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第3章

・前書き

この話…今更ながらですが主人公は最強さんです。その事を頭の隅にでも置いてご覧ください。


※11月6日改訂

〜出歩いて…落っこちて・第3章〜






――――異世界二日目。



「(んん〜、よく寝たぜ。くぁ~・・・)」


「おはよう紅、ぐっすり眠れたみたいだね。」


「(オスかなめ。お前に回復して貰ってから調子がいいみたいだ)」



そう身体をほぐしながら言う紅。そう、それは良かったね。


僕が夜中に見張りを交代して貰おうと思って起そうとしてもピクリともしなかったもんね?


・・・そう思うとなんか釈然としないなぁ。







さて、朝食に昨日残したイノシシの肉の残りを少し食べて河原を後にした。


只焼いただけのお肉、せめて塩だけでも見つけないと人としての味覚が無くなりそうである。


発見森の野生児!なんていうのは流石に洒落にならない。そうなる気も無い。


兎に角、周囲警戒をしながら川沿いに進み、昨日決めた様に住処に出来そうな場所を探す事にする。


しばらく散策をしていて気がついたのは、昨日のイノシシはどうやらこの辺の主であったという事だろう。


何故かというと遭遇する敵のほとんどが蛇やカエルや大きいハチ。


偶にちょっと大きなウサギ等しか出てこなかったからだ。


これならばまだ発動させるには拙すぎる魔法を使わなくても、拾った木の棒だけで十分対処できた。


最初こそ生き物を殺すと言うソレに若干戸惑いを覚えてはいたが、何度か殺している内に慣れた。


別に無差別に殺して回りたい訳ではないのだが、襲ってくる以上仕方が無いのである。


とはいえ懐の手帳からは、何匹か倒すごとにレベルアップ時に聞こえたあの音が響く事から、魔獣を殺すことで経験値を貰えるらしい。


変なシステムを組み込んで貰ったと思うが、倒せば倒すだけ強くなれるというこの状況はある意味でありがたい。


今の敵はなんとか自分で対処できるレベルなのだから。


一応紅のほうからも、レベルアップ音に似た音が聞こえたのを聞いたので、多分紅も僕と同じ様にLVが上がるんだと思う。


ただ、今のところそれを確かめる術が無い。


というか確かめるって言ってもどうやってと言う話である。


手帳に書かれている能力表は己の分しか記載されていないのだ。


せめてチュートリアルでも欲しいところである。じゃないと余計に訳が解らない。


こういう風に今だ判らない事があるが、そう言ったのを後回しにして森の散策を続行する。


ちなみに倒した魔獣でウサギだけは持ち帰りにした。これもまた皮を剥いで焼けば食糧になる。


ああ、でもコレを捌くのって僕だよねぇ?・・・川に持ち帰ってからやろう。



「なかなか、見つからないモノだね」


「(まぁそう簡単に見つかれば世話はねぇさ。のんびりいこうぜ?)」


「まぁ、どうせ時間だけは腐りそうなくらいあるしね。」



前の世界に戻れないし、何処に行けばいいのか判らないしね。


此処で生きていくなら森の中に何があるのか知りたいのである。



「果物でも見つからないかな」


「(あんな水っぽいモン食べるのか?)」


「果物にはビタミンや色んな栄養が含まれてる。人間である以上僕はソレを摂取しなければならないのだ」


「(・・・腹、下すなよ)」


「・・・気をつける」



考えてみれば野生の果物を生で食べて大丈夫なのだろうか?


