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第32章

*あらすじ*


・かなめ、エル君を部屋に呼ぶ。


・最初のお仕事、鑑定作業。


・東洋と呼ばれる地方がある事をしる。


・謎のゴーレムに追われて、絶賛逃亡中。  ←今ココ。

~出歩いて…落っこちて・第32章~














『マテヤーーー!』

≪ガシンガシンガシン!!≫

「なんでこうなるーーーーー!!」




僕は、ゴーレムであるタロスにロックオンされて、全力で逃げている。

何故全力か?タロスは見た目が鈍重なくせに、バカみたいに脚が早いからである。

つまり、今の僕は久々のライブでピンチってヤツなのだ!



『標的、逃走、ロックオン、投擲開始』

≪ぶぉん!!≫



何時の間に拾ったのか解んないけど、壁の一部だと思われる瓦礫を、

プロ野球選手張りの、とても綺麗なフォームで投擲してきた。僕目がけて・・・。



「ぬぅぉぉぉぉぉ!!!」

≪ズズン!!≫



んな!?小さなクレーターが出来てるよ?!

思わずキャラじゃ無い声で叫んじゃったけど、こっちも必死だ!!



「ちょっ!」

≪ズズン!!≫



「まっ!」

≪ズズン!!≫



「やめてッ!」

≪ズズン!!≫



ど、どうしよう?多分アレこの学校で造られたモノでだとおもう。

壊せるけど、勝手に壊して後で弁償とか言われたくないし・・・。



「―――って、考えてる場合でもなぁいっ!」

≪ズズン!!≫



スンごい至近距離に着弾(?)した瓦礫を見て、冷や汗が流れる。

何だか段々コントロールが上がっている様な?と言うか学校側で対処してよ!!



「うわっ!!IT(イマジンツール)大盾(ビッグシールド)!!」

≪ドガン!!≫



よそ見していた所為で、跳んできた瓦礫に当たってしまった!

やば、跳んでくる瓦礫が多過ぎて避けられない!?

つーか何?あの瓦礫の量は一体どこから・・・



『フン!』

≪ガシっ!ガラガラ――≫



・・・って、近くの建物からもぎ取ってるのね。



「くぅ!IT大盾×2!!」

≪ドガガガガガガン!!!≫



ぐぅ!なんという馬鹿力!!大盾を手で持ってたから、衝撃で手がしびれて来た!

キマイラの時みたいに、貫通するほどの威力は無いのが幸いってとこか。



「ってまた来たぁぁぁ!!」



どうやらタロスさん、数で押し切る作戦に切り替えられた模様。

小さくて人間の頭、大きくて上半身くらいの大きさの瓦礫が、

ビュンビュンと数十個ほど、僕目がけ飛来してくる。



「もういやだぁ!!シェルショット!!」



アレだけの数の瓦礫を相手するのは、いくらIT大盾でも荷が重いと判断。

ブラストの上位魔法で、射線が拡散するシェルショットで迎撃を行った。



≪バガガガガンッ!!!≫

「良しっ!」



そして迎撃は成功した。僕に命中する瓦礫だけを全部叩き落せたのだ。



「少しくらい傷がついても、コレは正当防衛だよね?」



僕は魔法を発動し、IT(イマジンツール)エア・ジャべリンを形成、そのまま投げつけた。

本邦初公開だけど、風の属性付与により投擲距離と貫通性が大幅UPした特製槍だ。


思いっきり投げたジャべリンは、風を纏って一気に加速し、タロスへと直進する!

そして、ジャべリンがそのままタロスの身体に命中するかと思ったその瞬間。




『魔力探知、魔法攻撃、確認、熱焼防御起動』




とたん、黄色味がかったタロスの身体が、赤銅色に変った。

そしてそのままタロスは、迫りくるジャべリンを避けようともせず、そのまま受け止めた。





否、受けとめたのでは無く―――――――



≪バシュン≫

「うそん・・・」



当たる直前に、ジャべリンがタロスが発するあまりの熱量に、実体化を解いて蒸発してしまった。

・・・・・な、なんて言う出鱈目なッ??!!



