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第30章

~出歩いて…落っこちて・第30章~










「大きいなぁ」

「くあ」

「デケェ」

『これは…何ともはや…以前見たころよりも大きい』


僕たちは、クノルの町を出て、半日の距離にある、門の前に来ていた。

門の周りは6mはありそうな塀に囲まれており、中には広大な規模の施設が乱立している。

もはやそれは一つの町と言っても良いかもしれない。その名も――――――


「ここが、ガラクトマン魔法学校かぁ」

「学校ってよりかは、町だよなぁ?」

『最初の頃は只の屋敷一つだったのに、随分大きくなりましたねぇ』


ガラクトマン魔法学校、グランシュバッテ唯一の魔法学校である。

また、魔法研究…なかでも“魔法汎用技術転用”の研究は他に類を見ない規模なのだとか。

まぁ簡単に言えば、小学校から大学、はたまた専門研究施設まで備えたモンスターってとこかな?

と言うか、ウィンディ…何故知っている?


「ところでよう、かなめ…本当にココ、入るのか?」

「……気持ちは解らんでも無い」


なんか、さっきから壁の向こう側から、ガシンガシンだの、シューポンッ!だの…。

なんだか怪しい音が響き渡っていて、なんて言うか…その。


『ここだけ異界って感じですねぇ』

「……言わないでウィンディ、気が滅入るよ」

『あ、ごめんなさい』


ふぅ、とりあえずココに居る間は退屈する事は無さそうだ。

―――――と言うか、何かトラブルに巻き込まれる気がするのは、気のせいだろうか?