第一この森で果物は見つかるんだろうか?不安は堪る。


とりあえず川への目印を木々に刻みながら奥へ奥へと進んでいった。







≪―――がさがさ≫


「ん?」


「(何か居たな。あれは・・・なんだ猿か)」


「に、ニホンザルじゃないけど、ね・・・」



探索を続けていた僕たちのすぐ近くに生き物の気配を感じた。


だけど、なんて言うか・・・そうしいて言うならゴリラ?の様な猿がいた。


この世界における名称が判らないのでゴリラと言う風に呼ぶ事にしよう。見た目ほぼ同じだし。


丁度、僕たちの少し前の方をノッシノッシと群れで移動しているのが見えた。



「何処に向かってるんだろう?」



ふと、日常では見ない光景に好奇心がわいた。


集団で何処かへ移動しているゴリラの群、もしかしたら食べられる果物のありかを知っているのかも知れない。


そう思った僕はゴリラたちをつけて見ようと紅に提案した。



「(まぁ追いかけるのは構わないが・・・かなめ、連中を刺激はするなよ?あの群を相手にするのは骨が折れそうだしな。多分一定以上近づかなけりゃ大丈夫だろうよ)」



と、僕には無い野生のルールを囁いてくれる紅。


僕はその忠告に従い、ある程度距離を持って彼らの後をつけた。


しばらくすると、ゴリラの群は隆起によって地層がむき出しになった崖の元に集まった。


何でまたこんな所に?そう思い様子を見ていると、なんとゴリラ達がいきなり崖から土を抉り食べ始めたのである。


最初はその行動に驚いたけど、ふと観察していて思い出した。


こういう風に野生動物が普段とれないナトリウムやミネラルを補充する為に岩塩の様な鉱物が眠る土を食べることがあると言うのを、以前テレビで特集を組んで放送していた事をだ。