「そんな防御方法なんて、なんかひきょうだぁぁぁぁ!!!!」

『エモノ、逃ゲルナ』



驚きつつも、逃走する僕を“ぐぽーん”と眼を光らせながら追いかけようとするタロス。

でも、流石にアノ熱量は機体に負担をかけるらしく、若干移動速度が低下しているのが幸いか。


おまけに、自らの足元が、瞬間的とはいえ己が出した熱量により陥没していた。

そのお陰で脚を取られて、まだ上手く動けない様だ。


ちなみに足元は石畳であり、ソレを溶かす熱量なんてトンでも無い熱量なんだけど。

タロスの半径2mくらいしか溶けていないので、何らかの魔法的処置が施されてるんだろうなぁ。



「もう追いかけて来るなぁぁぁぁ!!」

『マテー』

≪ガシンガシンガシン≫



何でだろう?タロスの脚は少し壊れたお陰でもう全然速く無いのに、全く振りきれないのは?

もしかしてアレですか?某ホッケー選手のマスクをかぶったチェンソー同好会の人間からは、

絶対に逃げられないというアノ謎の原理とおんなじなんですか?!




と、とにかく逃げ切らないとマズイ、何かこう煙幕的なモノはないか?!

ぽくぽくチーンってやっているヒマは無い!!何か何か・・・!!

――――ピコーン!!平目板――じゃなくて閃いた!!これなら・・・って!




「ああ、もう!思いついたけど、なんで設定し忘れてるかな僕!!」




一つだけ思いついたけど、手帳で装備しとくの忘れてたから、マニュアルで行わないといけない。



「ッ!“集められ凝縮されし力”っとわ!?」 

≪ズズン≫



難しい魔法なので詠唱を開始したら、タロスも瓦礫を投げるのを再開した。

紙一重で横に避けたから、何とかなったけど、当たったらマズイ!!



「“精霊の契約の名の元に”っなは!!」 

≪ズズン≫



また至近弾、だけど今詠唱をやめる訳にもいかない。



「“今放たれる”のっほっ!」

≪バゴン!≫


呪文に込められた言霊に答え、逃げ回る僕の周りに、魔力が集まり始める。



「“敵を押し流せ”ドッせいッ!!」 

≪ドゴン!≫



今度は巨大な岩が跳んできたが、何とか回避成功。掠ったけど。

そして集まる魔力の弾、その数は十数個に及ぶ。



「“大いなる水滴”うひゃっ!?」

≪ザリリッ!バカン!!≫



掠った!掠ったよ!!だけど、もう最後の工程に属性をつけられて魔法は完成だ!!






「エレメンタル・ミサイル!!!!」






放たれるのは、魔力の誘導弾。以前ネテの屋敷地下にて一度使用した魔法である。

しかもウィンディとの契約によって、かなりバージョンアップした魔法だ。

水の属性が付いた魔力の弾数十個が、まるで急流の如くタロスへと殺到する!



『魔法攻撃確認 熱焼防御』



しかし、当然魔力に反応して、タロスがまた白熱化して防御しようとする。

―――――――だけど、その行動は読んでいた!!



≪ボシュゥゥゥゥ!!!≫

『!!??』



誘導弾がタロスに命中した瞬間、爆発が起こり辺り一面白い煙に包まれた。

タロスはいきなり視界が遮られた事と、状況把握が出来ない事による混乱で動きを止めている。

何をしたのかというと簡単な事である。水蒸気爆発を利用したのだ。


エレメンタル・ミサイルは、ウィンディとの契約により水属性が付けられている。

魔力により、空気中の水分を集めて圧縮した弾であるからその本質は水なのだ。

つまり形成される弾は、ある意味純粋な水に近い。


それが瞬間的に金属ですら融解させてしまうような熱量を誇るタロスに命中すればどうなるか?

