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第45話

改編したすた

~出歩いて…落っこちて・第45話~







 さて、前回巨大化したチビを元に戻す為、シエルさんを待っていた所、エル君達がやってきた。

 

 結局彼らもやじ馬で来てしまっただけで、何か解決策があると言う訳ではない。


 仕方がないので、シエルさんが来るまで待つ事になった。



 あれ?授業無いの?と聞いたところ、クレアさんもヴァルさんも最終学年らしい。

 

 だから実質もう授業は殆ど無く、卒業課題も出来ているとの事。



 エル君は二人より年下だけど、それでも飛び級しているので二人と同じ理由である。


 秀才っているもんだねぇ~と改めてエル君を見たら、照れていた。なんか可愛い。







「色々と持って来たわよ・・・って、なんか人間増えてるわね」


「僕の友人たちです」


「あー、紹介とかはいらないわ。全員授業で受け持ったこと有るから」



 そして待つ事数刻後、シエルさんも戻って来たのでさっそく色々と薬を試すことにした。


 シエルさんは持ってきた袋から、どう考えても自然には出ない色合いの薬瓶を幾つか取り出した。


 蛍光色やら、普通に禍々しい紫色までさまざまである。


 そして一つだけ、普通に透明な水薬の瓶があったが、

 

 そのほかがかなり禍々しいのに対し、


 一つだけコレだと何故かそこはかとなく不気味さを感じるんだが・・・。



「・・・くぅ~」



 流石に本能でヤバいと感じ取ったのか、薬が袋から出るたびに後ずさろうとしているチビ。


 あんまり動かれると魔法で隠しているエリヤから出てしまいそうなので、チビを宥める事にした。



「チビ、怖がらなくても大丈夫。シエルさんの薬は僕も飲んだこと有るけど、大丈夫だよ・・・」



 多分ねと言うのは、心の中だけにとどめておこう。


 実際僕の身体に異常が出たことはこれまでは一度も無い。


 かなりの回数で何かを盛られていたらしいのだが、身体が自覚症状を出さないのだ。


 投与されていた薬は後で調べたら中に劇薬もあったのだが、


 強化された身体の所為か、そう言ったのにも耐性があったのかもしれない。

 

 もっとも、手帳が無くなった今では、もう確認はもうできないけど。


 ある意味そう言った事ばかりされると、今更と言う感じになってくる。


 人間ってなれる生き物なんだよねぇ~。




 


「さぁ口を開けなさい!もっと大きく開くのよ!!」


「く、くぅ~!!!」




 さて、とにかく嫌がるチビの口に、嬉々として次々と薬を投げ入れていくシエルさん。


 だが、どうも効果が現れない。正確には現れてはいるのだが・・・。

 その現れ方が色が変わったり、グルグル目になって気絶したりと、あまり体の大きさには関係のない効果ばかりだった。



 ビクンビクンと痙攣するチビを、僕たちは遠巻きにしか見ている事しか出来なかった。


 手に泡立つ暗褐色のドロドロとした液体を、嬉々としてチビの口に流し込むシエルさん。


 その姿はまさに魔女。僕達の誰ひとりとして、正直用がなければ近寄りたいと感じなかったのである。



 それに下手に割って入ったら、彼女がその手に持った薬を投げつけて来そうで怖い。


 一体どんな調合が為されたポーションなのかは、見ただけでは判断が出来ない為に余計に恐怖を煽ってくる。


 研究者と言うものは実験を邪魔される事を何よりも嫌う節がある。


 ソレは魔法使いであるが研究者でもあるシエルさんにも当てはまる事なのだ。



「―――むぅ、これでもダメか。妖精薬系統なら混沌としてても行けるかと思ったんだけど」



 とは言うモノの、シエルさんは基本真面目な方だから、やっていることが一見めちゃくちゃに見えても、それはキチンと考察して考えてからやっている筈である。

 


「でも竜種は良いわねぇ。もとがハニーヴァイスでも、ココまで変化するとすさまじい魔法耐性だわ。―――実験台に丁度良い・・・」



 ぼそりと何かを言っていた気がするけど、本当に早く元に戻らないかな?チビ。



………………………



…………………



……………



 さて、アレから30分程度経過した。

 