なるほど、野生の知恵ってヤツなのだろう。人間の様にサプリメントがある訳ではないのだ。


僕は猿たちがそうやって土や石を喰らうのを見続け、彼らが満足して去るまでそこにいた。


猿たちが森の中へ消えたのを見計らい、猿たちがいそいそと抉っていた崖へと向かう。


僕が考えた仮説があっているのか確かめたかったのだ。


そんな訳で試しに土を少し抉り、口に含んでみた。


結果は大当たり、土は僅かばかりだったが確かにしょっぱさを持っていた。


つまりこの崖の土にはナトリウム、すなわち塩分が含まれているのである。


コレはありがたい、近くに海がある訳ではないので塩が手に入るか分からなかった今の状況においては重畳である。


とはいえ、流石に料理には使えない事だろう。


泥を食物にして食べる原住民族料理というのを聞いた事はあるが、流石にこの崖の土では無理だ。


そう言えばあのゴリラの何匹かは石も口に入れていたと言うのを思い出した僕はいそいそと石を探してみた。


見つけたには見つけたが砂岩だったと言う風に、何度かハズレを引いたりしたモノの、しばらく探しているウチに頭大の岩塩を発見する事に成功した。


岩でたたいたりして取れた欠片は確かに塩っ辛かった。


いいモノを見つけたと小躍りしそうになった位である。


その所為で紅に奇異の目で見られたけど、別に気にはしなかった。


とはいえ流石に大きすぎて今運ぶのは難しそうだったが、この場所は覚えたので後で取りに来ることにした。


コレであの焼くだけの原始料理が、ある程度は文明っぽい料理にはなる事だろう。


そう思いつつ、僕はこの塩の崖を後にしたのであった。








さて、この後も出てくる魔獣を倒しながら森の奥へと進んだ。


夜はそれ程でもないが何故か昼間はエンカウント率が高い気がした。


昼行性の奴が多いのだろうか?地球とは違う世界だからよくわからない。


そして一度川まで引き返して休憩した後、再度森へと戻り探索を行った。


今度は岩塩を見つけた崖とは違う方角へと向かって歩いた。


違うルートとはいえ魔獣は相変わらず襲い掛かってくる。


そのたびに撃破して僕のLVが14を超える頃、少し開けた場所に出た。


森の中の4mくらいの高さの壁の様に立つ崖の一角で、周囲はテニスコートくらいの広さがある。


あの塩を見つけた崖とは違い、完全に岩で出来た崖であった。


兎に角その崖沿いに進んで行くと、突如崖にぽっかりと口をあけている洞穴らしき穴に遭遇した。



「これは・・・」



見た感じ人が十分通れるほどの穴。


中は暗い為奥の方が見えないが蝙蝠等の生き物がいる気配はしない。


だが、なんとな~く入るのは憚られる感じがする・・・だって真っ暗なんだもん。


どうしようかなと思っていると、ふと隣にいた紅と目があった。・・・コレだ。



「ねぇ紅?」


「(中を見てこいってか?)」


「出来る?」


「(ぞうさもねぇよ。ちょっと待ってろ。)」



そう言って恐れず中に入っていく紅。


いいねぇ動物さんは、暗いとこは怖くないんだから。









「(お~い!かなめっ!中は大丈夫だ!入って来い!)」



意外と早く紅が僕を呼んだ。


5分も掛からなかった所を見ると案外この穴の中は狭いのかもしれない


そんな訳で僕はライターの火をかざしながら洞穴へと降りて行く。


ちょっと油がもったいない気もしたが、暗くて転ぶよりかは万倍もいい。


洞穴は入口こそやや小さいが天井が意外と高く、床は何故か地面では無く砂でああった。


そして鍾乳石みたいなものは一切無く、意外とさっぱりとした造りだった。


出来てからまだ時間がそれ程立っていないのかもしれない。



「うん、いいんじゃないかな?湿り気も無いみたいだし。」


「(それに砂が柔らけぇ…)」



ごろごろ転がる紅、結構気持ちよさそうだなぁ。僕もココはかなりの高物件だと思う。


見た所空気とか澱んでないので住処としてはうってつけである。


だが良い物件だと思ったその時、とある疑問が浮かんだ。


これだけの高物件なのに他の生き物の住処では無いのかと?



「ねぇ、ここって別の生き物の住処じゃ無いよね?」


「(匂いからすると、ココ昨日倒したあのイノシシの住処っぽいぜ?)」



ああ道理で他の生き物が近づかない訳だ。あのイノシシ多分この森の主だもん。


他の魔獣はどう考えてもゲームで言うとこの序盤に登場しそうな連中ばかりなのだ。


つまり食物連鎖の頂点に居たのがこの間のあのイノシシなのである。


そんなヤツが住処にしている穴に近づく生き物はこの森には居ないのだろう。


しばらくはイノシシの匂いも残る事だろうし、良い魔獣避けにもなること間違いなし。


・・・・・・うん、やっぱりいい物件だわ。



「とりあえず、ココを拠点にしようか?」


「(賛成だ、あのイノシシに勝ったんだし、ここを使っても問題ないだろう)」



て言うか良く生き残れたよね僕たち・・・。


僕はあのイノシシと対峙した時の事を思い出してガクブルする。


武器が効かない敵は怖いです。



「(かなめ、床に敷き詰める布団になりそうな葉っぱとか取りに行こうぜ!)」


「・・・そうしようっか」


僕たちは、これまでの戦闘で得たウサギをとりあえず置くと寝床に出来そうな草を探しにいった。


藁でもあれば楽なのだが、流石にそう言ったのは無さそうなので枯れ草を探しに行く。


序でに薪になりそうな枯れ枝や枯れ木も持ち帰った事をココに書いておく。








「さてと、住処も見つけたし・・・紅はどうする?僕一度河原に戻って修業してみるつもりだけど」


「(俺もついてく。此処だと暇だ)」



さて寝床を整えて入口を木の枝で隠すと河原へと向かった。


この住処意外と川に近いのも高得点だ、おまけに洞穴の近くには水がわき出ている所もある。


竹みたいなので水道みたいに水を引いてもいいかもしれない。


まぁでも道具が今のところ十得ナイフしかないから、あまり無理出来ないけどね。



河原に着いた僕たちはそれぞれ己のやるべきことをする事にした。


肉体派の紅はこの近くで敵を狩り、食糧集めに自身の肉体を鍛える事にしたらしい。


序でに食べられそうな生き物も探してきてもらうことにした。


うさぎダケって言うのもレパートリーが偏りそうな気がしたからである。


僕は僕で、一人この河原で魔法の特訓だ。せめて戦いの中で利用できないと辛いものがある。


せっかく使える魔法を使わない手は無いしね。炎をとか出せないだろうか?