「……で?どうやって入る?」

「うん、何でもギルドからの書類が通行証になるんだって」

『まぁとりあえず中に入りましょう?ココに居てもしょうがなさそうですし…』

「そうだね、一応ココ門の前だし」

『あ、私はかなめ様の中に入ってます。あんまり人に見られるのもアレなので』


まぁ、ここはクノルと違って、ウィンディの魔力を感じられる人間が多そうだもんねぇ。

しょうがないと言えばしょうがないか・・・。








ウィンディが僕の中に入り、門の詰め所に居た守衛さんに書類を見せる。

連絡は来ていたらしく、そのまますんなりと門の中に入れてもらえた。


「塀の内側は、やっぱ広いねぇ」

「と言うか、俺達浮いてるよなぁ?」


円状の塀の中には、増設されていったと思われる建物が、モザイクのように立ち並び。

さりとて外観を崩す事も無く、どことなく調和が図られている。


車なら2台は楽々通れそうな大きな道路が、中心部に向かって伸び。

その先には時計塔を兼ねた尖塔が、堂々と天に向かって伸びていた。


そして、周りの人達は皆、制服だと思われるローブを身にまとっている。

対してこちらは、紅は動きやすい事を考慮した露出度の高い服。

地味ではあるモノの、質実剛健なレザー系装備+マント姿の僕である。


布製の所謂魔法使いルックな生徒たちの中、僕たちはかなり異質で目立っているのは明白だった。

なんだか奇異の視線を感じ、どことなく気恥しいんだよね。


「…シエルさんのところに急ごう。彼女の研究室は研究棟にあるらしい」

「場所は?」

「フッ、ぬかりない…さっき守衛さんに聞いた」

「じゃあ急ごうぜ」


そして僕たちは、この場から逃げ去るかのように急ぎ足で、研究棟へと駆けて行った。

まぁどちらにしても、仕事の都合上、繋留しないといけないんだけど・・・・。

気分の問題ってヤツ・・・・かな?まぁそうしといてくれるとありがたいな、うん。


………………………


…………………


……………


研究棟は門前広場からすぐ目の前にあった。

なんでかって言うと、そこの魔法使いたちは、研究の為しょっちゅう外に出るらしい。

だから、門の近くにあった方が、何かと都合が良いだってさ。

まぁ、理由はそれだけでは無いらしいんだけど…。


「―――――で、シエルさん。僕は何をすれば良いんですか?」

「あら、久しぶりに会えたのに、もう仕事の話?せっかちね」


さて、その研究棟の一角。シエルさんの居城ならぬ研究室に、僕たちは赴いていた。

こざっぱりとした応接室の様な場所で、調和を乱さない程度の調度品が置かれている部屋だ。

シエルさんに出迎えられた僕たちは、せっかく来たって事でティータイムと洒落こんでいた。


「いや、せっかちって言うか…俺達仕事しに来たんじゃねぇか」

「と言うか、僕としては何されるのかが、ものすご~く不安だったり?」

「あら、それ程大変な事じゃないわ?只単に実験体に…って何離れてるの?戻りなさい」


笑みを浮かべながら、何気に一番聞きたくは無い単語が出て来たので、思わず距離を取っていた。

あなたがソレ言うと洒落にならんですよ、ハイ。


「・・・僕、モルモット?」

「あら、ソレは只のジョークよ?・・・何ならそうしても」

「はい、何の仕事をするんですか?!ジョークも良いですけど仕事の話をしましょう」

「残念ね」


モ、モルモットだけは慎んでお断りいたしますッ!!!!


「ふぅ、まぁあなたを読んだ理由はね?私の助手をしてほしいって事なのよ」

「助手・・・ですか?」

「そう、助手。と言っても専門的な知識はそう要らないわ。ある程度魔力に精通してればいいの」

「………モルモット的フラグの予感」

「フラグ?…とかは良く解らないけど、少なくとも普通に助手だから安心して?」

「その言葉…信じても?」

「なによ?別に新薬の実験台になって欲しいなんて………少ししか考えてないわよ?」

「・・・・・」


少し考えてるんかい?


「やってほしいのは、研究材料となるアーティファクトの鑑定…確かあなた鑑定出来るのよね?」

「ええっと、はい出来ます」


サーチ使えば良いんですよね?


「ソレと、私が講師をしている授業を、偶に手伝ってほしいのだけど…」

「講師?授業?」

「ああ、この間旅から戻った後、復帰したのよ。こう見えても学校の先生なのよ?」

「そうなんですか」


ふと生徒相手に新薬実験をしているビジョンが浮かんだので、必死に頭を振ってもみ消した。

いくらこのヒトがマッドでも、そこまではしない・・・・と思いたい。


「どうしたの?頭なんて振って」

「いいえ何でもないです」

「そう。ソレと後は新魔法の実験の手伝いよ?むしろ、これは簡単かも知れないわね」

「そうなんですか?」

「だって、あなた人工精霊従えているでしょう?」

「ウィンディの事ですね?」

「ええ、彼女が協力すれば、魔法構築式や魔力の流れの解析なんて朝飯前よ」


そうなん?と心の中でウィンディに聞いてみると、僕の中のウィンディから肯定の返事が来た。

へぇ、そんな事も出来るんだ?面白いなぁ。


「報酬としては、お金か現物かで支払われるけど問題は無いわね?」

「ええ。……現物って何がもらえるんです?」

「そうねぇ…報酬金額とおんなじ程度のモノを貰えるわ。希望すれば変更も可能よ?」

「……家って貰えませんかね?」

「家?そう言えばクノル郊外に、ウチの名義の今は使われていない廃屋に近いモノならあったけど?」

「それでも良いです。壊れてるのなら自前で直せますから」


伊達に森の中で、自給自足はしてなかったんですよ?

工作とかが結構上手くなったと思うんだ。うん。


「ま、一応学校側に貰って良いか聞いてみるけど、ダメなら諦めなさい?」

「了解です」


良し!上手くいけば当初の目的である、家を手に入れるって言う目標が叶うぞ!!!

