかけ、マグカップを持ち上げる。


「なによ。あたしの顔になにかついてるの?」


そんな葵の姿を凝視していた冬樹の視線がいよいようっとうしくなったのか、葵はマグカップに口をつけるのを土壇場でやめ、冬樹のことを睨みながらそう問った。


「いや、葵と紅葉さんっていつから下の名前で呼び合う仲になったんだよ」

「なぁーんだ。そんな事が気になってあたしの事ガン見してたの?てっきりあたしに告白の一つでもしてくるもんだと思ってたわ」

「んなっ⁈だっ、誰がお前なんかに告白するかよ!てか、話を逸らすな」

「あんまり乙女の秘密を深堀しようとすると嫌われるわよ」

「誰が乙女だ。乙女って言うのはなもっと清楚で…」

「はいはいそういう勝手なイメージをあたしたちに押し付けるのやめてもらってもいいかしらね」

「…」

「なによ、急に黙っちゃって」

「いや、俺たちいっつも喧嘩してんなと思ってな」

「…確かにそうね」

「昔はもうちょっと仲良かった気がするんだけどな」

「昔っていつの事よ。少なくとも小学生の頃からこうやってあんたとはやり合ってきたと思うけど」

「確かに…」

「…なによ、急にしんみりしないで頂戴。あたしが悪いみたいじゃない」


葵のその一言のあと、しばらく二人の間に沈黙の時間が流れた。当の葵はひどく申し訳なさそうに、手に持っているマグカップの中を揺れるお茶を見つめている。一方の冬樹は、この空気に耐えられなかったのか、突然大きな声で堰を切ったかのように笑い始めた。


「お前も悪いって思う事あるんだな」

「ひっ、人が悪いと思ってしんみりしてたのに何よそれっ!あんたのそういうところが嫌なの!」

「へいへい」

「へいは一回!」

「いっつも思ってたんだけどさ、普通『はいは一回』じゃないか?なんでいっつも『へいは一回』って言うんだよ」

「それはあんたが…って覚えてないの⁈」

「うーん…」

「はぁ、確かあたしたちが中学生の頃だったかしら…」


それに続けて葵は、どうして自分が「へいは一回」と冬樹に口うるさく言うようになったかを語り始めた。


――――――――――――――――

――――――――――――――――


「ねぇ、ぐうちゃんぴーちゃん。あたしどうしたらいいんだろ…」


リビングでグッピーたちを愛でながら、葵は何かに思い悩んでいる。


「どうしたら冬樹の…、あいつのあれを直せるんだろ…」


はぁっ、と深いため息を吐いて葵はグッピー達に餌をやる。一方のグッピーたちは、そんな葵の憂いをよそに餌を必死に喰らっている。


時は遡ること数時間…。


「げえぇっ。なんでお前いるんだよ…」

「人の顔を見るなりなんなのよそれ。あんたこそこんな時間まで部活?」

「今日は珍しくちゃんと練習したんだよ。おかげでこんな時間になっちまった。」

「いっつもサボってるんだからたまにはいいじゃない」

「言い返せない自分が悔しい…」

「悔しいならちゃん部活に行きなさいよね」

「はいはい」


いつもの痴話喧嘩をこなした二人は、自然と一緒に帰る流れになり、肩を並べていつもの通学路を歩き出す。辺りはすっかり暗くなって、

相手の顔の輪郭がぼんやりとしか見えない。


「この辺街頭路ないからいっつも一人で帰る時怖いのよね」

「そうか?俺が帰る時はいっつも明るいけどなぁ?」

「だからそれはあんたが部活サボって即帰ってるからでしょうが!なに?ツッコミ待ちなの⁈」

「いや別に誰もお前からのツッコミなんて待ってないけど?」

「...まじトーン言うのやめてもらってもいい?」

「はいはい」

「…。それより、ここまで聞いて『じゃあ俺が待っててやるから、一緒に帰ろうぜ』とか気の利いた一言はないの?」

「うぇっ…、。誰だよその小洒落たイキガリボーイ。てか葵は俺にそんなこと言って欲しいのか?少女漫画の読み過ぎだろ」

「その心笑ってるね⁈人がせっかくアドバイスしてやってんだから素直に聞きなさいよね」

「いや、一緒帰って欲しいの葵の方だろ?なん俺が悪者みたくなってるんだよ」

「うっ…。なかなか痛いところ突いてくるじゃない。とっ、とにかくあんたもう少し女の子エスコートを覚えるべきって言いたいの!」

「いや、それを女じゃないやつで練習してもな…」

「あんっ?」

「ひっ…。あっ!葵、家着いたぞ、じゃあ俺は隣だからまたな。明日な!」


明らかにやらかした冬樹は、逃げる口実を早口言葉のように言い終わると、光の速さで、自分の家の玄関消えていった。


「はぁ…」


あまりに刹那な出来事に葵は蹴りの一つを入れることも出来ず、冬樹が玄関に消えていく様子をただ唖然と見ていた。我に返った葵は深いため息とともに自分の家の玄関をくぐるのであった。


そしてご飯を食べ終わり、グッピーたちを愛でていた葵は冬樹のある事について鬱憤が溜まっている様子である


「なんなのよ『はいはい』って!なにを言っても『はいはい』『ハイハイ』『HiHi』あたしのこと馬鹿にしてんのぉぉ⁉」


――――――――――――

――――――――――――


「たまにお前の家から悲鳴というか怒声というかが聞こえてきてたけどもしかして…」

「大体あんたの不満ね」

「いやこわっ」

「あんたがあたしを怒らすのが悪いんでしょ」


そういいながらツンッと顔背けた葵は、悪戯そうに微笑んだ。

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