そんな訳で修業とかする前に、僕はとりあえず自分のステータスを確認する事にした。



HP(体力)……………………2180/2180     

MP(精神力)…………………5130/5130

LV(現在のレベル) …………LV14        

EXP(現在の経験値) ………670/1503

STR(力の強さ)………………37

INT(知性) ………………… 8052

DEX(器用さ)…………………43

AGL(素早さ)…………………90

CON(耐久力)…………………40

ATK(物理攻撃力)……………83

MAG(魔力)……………………8052

HIT(命中率)…………………56

AVD(回避力)…………………123   

RDM(物理防御力) …………54

RST(魔法防御力)……………726         

LUC(幸運)……………………9

AP(アビリティの装備容量) 50/50

CP(技及び魔法の装備容量)…73/73



見事に歪である・・・おまけにレベルアップでステは上昇しているのに幸運が上昇してない・・・。


魔力なんて基本値が高すぎて、成長したのかどうかが微妙すぎである。


極端すぎてある意味笑うしかない。


そう言えばこの下にあるAPとかCPってなんのことなのだろう?


もしかしてアビリティポイントとか言うヤツとかだったりするのだろうか?


そう思った僕は手帳をめくって調べてみる。するとアビリティと書かれた項目が確かにあった。


アビリティねぇ?どうやって使うのさ・・・。


そう思いつつアビリティと書かれた文字に触れると、突然その文字が変化し追加項目と思わしき文字が浮かび上がってきた。


どうやら触れたりこうしたいと思うと手帳の文字が変化するらしい。


仕組みはよくわからないがユビキタス式の携帯の様なものだと自分を納得させた。


そしてアビリティのメニューを開き、とりあえず経験値UPに触れてみる。


すると“装備しますか?”の文字が浮かび上がるのをみた。


多分、これもあの自称神が与えたチート機能の一つなんだろう。


ゲームの様に、自分のアビリティの付け替えが出来る所なんて特にそうである。




―――気を取り直して、とりあえず初期で覚えていた経験値UPと警戒を装備してみる。



APの表示が50から43へとかわったところを見ると装備された・・・らしい。


経験値UPについては体感できる者でも無いのでよく判らなかったが、警戒の方はさっそく効果が出ているらしく、何だか五感が鋭敏になっている気がした。


意識を集中し音や気配を探ってみると、ココから700mほどの向うの森のなかで、今紅が3匹のウサギを狩っている。


つーか凄いぞこれ?意識さえ集中させれば正確な位置が特定できるなんて・・・。


ちなみに今ある二つのアビリティの性能はこんな感じ。



・警戒  

【装備している間、五感が研ぎ澄まされ気配を探ることが可能になる。長く装備すると感覚を覚えスキルへと昇華する】


・経験値UP

【敵を倒した際の経験値が上昇、さらに鍛冶等の作成スキル系熟練度にも効果あり】



なかなか便利なシステムに驚きつつ、今度は魔法と書かれた文字に触れてみる。


案の定項目が変化し文字が追加された為、魔法を装備すると言うのを選択してみた。


魔法を装備とか良く解らなかったのだが、装備して魔法を使ってみるとその効果がたちどころに理解出来た。


発動が非常に楽なのだ。それこそ魔法を放ちたい方向へと意識を向けて手をかざすだけでいい。


たぶん今までのやり方が、ゲームで言うところのキャンプメニューから一々魔法を選んでいたようなもので、装備した事でコマンドにからショートカットが可能になったって感じかな?