考えてみればあの森の洞窟を出て、結構な時間が経っている。ココまで長かったなぁ…いやホント。


「じゃ、まぁそういう事だから。とりあえず3カ月は頼んだわよ?」

「け、結構長いッスね?」

「ふふ意外と時間は早く過ぎ去るモノよ?気が付いたら終わってるわ」

「そんなもんですかね?」

「そんなモノよ。あ、あなた達が住む場所なんだけど、研究室の一室を開けて置いたわ」

「じゃ、ソコ使わせてもらいますね?」

「ええ、一応ベッドだけは入れてあるわ」


おう、ソレはありがたいね。


「感謝します」

「礼には及ばないわ。あと、仕事は明日からだから、今日は学校内でも見学してなさい」

「解りました。それじゃ…」


僕たちは部屋を出て行こうと思い、席を立った。


「あ、忘れるところだったわ。ハイコレ」

「っと…これは?」


部屋を出ようとしたところで、何かを思い出したシエルさんから、何かを投げ渡された。

手の中にあったのは、小さな木のチョーカー。


「ソレ、ココでの身分証代わりだから無くさないでね?」

「了解です。……へぇ魔法刻印で識別できる術式かぁ」

「あら、やっぱ解るのね。まぁソレ位の術式、ココでは基礎なのだけどね」


よーく見れば、裏側の木目に隠れて、小さな文字がびっしり書かれてる。

こんな小さいヤツでも、マジックアイテムなんだなぁ。


「それじゃ今度こそ」

「はいはい、それじゃあ、また明日ね?」


シエルさんは、僕たちが部屋から出ると、パタパタ手を振った。


「あ、住む部屋はココから右に曲がってつきあたりよ?」

「了解です」


こうして、この学園での仕事がスタートする事となった。


***


「食用ロック鳥がキロ当たり50G~?高いなぁ~」

「“硬派な貴方にお届けする、食用コカトリスの卵 Lパック10個入り10G”…誰が買うんだ?」


部屋に荷物を置いた後、見学がてら購買へと足を運んでいた。

しかし流石は魔法学校、信じられないものが食用で売られていたりする。


「おい、かなめフェニックス焼きだってさ」

「………本物じゃ無いよね?流石に」


・・・・・有り得そうだから困る。

でも、もしそうなら、そこら辺じゅうに、不老不死の人で溢れ返っているだろうから違うか?

まぁ、実際に売られていたのは、普通のネギま串だった。何でも焼き方に拘りがあるんだとか。


「おお!“らみあさんが作る特製カチューシャ”が150Gだと!や、安い」

「らみあって…あ、マジもんか…」


雑貨屋みたいな店にて、売っている店子が、リアルにラミアでした。

ラミアって良くモンスター扱いだけど、ココだと亜人扱いなのかしらん?


なおラミアと言うのは、上半身女性で下半身が蛇という生き物である。

地球の方だと、海神ポセイドンの娘であり、美しい娘だった為、

主神ゼウスに見初められたんだけど、ゼウスの妻ヘラに嫉妬を買い、

呪われた所為で、今のような姿にされてしまったらしい。


まぁ、そこで店子してるラミアは、普通に女の子みたいだったけどね。

そう言えば、どうやって子ども作るのかが、良く解らない不思議な種族だなぁ。

………ちょっと無粋かしらん?


