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第37章

~出歩いて…落っこちて・第37章~








「煮詰まったわ」


ある日の研究室、僕がポーションの増産をしていると、シエルさんが突然そう言った。


「・・・はぁ?それがなにか?」

「煮詰まった時はおいしいモノが食べたいのよ」

「まぁ、そう言う時もあるんでしょうね」


おっと、いけない早く混ぜなきゃ・・・。


「じ~~~」

「・・・・・・」


ココは確か冷やすんだよね。


「じ~~~」

「・・・・・・」


ええと、試薬Bを熱しながら、風の元素を・・・精霊さんお願い。


「じ~~~」

「・・・・・・・・・・・なんですか?」

「ケーキ買ってきて」

「どこに?」

「クノル」


今からッスか?


「食べたいの~!!」

「だぁー!解りましたからひっつかないでください!セクハラですよ!」

「なによ、美人に抱きつかれたんだからよろこびなさい?」

「・・・・はぁ、最初と全然人が違うじゃないですか」

「あら?誰しも初対面の相手では仮面をかぶるモノではなくて?」


いやまぁ、ソレはそうですけどね?

仮面をかぶらなくなってくれたって事は信頼されたって事かな?

この場合喜んでいいのか、はたまた迷惑だと思えばいいのか悩みどころだな。


「・・・・買いに行けと言いますけど、その分経費で落ちますか?」

「安心なさい、キチンとお金は渡してあげるわ。一人でお使いにいけるわよね?」

「いけますよっ!でもクノルからだと今から出たら帰ってくるの夕方ですよ?」


この魔法学校とクノルとでは片道半日の距離がある。

急いだとしても今から出たら頑張っても帰ってくるのは夕方であろう。


「ケーキなんて生物を持って帰るには遠すぎますよ」

「あら?貴方魔法が使えるでしょ?」

「・・・・冷やして持って帰って来いと?本気ですか?」

「本気よ?それと出来ればお昼までに食べたいわ」


――――なんですと?


「ええ!?そんな!後3時間もありませんよ!?」

「そう言う訳だから頑張ってね?遅れたら・・・・うふふ」

「ヒッ!?行ってきます!」

「はいはい行ってらっしゃい。あこれ代金と買い物メモね?」

「いってきますぅぅ!!」


なんであの人は薬入り試験管片手に笑顔で哂うかな!?

嫌ぁぁ死にたくないよぉぉぉ!!魔法で直せるけど臨死体験は嫌ぁぁッ!

僕は急いでクノルへと向かった。死への恐怖は時に人間の限界を引き出すのである。








途中の平野を駆け、山道を走り抜け、行きはよいよいと言う感じでクノルに着いた僕。

シエルさんに言われたモノを購入し、魔法により冷凍。

後は帰るだけなのだが―――


「ま、間に合わない・・・」


ココからガラクトマンまでは歩きの場合、片道で半日程はかかる距離。

一応ずっと走り抜けたので、かなりの時間短縮は出来たと思う。


しかし途中は曲がりくねった山道となっている。

魔獣避け対策が施されているので、道自体は安全であるのだが。


「もうすぐお昼だけど・・・間に合わない」


半日かかる距離をものすごく頑張って2時間に縮めた僕をほめて欲しい。

ケーキ買う時に店員に顔色を心配されるほど頑張ったのである。

本当にどうしてくれようか?


「うう、直線距離ならなんとか間に合いそうなのに、いっその事空でも飛べたら!」


本当にそう思う。途中の山道が曲がりくねっているのが悪いのだ。

今から間に合わせるには、いっそ空でも飛ぶしか―――!!



「飛ぶ・・飛ぶ?――そうか飛べばいいんだ!!ははは!」



僕自身は自力では飛べないけど、多分魔法を使えば行ける!

間に合わせる事が出来る!魔法薬飲まされない!NOモルモット!