そして最後に昨日から僕を魔獣から守ってくれていたこの木の棒。


これを偶々見つけた装備枠と言う所に出た装備しますかと言う問いに装備すると応えると、何故か表示がオークスタッフ(仮)に変った。


どうやらこの木の枝は(オーク)の木の枝だった様である。


(仮)というのは、多分この棒がまだ木の葉とか横枝がくっついているせいだと思う。


あとで、ナイフで削り、ちゃんとした杖にしたててみようと思う。格好悪いし。


ソレはさて置き、このオークスタッフ(仮)を装備してみた所、若干だがステータスが上昇していた。


つまり装備枠に装備させないと、どんな武器でも効果を発揮しないという事になる。


剣を装備枠に装備しなければ、素手で殴ったのと変わらない攻撃力位にしか為らないという事だ。


敵に武器を壊された時が大変そうだ。


これでは一々戦闘中に手帳開いて武器枠に装備しないといけない。


これではかなりの隙が生じてしまう。ある意味、デメリットだとおもう。


あと不思議な事にオークスタッフ(仮)を装備した状態だと魔法は杖の先から出た。


コレは仕様って事なのだろうか?でもまぁ杖がある方が狙いが付けやすいので問題無し。



そしてスキルの方は持っているとパッシブ。


つまり常時効果を発揮するらしく、つけたり外したりは出来ないという事も解った。


家事A等もそうだが、悪運EXはがあるのは心強い。


あれの効果は説明によると―――


【どんな困難な状況に巻き込まれても生き残る。EXになると隕石の直撃ですら大丈夫!すごいね!】


―――と言ったまるで電波の様な紹介分であった。つまり、余程の事が無い限り死なないという事だ。



まぁこっちが生きようとしなければ効果は発揮されないみたいだけど。


とりあえず一通りの確認も済んだので、今度は新しい魔法の習得に入ることにした。


と言っても、魔法の修業の仕方なんて僕が知る訳が無い。


仕方なしにゲームやアニメや本などの魔法を意識してみる事にした。


それ以外やり方を知らんのだし、あっているかもわからない。


だけどやらないよりかはマシだと思うし、修業法もそう言うのをお手本に試してみる。


岩の上に胡坐をかいて座り、目を閉じて集中する。所謂坐禅や瞑想と呼ばれるモノだ。


意識を集中させ、自身の中にある何かを感じるという。ある種の厨二的な行動である。


この年になってやるとは思わなかったが、もしかしたら何か判るかもしれない。


そんな感じで普段話したらどん引きしそうな事を実際にやってみた。





―――そして50分くらい経っただろうか?