水分が一気に気体にかわり、急激に膨張する事で、あたかも爆発したような現象が起こるのだ。



―――――まぁ普通なら、水弾自体も到達する前に消えちゃうんだけどね。



それでも大丈夫だったのは、タロスの防御機構が常時発動型では無く、

攻撃が来た時のみ、瞬間的に発動するタイプの防御機構だったから、何とかなったのである。

水弾は一斉に撃った訳では無い、発射する際に多少間隔をずらして発射したのだ。


最初の弾幕は熱により消滅したが、次弾幕は白熱しているタロスのボディに命中。

後は結果を見ればわかる通り、爆発とあたりに水蒸気による煙幕が出来たって訳なのである。

そういう訳で、僕は視界が隠れているその隙に、全力を出してタロスから離れようとした。



だが――――――



『動体センサー、感知。エモノノ距離把握、フィストファング発射』



どうやら僕の認識は甘かったらしい。

白い煙の中からゴツイ手が伸び、僕を目がけて発射された。

視覚だけに頼っていた訳では無かったらしい。というか――――



「ロケ○トパンチィィィ?!」



いや、まぁロボットにそういうの付けるのは、ある意味ロマンですけどね?!

一体どこの誰だタロスを作ったヤツは?・・・・・この学校の生徒かな。



≪ドンッ!グワシっ!!≫

「ぐあッ!!」

『目標捕捉、サァ覚悟シロ』



そして、変な事考えてしまった所為で、とてもゴツイ手に捕まってしまった。



≪ギリギリギリ!!≫

「ひぐうっ!」



タロスの手は、僕の身体を凄い力で締め付ける!

普通の人間なら、スプラッタになる事、請け合いだと思うくらい強力な圧力だ!

だが僕の場合、自称神からの改造+今までのレベルUPにより、そこまでのダメージは無い。


その代わり―――――



「くぁ・・く、くるしぃ・・ひぐあっ!」



圧力が足りない為、非常に微妙な締め付けの所為で、気絶する事すら侭ならない。

それどころか、意識がある分、余計に苦しみが鮮烈に感じられて質が悪い。

抜けだそうにも・・・その、なんて言うか変な感じにしまっちゃって、動けない。



≪ぐぽーん≫

「う・・わっ・・しめつけ・・るなぁぁぁ!!」



痛い!冗談抜きで地味に痛い!

感覚的に言えば、立ち上がろうとして天井に頭打ち付けて、タンスに小指打ったくらい痛い!

本当に微妙に痛い・・・・くっ、もうコイツマジで壊してもいいかな?!。



『エモノノ耐久性高シ、熱焼防御システムニヨル破壊、外殻損傷ニヨリ起動不可』



な、なんかタロスがブツブツ言ってるんだけど・・・・すごく嫌な予感がする。



『理想的破壊、“グルグルブン回シテ叩キツケル”事ヲ推奨、実行』



え゛!?グルグルぶん回すって・・・まさか?

タロスは僕を捕まえている腕から伸びる鎖を持つと、思いっきり引きよせた!