この時、良い解決策を思い付いたモノの思い付いた場所が町の中心だった。

その所為で周りから白い目が凄かった事に気がついた。


その事で急に恥ずかしくなり、足早に町の外へと逃げたのであった。

外に逃げた僕は急いで魔法を使う。使うのは当然あの魔法。


「行くぞ!IT大盾!」


そう人が2~3人くらい乗っても平気そうな盾を作りだすこの魔法。

しかもあまりの大きさに自らでは扱えないが、浮かべたり手を触れず動かしたり出来る。

もう解るだろうが、手も触れずに動かせるのである。


「よし、とべ大盾!」


つまりはそういう事、自ら飛べるのだから、それに乗れば飛べるのである。


「よし!浮いたったた!うわぁた!」


もっともバランスを取るのが難しかったんであるが。

乗って座って見たのはいいが、バランスがうまくとれず落ちた。

しかも危うくケーキを潰しかけたので冷や汗ものである。


「いつつ、良い案だと思ったんだけど・・・・」


打った所をさすりながらポツリとそう呟く。

しかし、どちらにしろこのままでは間に合わない。

間に合わなければどうなるか・・・・考えたくもない。


「くそ!もう一度だ!」


今度は座るのでは無く立って乗ってみた。スケボーの要領である。

立って乗ると意外とバランスを取りやすかった。

一応用心の為に足をスノーボードの如く固定、このまま自らの意志で飛ばしてみた。


「よし、行ける・・・けど遅い!」


いざ飛ばしてみたが、案外遅いのだ。速さにして走る速さ程度である。

元々盾は飛ぶものでは無いのだから仕方ないと言えば仕方ない。

だけどもっと早く飛べないと飛ぶ意味が無い。


「何かないか!なんかないか!・・・・そうだ!精霊さん!」


目の前から吹き付ける空気抵抗が結構ブレーキになっていたので精霊さんに頼む。

少し魔力を消耗するけど風の下級精霊さんが空気抵抗を弱めてくれた。

なので少しスピードが出る。


「うう、もっと、もっと早く!」


だけどまだ遅い、速さ的には自転車で全速力出した程度。

やっとこさギリギリに着けるかどうかって所である。

しかし今の僕にそんなの考える余裕は無い。シエルさんのお仕置きだけは嫌なのだ。


なにせ以前試験薬を投与されたマウスが・・・・ああ!思い出したくもない!

必要に迫られている為、ものすごく混乱している。なにか、何かないか!

こうジェット機の如く・・・ジェット機?


「いやいや、流石にジェット機は作れない」


幾らITでも構造がよくわからない機械類は作れない。

ジェットエンジンの構造が解るなら、本物と同程度の力は出せるだろう。

だがそれが解らない以上、飛ばしても今と同じくらいしか速度は出ない。


逆にジェット機なんて複雑なモノを作ろうとすればそれだけで無駄に魔力を消耗する。

かと言って大盾にジェットエンジンをつけたところで小さくて役に立たない。

プロペラは、なんとなくスピードが出そうな気がしなかった。

ロケットなら違うだろう。アレはもっと力強いから・・・ロケット?


「ロケット!そうだロケットだ!ブラストを使えば!」


ブラストを長く放出し続ければ、反動で速度が出せるのではないか?

特にロケットをイメージしてやれば・・・。


「やってみよう・・・・ブラスト」


腕の先では無く、道具の延長からと言う事で大盾の後ろから噴出させた。

普段は反動を無しにしているが、意識的にソレを外してみる。すると・・・。


「う、うわぁぁぁぁぁぁッッ!!!」


―――――恐ろしくスピードが出た。成功したらしい。


しかし若干早すぎる気がする。

早くなれと願っていたのに、いざ早くなると早すぎとかどんだけぇと思ったが早いもんは早い。

クノルに行く際走り抜けた山道を眼下に、そのまま飛び続ける。だが―――


「さ、さむい・・・」


低空で飛行しているがコレだけ早いと風が強い。

精霊さんに頼んで耐えられる程度に抑えてあるが、それでも体感温度は寒いのだ。

おまけにそれでドンドン表面温度が下がって行くのでマジで寒い。


早くつけと願ったらまたスピードが上がってしまったので余計に寒い。

しかしお陰でガラクトマン魔法学校が目と鼻の先までに迫って来た。

とりあえずガラクトマンのちかくの平野に降り立ち、急いで研究棟へと向かうのであった。


「シエルさん!買ってきました!」


僕が慌てて研究室に入ると―――


「あら、お帰りなさい。どこに行ってたの?」

「いや、貴方に頼まれてケーキを買いに・・・」

「ああ、そう言えばそうだったわね。御苦労さま」


何故か普通になっているシエルさんが居た。WHY?


「あ、あれ?煮詰まっててケーキ食べたいんじゃ」

「あの後スッて答えが出たのよ!それがもう嬉しくて嬉しくて!」

「・・・・つまり僕のしたことって」

「無駄じゃないわよ?ケーキ食べたかったのは本当だしね」


新薬の配合について悩んでいたのだが、ふっと思い付いたんだそうだ。

そしたらそれが大当たりで、作りたかった魔法薬が完成したと言っていた。

何の薬かは知らない・・・どうせ凄い効果の薬何だとは思うけどね。


「・・・・はぁ、それじゃコレどうしますか?」

「う~ん、おやつ時に食べたいから冷やしておいてくれる?」


僕は冷蔵庫か何かなんだろうか?