すでに時間がどれほど経ったのか解らなくなっていた。


だが、さっきまで聞こえていた川の流れる音が徐々に遠ざかっていくのを感じる。


更に目を閉じ意識を集中させると音がまるで聞こえ無くなった。


こりゃスゲェと思ったら集中が途切れたのか音が聞えて来たけどもう一度挑戦する。


何度か挑戦していると周囲から音が消える様な状態に持って行けるようになった。


もしもその間に魔獣とか出たら不味い状況だったのだが、そんなことに気が付かない僕は瞑想を続行する。


そして音が消えた中、僕の奥底にあるナニカ・・・それが脈動しているのを感じた。


最初は心臓だと思ったが、それの脈動とはまた違うナニカがそのリズムと共にある事が解る。


それが魔力であるという事を僕は漠然と、そして自然とそう感じ取っていた。


魔法が無い世界に居たのだから、こっちの世界に来て、僕はそういった感覚に敏感になったのかも知れない。


それともあの自称神による改z・・・有り得そうだけど置いておこう、何かヤダし。



―――とりあえず僕はその魔力に意識を向け、引っ張り出そうとする。



イメージは投網で魚を引っ張るソレだ。ヨイセー!ヨイセー!ってなもんである。


気合を入れてやったのだが、意外とすんなり引っ張り出す事に成功した。


少しは抵抗があるかと思ったんだけどな。こういったのってマンガとかだとね・・・。


まぁ簡単に引き出せたのはありがたい。そう思った僕は更に魔力を引きだす作業に没頭した。


何度か引っ張り出すことを身体で覚えさせた後、黙想を止めてからその感覚を使って魔力を引きだしてみる。


若干集中力が必要であったが感覚は既に覚えたのでコレも比較的楽だった。





今度はその引っ張り出した魔力を全身に巡らせてみる。


まずは一番集中しやすい腕の方に巡らせてみると、やはりと言うべきかすぐに纏うことが出来た。


ソレもそうだ。魔法を使うの発射口が掌だったのだから感覚的に覚えていても不思議じゃない。


今度はそれが出来たら脚の先から身体の表面に通してみる。


腕、頭頂部をめぐり最後に基の位置に戻るように意識させながら魔力を動かしてみた。


結果としてはこれも比較的簡単に身体に這わせることが出来た。


その要領で手に持ったオークスタッフ(仮)にも、すんなりと魔力のラインを通す事が出来る。


そうやってしばらくの間魔力を流す感覚を練習する事にした。


最初は未知の感覚に戸惑いを感じたが、徐々に魔力操作の感覚を掴んでいった。


そして、何度か練習がてら撃っていた初級魔法ブラストを、手帳を使って装備枠から外してみる。


若干何か抜け落ちた様な感じは受けたが、今までの訓練で魔力の流し方を体で覚えたからか、最初の時

に比べて大分魔力の動きがスムーズである。


そして気が付いたが魔力の細かな制御は装備しない方がやりやすかった。


これはオートマからマニュアルに切り替えたと言えばいいのだろうか?


装備すると発動は簡単だが、自動的に発動する為魔法を掴むと言う感じでは無いのだ。


そんな訳でマニュアル状態で自由に魔力を動かせる今、今度はその魔力をどれだけ魔法に込める事が出来るのかも試してみる。


オークスタッフ(仮)を装備し、そこに魔力を込めて魔法の起点にしてみた。


魔法を装備していた時よりも多めに流し込むイメージで魔力をとどめるよう意識する。


ゆっくりと慎重にやったからか時間が掛ったが、少しして魔法を装備した時に込めた魔力を越えた。


そのまま更にその感覚を維持し続けると、明らかに普通の時より光が強くなっていった。


この時に止めておけばよかったものを、僕はそのまま溜め続けてしまった。


そして気が付いた時には、溜まった魔力の余波で大気が振動し始めるレベルになってしまっていた。


おいおい、何処まで込められるんですか!?と驚いてしまう。




≪――――ゴゴゴゴゴゴっ≫




・・・と言うかヤバい、流石に自分を中心に波紋の様に風が巻き起こっているのを見ると、コレは非常にまずいのでは?という考えが脳裏に浮かんでしまう。


当然のことながら水平に撃とうものなら大変なことになりそうな予感がした。


その為、僕は杖を空に掲げて、虚空に目がけて撃ち上げる事にした。


これなら上空に大きな鳥とか飛行機でも飛んでいない限り被害は無い筈である。


そう言う訳で僕は杖を空に向けて、せき止めていた魔力の拘束を解除した。


束縛から解き放たれた魔力はまるで極太のレーザーの如く進路上の雲を吹き飛ばしてしまった。


ところで僕は言いたい―――これって初級の魔法の筈だよね?


だがコレはどう考えても衛星兵器並みのレーザーです。戦術核以上です。街ひとつぶっ壊せそうです。


三つとも見たことは無いけど、イメージ的にソレ位ヤバいと言うことをお伝えしたいくらいだ。


コレは絶対に必要以上魔力込めないようにしなきゃと僕は思ったのだった。




***




さて魔力の恐ろしさを実感し、適当な威力に調節するまでに大体2時間30分くらいかかった。


とりあえずいい加減疲れた為、ここまで出来た所で修業を止める事にした。


やや頭がぼーっとするのは魔力の使い過ぎなのだろうか?