「く、くくくぅ・・・・」


「ダメね。無効化、浄化、洗浄、認識変換。どれも効果が無いわ」


 そういうシエルさんの後ろには、白い体毛が更なるはかなさを湛えた・・・

 

 灰の様に白い色に変わり、文字通り燃え尽きた様にクタッとしているチビの姿があった。


 気の所為かは知らないが、漫画的に口から何かエクトプラズム的な白い靄が立ち上っている。



「シエル先生、チビは大丈夫なのです?」


「大丈夫よ。何故だか知らないけど、妙に体力があるの。本当にどんな薬が混ざった時に出来たんだか」



 チビのあまりの様子に流石に不憫に思ったのか、エル君がシエルさんにそう聞いていた。


 確かになんかあと一押しで、口の靄が完全に身体から切り離されて天に昇って行きそうな感じだ。


 薬は製法容量をまもって正しく飲まないと、毒にもなるのである。


 まぁ、魔法薬にはそんな制限はあまりないんだけどね。



「・・・しかし、効果が無い訳でもないのだな」


「ですな。微妙ですが、チビ竜の身体に変化が起こっている。全く効いて無いわけじゃない」


「そう、効いて無い訳じゃない。だけど、何故か元に戻らないのよ」


「ふむ、流石のシエル女史にも難しいのですね。もっと薬を上げたらダメなのですか?」


「コレ以上は流石にね。アレでも一応影響が出にくい様に調整してあるのよ?」


「「「(・・・あれで?)」」」



 全員でチビの方を向くと、なんか天から光が・・・って召される直前!?


 天使が見えるのは幻覚に違いない!そうに違いないんだ!もしくは精霊の目の暴走!



「チ、チビ!眠っちゃだめだ!寝たら死んじゃうって!」


「死ぬなー!チビぃぃ!」


『あ、あとで美味しい果物買ってあげますから!チビちゃん!!』



 美味しい果物と聞いた途端、目を開いて力を振り絞って立ち上がるチビ。


 そして弱々しげだったけど、クゥと一鳴きしていた。


 しかし食欲があると言う事は、なんとか持ち直したと言うところだろうか?


 美味しいモノには目が無いのかもしれないねぇ。



「あ、危なかったぁ。後少しで召されるところだった」


『食べ物につられて還ってきたっていうのが、地味に凄いですけど』



 クターとはしているが、チビはなんとか帰ってきた。


 しかし、本当にどうしよう?シエルさんの薬も効かないなんて・・・。



「・・・・一つだけ、解決策はあるわ」


「え?本当ですか?!」


「ええ、だけど元に戻るって訳じゃないの。薬の効果に上書きする形で行う事になるから」



 つまりは、もう薬の無効化や解毒的な事は無理だから、それだったら違う薬で上書きしてしまおうって事。ただ問題としては、只でさえ変な薬を被って色んな効果が出ている以上、どうなるか解らないと言う事でもある。