「おもしれぇモンが売ってんなぁ~オッ“夜道も安心 ウィル・オ・ウィスプランタン”?」

「………沼地付近じゃ注意しないといけなさそうだね」


ちなみにウィル・オ・ウィスプは、鬼火とか人魂の事。

夜、コイツの光に着いて行くと、行き先は底なし沼か崖とかに案内されるらしい。

売られているランタンを見れば・・・おうおう、元気に動き回ってら。


そんなこんなで、色んな店が立ち並ぶ購買エリヤを歩いていると、何故か屋台が一件。

そこから、どこか懐かしい、焦がしたソースの香りが漂ってきた。

あ、もしかしてこの匂いは・・・・














『(あら、ミニクラーケン焼きが売ってますね?)』

「「たこ焼きやん!」」

『(ちがいます。ミニクラーケンです!)』


さすが異世界、ちょっと認識が違ったらしい。

あ、ウィンディとは僕達つながってるので、心の声で会話可能です。

そういう事にしといてください。原理不明なんで…。


さて、ミニクラーケン焼きに、ちょっと後ろ髪をひかれる思いながらも、探索を続ける。

何せ、今晩の夕飯をどうしようかという難題も含まれているのだ。

とりあえず普通の食材が売っている店…安ければ最高…が見つかれば良いんだけど。


「なんだ?この大きな金網小屋?」

「ええと…“食用ロック鳥のヒナ掴みどり 制限時間内に捕まえた分だけ 一回150G”」

「・・・・なんて言うか、すげぇな」

「よし、紅GO!」

「え、何で?!」

「君なら沢山捕まえられる!食費浮く!ちょうど良い!と言う訳で行って来い!」

「・・・・了解、かなめ」


そう言い残し、若干諦めの表情で、紅は小屋に入って行った。








紅ヒナ鳥と格闘中・・・・しばらくお待ちください。








「ったく、てこずらせやがって…」

「まぁまぁ、お陰で大分食費が浮きそうだよ」

『(……あのお店、つぶれないか心配ですね)』


かなり大量に捕まえた事は、語る必要はないだろう。

後日、そこの小屋に“赤い髪の人お断り”の看板が立っていたのは余談だけどね。


紅は今、さっきので傷ついたところを舐めている。

何でも妙に強いヒナがいたんだってさ。

そういえば居たなぁ、一匹だけ「フシュルルル…」とか言ってたヤツ。


「でもお陰で、今夜はおいしいものが食べられるよ」

「ま、それだけが救いだな。しかしコイツらヒナの癖にデケェな」


そう、ロック鳥と言うのは、本来全長100mに達する巨鳥である。

一応、猛禽類らしい姿かたちをしているんだけど、この世界では何故か食用になっていたりする。

味は部位にも依るが、意外と淡白で臭みが無い…らしい。

尚、食用とはいえ、ヒナの大きさはそこら辺の鶏よか二回りほど大きい。

七面鳥クラスだと言えば、想像が付くであろうか?


「ふっふっふ、羽根抜いて血抜きしたら、ローストにするか…いや、フライも捨てがたい…」

「あー、かなめ?顔が何だか悪だくみしてる悪役みてぇだぞ?」


む、失礼な、今晩の夕餉の献立を考えているだけじゃないか?

あっシチューも捨てがたい!……いっぱいあるし後日になれば作れるな、うん。


「ま、とりあえず部屋にもどろうか?調味料さえあれば僕はどこでも調理出来るしね」

「だな、とりあえずハラペコだ」

「くぅ!」

「ははチビの果物もちゃ~んと買って有るから安心して?」

「くぁう♪」


フードから顔をのぞかせたチビを撫でる。

しっかし、思うと僕たちの環境適応力は並みじゃ無いねぇ…。


≪ドン≫

「あ、ごめんなさい」

「いいえ、こちらこそ前を見て無かったです」


離しながら歩いていたら、道の角で誰かにぶつかっちゃった。

慌てて相手に謝ったんだけど、そこに居たのは―――――


「ん?あ!エル君。久しぶり!」

「え?もしかして、かなめさん!?」

「俺達も居るぜ?」

「紅さんにチビちゃんもですかぁ??!というか何故ガラクトマンに??!」


――――――以前、知り合いになったエルダー・シェットランド君でした。












*最近、色々とアドバイスになる感想が増えてきて感激している作者です。

 励まし一言がある感想が来ると、本当に嬉しいと感じる今日この頃。


 さて、今回からしばらく、舞台はガラクトマン魔法学校になります。

 魔法学校…そしてマッドウィッチのシエルさん、個性的な生徒達。

 ………強く生きろよ、かなめ。

 

 以上作者からでした。


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