兎に角、使い方が判ったアビリティの警戒を用いて周囲に居る筈の紅の気配を探る。


すると前に感じた所よりも若干森の奥の方に移動していた。


それでも意外と近い位置に居たので、そのまま呼びに行くことにした。



「紅~、今日はもう帰ろう」


「(おう!解った!・・・あと、かなめクン。これ持って帰るの手伝って欲しいのだが・・・)」



そう言って紅が前足で指示した先には、大量の生き物が死屍累々の山を築いていた。



「・・・ねぇ紅、やり過ぎじゃね?」


「(結構いい運動になったぜ!・・・けど次回から自重しようかな?)」



そう言うと紅はウサギを二羽咥えた。流石に全部は持ちきれないが、捨てていくのももったいない。


そんな訳で僕も持てるだけの死骸を手に取り、新しく造った住処へと輸送する事にした。


ああ、また解体を自分の手でしなければならないのか・・・そう思うと少し鬱になる。


でも食わないと生物は生きていけないのだし、割り切らないといけないだろう。


幸い血を見ても特に怖がるとかいうのは僕は持っていないのだし、少しすればコレも慣れるだろう。


そして河原で死骸の肉を解体した後、あの洞窟の前で原住民料理を作ったのであった。





――次の日。



午前中は食糧集め兼魔獣を倒すことで経験値を稼いだ。


警戒のアビリティを手に入れてから敵となる生物の位置がすぐに特定できる。


ちなみにどうして敵なのかと言うのが解るのかという仕組みはよく解らなかった。




午後は僕のほうはまた魔法の訓練をすることにした。


ちなみに紅は昨日と同じように周辺で狩りをするそうだ。


でも紅に狩りに行く前にウサギなどを取り過ぎない様に注意して貰うことにした。


ウサギの肉は比較的食べやすかったが、取り過ぎて全滅されると困る。


なので倒すのはなるべく蛇系にして貰うことにしたのだ。


ゲテモノ食いも偶には良い・・・そう思いたいですハイ。


とにかく、美味しいお肉は貴重品なんです。





さて場面が変わってココは河原。


今日は魔法の定番である炎系魔法を使う為、炎をイメージしてみる事にした。


燃え盛る炎を意識して、スタッフの先に魔力を集めてそれが燃える様にイメージする。


魔力が燃料になって炎を生むというイメージに意識を集中させた。



しかしなかなかどうして難しい。


始めてから二時間ほどたったが、火花が出た位でまだ火を出すところまでいかない。


下手に魔力を込めると、周りが火の海になる可能性がある。


その為安易に魔力を込める事は出来ないのである。


アレかな?呪文でも詠唱しないとダメなのかな?


しかし、僕は残念ながらルーン文字とか梵字とかは知らない。勿論ラテン語もだ。


どうしようか悩む事40分。坐禅を組みながら考えていると、ぴきーンと脳裏に考えが浮かんだ。


そうだ、すでに覚えている魔法の呪文を思い出して参考にして見よう!



「たしか〜ブラストォォ!!」



≪ドォ~ンっ!!≫



岩が消し飛んだぜ!・・・・じゃなくてぇ!!


コレではダメである。飽く迄思い出したいのは魔法の呪文なのだ。


無意識で無詠唱だったとか、僕って恐ろしい子!



「えと、呪文、呪文…たしかブラスト覚えた時に頭に流れたヤツ…」



冗談はさて置き、真面目に呪文と言うのが無かったかと思いだすことに意識を傾ける。


え〜と集中集中・・・身体の奥から響く言葉・・・なんかあったっけ?



「“集まりし力は魔力、轟音と供に敵を屠れ、ブラスト”」・・・だったかな?



≪ドォォーーンッ!!!≫



おお、今度は川が一瞬干上がった。まぁそれは置いといて、さっきの言葉が呪文かな?