「どうする?ちょっと危険かもしれないけど―――」


「・・・・お願いします」


「いいの?後戻りはできなくなるわよ?」


「はい、このままだと、一緒に居られなくなるかも知れませんし・・・」



 こんなに大きいと人目に付く、幾ら大人しいとはいえ竜種なのだ。


 人によっては討伐しろと騒ぎ立てるかもしれない。


 そうなったら、チビとは一緒に居られなくなってしまう。


 人がいる限り、何処に行こうとこの問題は付いてきそうだしね。



「・・・解ったわ。ちょっと待ってなさい」



 シエルさんはそう言うと一度研究棟へと戻って行った。


 そして、帰ってきた彼女の手には、小さな小壜が握られていた。


 どうやら、それが魔法薬らしい。



「古代の魔導書をひも解いて、近年になって完成した古代魔法薬の試薬よ。古代魔法薬は今の魔法薬の効き目なんて目じゃないくらい強力だから、上書きが可能だとおもうわ」


「古代魔法薬ですか?」


「そう、古代魔法薬。今はコレだけしか無いから、かなりのレアな薬よ~」


「そ、そんな貴重品を使って、大丈夫なんですか?」



 金額的にとは聞けない。なんか怖いから。


 シエルさんは僕の問いに、にっこりと笑顔になる。


 あ~、なんか概視感・・・・。



「実はコレ、まだ実験したことが無いのよ?だから今回初めて生き物に使うの」


「・・・・そうですか」


「あら、随分と淡白な反応ね?もう少し、怖がるかと思ったんだけど」


「いえ、なれましたから・・・それにシエルさんの薬なんですから、大丈夫ですよ」


「・・・・信用されてるわね。ま、とりあえずチビ!」


「くぅっ!?」



 いきなりシエルさんに呼ばれ、ビクンと身体を震わせるチビ。


 彼女はそんなことはお構いなしに話を続ける。



「ちょっと苦しいかもしれないけど、我慢してね?」


「く、くぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!」



 そして、嫌がるチビを無詠唱の魔法で拘束し、口の中に薬液を放り込んだのだった。


 ごめんよぉ、だけど耐えてくれチビ!でもホントゴメン!と、心の中で思った僕たちだった。



……………………



………………



…………



「「「『「・・・・・・・」』」」」


「―――くぅ?」



 古代の薬は、一応成功したらしい。


 チビの身体の大きいさも、元のサイズに戻っている。


 これならなんとか生活できる―――のだが。



≪ボフン!≫


「きゅくるぅっ!!」



 チビは魔力の光に包まれ、魔力残照の煙に包まれたかと思うと、次の瞬間巨大化していた。


 チビはスキル変幻自在を覚えたというテロップが流れた僕の頭はある意味末期でしょうか?



「シエルさん、これって・・・」


「あー、多分だけど竜の肉体が魔法的な作用に順応したんじゃない・・・かな?」


「いや、幾らなんでもそいつは・・・」


「ありえんな」


「でっけぇ・・・」


『あら、可愛いじゃないですか?』


「「「「(――そうか?)」」」」



 いやはや、大きさ自由自在とかすごく便利だけどさ。


 う~ん、まっいっか。チビは一応無事だった訳だし。


 とりあえずコレでこの騒動は一応の収まりを見せる事になる。



 だが後に大きくなれるようになった弊害で、見た目よりもかなり食べるようになった


 その為、食費が嵩むようになるとは、この時の僕は予想だにして無かったのだった。




***




 あの後は皆で夕食を食べた。


 チビが異常に食欲旺盛になっていたのは驚いたけど、沢山ストックはある為問題は無かった。

 

 だが、夕食会は何故なのかは知らないが、何時の間にか宴会に発展していた。



 シエルさんがどこからか、お酒を持ちこんでいたのだ。


 クレアさんとヴァルさんもご相伴にあずかり、僕も酔わない程度に飲んだのである。


 ただ、シエルさんが結構飲む人で・・・一緒になって呑まんとけばよかった。



 そして酔っぱらって寝ちゃったシエルさん以外は、そのまま自分の部屋に戻って行った。


 部屋に残ったのは、酔っぱらってベッドを占領したシエルさん。


 シエルさんに無理に飲まされて、コップ一杯で撃沈した紅。


 食べて眠くなったのか、そのまま眠ってしまったチビ。


 ソレと僕とウィンディが残されたのであった。



『皆さんよく呑みましたねぇ』


「うん、楽しかった」


『ええ、本当に・・・ねぇ、かなめ様?』


「なに、ウィンディ?」



 食器をとりあえず流し台にしている洗面台に置いていると、ウィンディが話しかけて来た。



『ありがとうございます。私と契約してくださって・・・』


「うん?どうしたの急に?」


『いえ、ただ唐突に、そう思っただけですわ』



 彼女は膝枕してあげているチビの白い毛並みを撫でながら、そう静かに呟いた。


 契約か、あの時は死にたくないって感じだったから、考えずに契約しちゃったけどね。


 今思えば知らない相手といきなり契約とか、無茶したもんだと思う。


 そう言えば、アレからもう何日経過してるんだろうか?


 

『もうかれこれ2カ月くらいです』


「あれ?声に出てた?」


『いいえ、顔を見れば解りますわ』



 むぅ、僕は考えが表情に出やすいのだろうか?