「うっひゃぁぁぁ!!!」

『フンッ!』



タロスに引っ張られた僕は宙を舞う。

僕が跳んだのを確認すると、タロスは手首をモーターみたいに回し始めた。

その力が鎖を通じて僕に伝わり、タロスを中心にして僕は円運動を開始した。



「うわうっ!・・・・・だれかぁぁぁ!!とめてぇぇぇぇぇ!!」



回転する世界、逆転する天地、そしてそのスピードはドンドン速くなっていく。

そして身体を絞め付ける強烈な遠心力が、僕の身体を蝕んでいった。




そして何よりも問題なのは――――――




「(うぷ・・・もう、だめ、目が回って・・・酔いそう)」




僕の胃袋からのオーバーリミッツが、限界に達しそうになっていたと言う事だった。

でもそんな事はお構いなしに、回すスピードはドンドン速くなり、世界が線に見えて来た。

もう色んな意味でムリ!限界!で、出ちゃうぅぅ!!――――と覚悟したその時。





気功(きこう)牙剣(がけん)!!」





どこか聞き覚えのある声と共に、僕にかかる遠心力が激減し、そのまま放り出された。

放物線を描き、一直線に近くの建物に飛び続ける僕。

当たったら・・・・グチャってなるのかな?とか一瞬考え、そして激突した。





だけど――――――




≪ぷにょんッ!≫

『ま、間に合いましたぁ』




固い感触は無く、あったのはとてもやわらかい何かにつつかれた感触。

朦朧とした頭でも解ったのは、このやわらかいモノがクッションになってくれたと言う事。




「無事か!かなめ」

『まったく・・・かなめ様は、なんで気が付けば厄介事に巻き込まれているんですか?寿命が縮むかと思っちゃいましたよ?』





聞いた事のある声、この声は――――――





「うう、ごめん。紅、ウィンディ」





―――――信頼出来る僕の仲間達だった。





見れば僕と壁との間に、大きな水玉が浮かんでいる。

どうやら僕は、ウィンディが作りだしたこの水玉に包まれたお陰で、建物との直撃を免れた様だ。



「ま、かなめが厄介事に巻き込まれるのは、いつもの事だしな」

『そうですね。まぁ私たちが助ければ良いだけですけど』

「ちげぇねぇ」



・・・・なんかボロクソに言われてるかのような?というか。



「そういえば、二人とも何でココに?」

「なんでって、コレだけデカイ音立ててりゃ、俺の耳に届くって」

『野次馬がてら見に来ただけでしたけど、かなめ様が巻き込まれていたとは想定外でした』



どうやら鍛錬していた所にまで、轟音が届いていたらしい。

うう・・・しかし、面目無い。



「うっ、面目無い」

「・・・ま、それは良いとしてだ。アレ何でぶっ壊さないんだよ?」



そう言って紅が指さしたのはタロス。



『そうですよ。かなめ様の力なら、跡形も無く吹き飛ばせたでしょうに』

「・・・・場所が悪過ぎるんだよ」



何せココは魔法学校のど真ん中、タロス位ならブラストで事足りたんだけど・・・。



「下手に魔法使って、辺りに被害が出たら眼もあてられないよ。おまけに、アレはこの学校の所有物だろうから、下手に壊したら、シエルさんに迷惑かけちゃうよ」

「でもソレでかなめが傷つくのは、俺はいやだぞ?」

『私もです!命が掛かってるのに、自重なんてしないでください!!』



嬉しい事行ってくれるね二人とも。



「・・・言っておくけど、僕だって命が惜しいよ?」

「じゃあ、何で?」

「言ったでしょ?僕がココでアレ壊して責任がシエルさんに行くかもしれないって」

『あっ!』

「そういうこと・・・か」


どうやら察して貰えた様である。


「たしかに、シエルさんに借りを作ったあげく、怒らせたら・・・」

『明日の陽の目は見れませんね。むしろ生きるのが辛い身体にされたりして・・・』

「・・・とりあえずこの話は後にしよう。タロスが再起動しそうだ」


見れば、紅の攻撃で一時的に動きを止めていたタロスが、小刻みに振動している。

どうやら、自己回復機能も付いているらしい、なんて厄介な自動(オート)人形(マタ)!!



「・・・さて、どうするよ?」

「・・・逃げるしかないかな、今は」

『でも、いざとなったら破壊しましょう。襲われたのはこちらですから、正当防衛です』



そう言うと紅は剣を構え、ウィンディは水のリングを展開、僕もITで杖を造り出した。

睨みあう僕達、どちらかが動けばすぐに追いかけっこの再開だ。

どうやって逃げるべきかと、考えを巡らしていたその時。






「そこのお前達!時計塔へ向かってにげろ!!」





―――――凛と響く声が、辺りに響いた。




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