「“集まりし”が魔力を集中させる言葉で、“魔力”が現れるもの、“轟音と共に”が打ち出すってこと?」



ちなみに口から出た言葉は日本語では無かった。


意味は判るんだけど、日本語では無い何かの言語である。


使えるのだから良いんだが、何だかおかしな気分だ。


そう考えているとまたもや手帳から音が響く。


見れば手帳に新たなスキルを覚えたという文字が浮かんでいた。


そして覚えたのがコレ。



スキル

・魔術理解 A+

【魔法やそれに関するモノへの理解度が深まる。B以上なら立派な魔法使いレベル】



・・・狙ってやって無い?随分とタイミングが良い様な気もしないでも無いんだけど?


あまりのタイミングの良さに、そう勘繰ってしまうのも仕方ないと思う。


でも、まぁ呪文が解ったというのはめっけモンだと思うし、ソレに関して文句は無い。


とりあえず“集まりし”はそのままでいいから、次の“魔力”を“炎”に変換して、“轟音と共に”で炎を打ち出してみればいいんだ。


例え失敗しても、ココは河原だから被害は最低限で済む筈である。



まずは身体の中の魔力を集める。


オークスタッフ(仮)に魔力をつなげてラインが引かれたというイメージを持つ。


十分に集まったのを感じたら、呪文を口に出してみよう。



「“集まりし力は炎、轟音と共に敵を焼け”」



杖の先から轟ッという音と共に紅蓮の炎がたいまつの様に浮かんでいた。


勿論杖が燃えている訳では無く、杖にまとわりつくかのように火が浮かんでいるだけである。



「――ッ!!??」



そして魔法を発動させた途端、急に魔法陣やらなんやの構図や公式が浮かび上がってきた。


余りに膨大な知識が瞬時に脳内に収まっていく感覚はある意味乗り物酔いの様だった。


痛くは無いのだが脳みそを押されていると言う感覚と言えばいいのか?気持ちが悪くなりそうだ。


そしてそれが止んだ所で、頭の中でナニカがストンとはまったかの様な感覚を感じた。



「魔法…また覚えられたんだ…」



手帳を見ると、魔法の欄にnewの文字が現れていた。



new魔法


・フレイムブラスト

【ブラストに炎属性を付加した魔法。直線状の炎が目標を燃やす。込める魔力量で強弱可】

 最下級魔法・射程 近〜遠距離   基本消費魔力量30   必要CP20



――なるほど、ブラストの呪文を基本にしたから、炎属性付加のブラストになったのね。



この新しく覚えた魔法を色々試した所、覚えたら一々呪文を詠唱しなくても平気らしい。


ブラストとかフレイムブラストを思い浮かべながら口で言うだけで済む。


コレは非常に有り難い、敵に会うごとに詠唱してたんじゃ身動きが取れない。


ただ詠唱するしないにかかわらず、魔法の名前を頭に浮かべるか口に出すかしないと魔法が発動しないことも解った。


多分、名称が魔法発動のトリガーになっているからだと思う。



今回の事で解ったのはひらめきや直感だけじゃ無くて、覚えた魔法の呪文をちょっと弄くるだけで他の呪文として使用可能だって事である。


さっきのは炎系だったけど、例えば呪文の“炎”の所を“氷”に変換してやれば氷が造れるという具合に色々応用がきく事が解っただけでも行幸だ。



そう言う事が解った所で今日のところは止める事にした。


明日からは紅と一緒に魔獣を倒しながら実戦で覚えて行こうと思う。



しかし、そろそろ丸焼き系の料理に飽きてきた。


炎くらい操れるようになったんだし、粘土でも見つけて土器でも作ってみようかな?


土器を使った鍋料理・・・野菜が欲しいなぁ。



・あとがき

考えてみると初めて書くなコレ…

どうもQOLです。初めてあとがき書きます。

なにぶん小説を投稿するのは初めてなもんですから

生温かい目で見守って貰えれば幸いです。

でわでわ。

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