 そう思っている僕を、彼女はクスクスと笑顔で見ていた。



『新しく、家族が増えましたね』


「ううん、チビは元々家族さ。ただ姿がちょっと変わっただけだよ」


『うふふ、そうでした。ごめんねチビちゃん』



 彼女はそう言うと、すーすーと寝息を立てているチビを優しく撫でる。


 気持ちいいのかくすぐったいのか、少し身をよじるチビ。



「・・・くぅ」


『ふふ、可愛いわね』


「はは、まるでお母さんとその子供って感じだね」


『お母さん・・・ですか?――――ソレも良いかも知れませんね』



 彼女は僕の言葉に一瞬キョトンとしたが、すぐに穏やかな表情になった。


 そして、隣で眠っている紅に寝相が悪くて下がってしまったシーツを掛け直してあげている。


 言った自分でもう一回言うのもあれだが、その姿は本当に母親みたいだった。



 精霊と言うものに、親子の概念は基本存在しない。


 何故なら自然そのモノでもある彼らは、気が付けばそこに居たという風に生まれるからだ。


 人工精霊である彼女も例外では無い。むしろ自然界の精霊と違い、長い事封印されていたのだから、そう言った人間の持つ情と言うものは理解しずらい事だっただろう。



 だが、彼女は変わった。


 何時頃からだろうか?紅とよく一緒に居る様になったのは?


 何時頃からだろうか?掃除洗濯をするようになったのは?


 何時頃からだろうか?そんな風に、優しく微笑むようになったのは?



 ソレもこれも、全部この世界ですごしたわずかな時間の間に、身につけて行ったものだ。


 僕というイレギュラーな存在が、契約したお陰でずっと実体化していられる。


 その間に、彼女は眠っていた時よりもずっと濃い経験を積んだのだ。


 だからこそ、彼女にも変化があったのだろう。


 ・・・あーそうか、さっきのありがとうは、そう言う意味か。

 


『この子にも、変外の制御方とかを教えないといけませんね』


「そうだね。まさか巨大化と小型化が出来るようになる何て思わなかったよ」


『頭はきっと良いですから、きっとすぐに制御をマスターするでしょう。・・・ねぇかなめ様?』


「何?」


『・・・ずっと一緒に、こうして穏やかに過ごしたいですね』


「はは、少なくても、僕が寿命が来るか、不慮の事故でも無い限りは大丈夫さ」



 それまではずっと一緒だよ。だってもう僕たちは―――



「僕たちは、家族でしょ?」


『・・・はい』



 見間違いだろうか?この時僕は彼女の目元が少し光った様に見えた。


 もう一度よく見てみたが、彼女はランプの明かりの中笑顔でたたずんでいる。


 う~ん、目の錯覚ってヤツだろうか?



『さ、かなめ様ももうお休みになられないと、明日もシエルさんのお仕事があるのでしょう?』


「そう言えばそうだった。・・・・この分じゃ明日も大変そうだ」



 ベッドを半分占領しているシエルさん、絶対二日酔いやりそうだから、仕事中機嫌悪いかも。


 そう思うと、早く体力回復させとかないと不味い気がしてきた。



「それじゃ、僕は床で寝るよ」


『体痛くなりますよ?』


「大丈夫、IT(イマジンツール)もあるしね」



 僕はそういうとITで布団を造り出した。以前の世界でよく使っていた布団である。


 最近はITも一度に沢山魔力を込めれば、長時間長持ちする事も解ったし、寝ている間くらいは供給しなくても平気だと思う。

 


 部屋の魔力式ランプを消し、僕は魔法で造り出した布団にもぐりこむ。


 この学校に来てもう2カ月か、あと一カ月はあるとはいえ、随分早かった気もするや。



「それじゃお休みウィンディ」


『はい、おやすみなさいかなめ様』



 こうして夜は更けて行く。この世界に来て何度夜を越えたかはもう解らない。


 だけど、こうして毎日色々とあって、僕は結構充実しているんだろうなぁ。


 そう考えつつ、僕の意識は段々と薄くなり、睡魔に呑まれたのだった。










『ずっと穏やかに・・・か。大丈夫ですよかなめ様、貴方の身体も少しずつ変化しますからね。だからきっと、平穏に生きていけます。きっと』








チビの人化が不評だった為変更しますた。

こういった風な指摘が来ると、俺はホイホイ変更しちゃうぜ。


ソレではノシ

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