「了解しました。後で立て替え分頼みますよ?あとつかれたのでちょっと休みます」

「はいはい、今日はどちらにしろ殆ど仕事は無いからもう上がってもいいわよ」

「失礼します」


片手にケーキの入った紙箱をもち、研究室を後にする。

ケーキは・・・部屋においておこう。

氷属性の下級精霊さんに頼んで冷やしておけば良い、一日くらい持つよ。


ドッと疲れが出たのだが、気にせずに研究室を後にする。

僕のこの苦労は何だったのだろうか?そう思うとやるせない。


部屋にケーキを置き、精霊さんに後を頼んだ後部屋を出た。

あ、考えてみたら今クノルにはレンさん達もいるんだった。

序でに会ってくればよかったなと思ったけど後の祭りってヤツだね。


とりあえず、ふとしたことで覚えた空を飛ぶ方法をもう少し確認してみる事にしよう。

どうやらITの延長線と言う事で、新魔法という扱いにはならない様である。


しかし、急いでいたとはいえ何故盾に乗るかな?

魔法使いの空飛ぶ乗り物と言ったら―――


「試してみよう。IT箒」


―――やっぱりコレでしょう?イメージ的にはコレが結構解りやすい。


「さて・・・ココじゃ狭いな」


流石に何時も使っている部屋じゃ狭くて練習できない。

どうせ午後はオフな訳だし、ちょっと外に行って確かめることにした。



***



とりあえずどうだったかの結果だけ述べよう。箒は無理でした。

飛ぼうとしたんだけどね・・・・食い込むんですよ。

あえて何がとはいいませんけど箒じゃ空は飛べません。


「中東の人が魔法のじゅうたん使うの解る気がする」


あれなら乗り心地は箒よか何倍も良いだろう。

少し痛むお尻をさすりながら僕はそう思った。


「やっぱり大盾の改造版が一番乗りやすかったかな?」


そう、魔法のじゅうたんも試してはみた。

だけど、どうしてもクニャンクニャンとしているので微妙なのである。


スピードも走る程度しか出せないし空気抵抗が大きすぎるのだ。

あれなら板状になっている大盾に乗った方が早いと思う。


「ITシールドボードって所か・・・先をとがらせたら攻撃も行けるかも・・・」


問題はスピードだろう、ソレと防寒対策も必要だ。

スピードについてはブラストが推進力として使えるのが解ったのでソレを利用する。

ただの魔力放出ではなくてエアブラストのように風を伴えばもっと早く出来るだろう。


防寒については風の精霊さんに頼んで、断熱率を上げてやるくらいだろうか?

もしくは火の精霊さんに頼んで、少しだけ周りの空気を暖めて貰うとかそういった感じ。

おお、意外と使えそうになってきたじゃないか!


「よし、後は練習あるのみ!がんばるか」


この日の午後は空を飛ぶ練習に費やした。

ああ、早い所家が欲しい、このままじゃいつシエルさんに実験台にされるか・・・。

五体満足で楽しく生きることを目的に頑張らなきゃと思った。


***


出て来た人たち。


*五十嵐かなめ

言わずと知れた主人公


*紅

元犬のドワーフ、赤毛


*自称神(監視者)

放置プレイ大好物、遊びと実益を兼ねてかなめ達を魔改造


*受付のお姉さん

名前が何時までも解らない謎の人。


*ギズボン・ウェルシェ

ドラゴニュート、関西弁


*エルダー・シェットランド

ガラクトマン魔法学校の生徒、礼儀正しいが何気に周りが見えて無い


親方(ゲイル)

商人ギルドに所属する凄腕親方、我流で覚えた気合で戦う


*ルーズ

親方の手下1


*ラジャニ(ラジエル・レン・ディモール)

本屋の店主、その正体はガラクトマン魔法学校の研究者


*キース

冒険者、スーパー方向音痴、初心者用ダンジョンで一週間さまよえる


*シエル

凄腕魔法使い、そしてガラクトマン魔法学校の教師兼研究者でもある


*ルード&ロアル

剣士と弓兵、今後出るかは未定


*ルアリス&トール

ネテの町で暮らす姉弟、姉はスリが出来るシーフさん。弟は病弱


*ヴァルカン・H・ウルカヌス

自称ヴァル、他称改造バカ。ゴーレム研究会副会長を務めるガラクトマン魔法学校の生徒。

魔法金属精錬が得意で変な発明品を生みだす事でも有名(悪い意味で)

一部お菓子作りでも有名だったりする。家事能力は高い。


*クレア・ディスパテール

ガラクトマン魔法学校のゴー研ことゴーレム研究会の会長。

女房役のヴァルと共に日夜ゴーレムについて研究している。

一応長であるので、ゴーレム等の魔道技術に関してはかなりの物。

しかし実力をもって押し通る事もあるので技術者と言えるかは怪しい。



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