第25章
~出歩いて…落っこちて・第25章~
さて、彼女たちが集めに行ってくれて大分服が集まった。
なので、その中でも性能が良くて、なるべく恥ずかしく無いモノを選ぶ事になりました。
ちなみに持って来たものには全て呪いが掛かっていたんだけど、驚いた事にウィンディが解呪をすぐに習得したのだ。
何でも、僕が覚えているキュアウィンドのスペルから、解呪部分だけを抽出し強化したんだとか…。
僕と契約して色々とつながって…リンクしているからこそ出来るんだそうで…すごいねホント。
そして僕が審査員を務めて、厳しい最終審査をクリアした装備達がでそろった 。
で、これらがその装備品達である――――――――
・頭――――――伊達メガネ
・胴体―――――アルケミスト・ジャケット+フード付きマント
・腕――――――アルケミスト・グローブ
・腰回り――――黒革のズボン(サイドポケット多め)+ウェストポーチ
・脚――――――アーマーグリーブ(膝下まで)
やや地味だけどさ、コレでも大分マシになった方なんだよ?
最初なんてチェインメイルの上に、プレートアーマーを装備させようとしていたからね。
僕はただでさえ魔法使い系のステータスなのに、鎧なんかして身体の動きを阻害してどないすんねんって思ったよ。
てな訳で、とにかく動きやすそうなヤツを集めたらあら不思議、妙に地味な装備でまとまってくれたのでありました。
………というかプレートアーマーなんて着てたら町中歩けないけどね!なんかカッコ悪いし。
ちなみに、呪いは解除した筈なのに、この服装を見た途端…
何故か脳裏に銀髪のホムンクルスが浮かんだけど…何でだろう?
***
「とりあえず着てみたけど…どう?」
『地味ですね』
「地味だな」
「………地味の方が良いと思うよウン。」
いいんだよコレで、僕の体は貧弱坊やみたいに細いんだから、鎧なんて絶対似合わないんだしさ!
…………うう、何故か言ってて哀しくなった。
でもまぁ、それでも装備に付いている効果はかなり凄い。
ジャケットには体力を増強する効果が付いていたし、マントは魔法ダメージ半減が付いていた。
グローブには滑り止めと力増強の効果が付き、ズボンには何故か自動回復の効果が付属してた。
グリーブにも速さがグンとUPする効果付きで、ジャンプ力も増強されるらしい。
しかも、これらの装備品の防御力は魔法術式により強化され、そこら辺の鎧よりも高かったりする。
おまけに以前来ていたローブよりも頑丈と来たもんだ。丸洗いも勿論OKなのがうれしいね!
あ、ソレと伊達メガネの方はステータスが上がる訳じゃないけど、絶対に壊れない効果付きだった。
絶対に壊れないって所が凄いねホント。為しに踏んづけてみたけど、傷ひとつ付かなかったよ。
コレも魔法の一つらしいんだけど、そこら辺は良く知らないから、後でラジャニさんとこで調べようウン。
―――――ああ、ソレと…ちなみになんだけど。
当然解呪する前ジャケットには“生命力を吸い取る”呪いが憑いていた。
マントには“水を浴びると触手が生えて増殖”という謎の呪いが付いていたとサーチで判明した。
グローブも“怪しい薬を作る”呪いが憑いており、ズボンとグリーブにも“足が萎える”呪い憑き。
しかもグリーブにはプラスして“水虫にかかる”呪い憑きだったのが恐怖だったね。
流石ちょいと危険なモノが納められている倉庫…色んな意味で半端ないわコレわ。
勿論これらは解析が終わった後、ウィンディのサポートを受けて、全部解呪しておいた。
一つでも残っていると大変だからね!色んな意味でさ?
「さぁ!服も変えたし、心機一転頑張ろう!」
『「おー!!」』
とりあえず、この主無き錬金術師の屋敷から出る事にしようウン。
***
―――――――地下通路を徘徊する事およそ30分。
意外と出口は倉庫から地下めの距離にあったらしく、上に続く階段にたどり着けた。
「はぁ、ようやく出口か」
「どんだけ広いんだよこの地下空間」
『まぁ、増改築を繰り返してましたからねぇ~。私がいた時からあまり改装されて無かったのは行幸かと…』
そーなのかー、と僕が納得しかけた時、彼女は小声で―――――
『――……トラップの位置も変わってなくて良かった』
―――――とか言っていたけど…全力でスルーする事にしました♪無事に付けたから問題ないもんね?ね?
……………………
…………………
………………
階段を上がると目の前に湯手を塞ぐかのように、一人が通り抜けられる程度の扉が現れた。
≪ギギギギギ……―――バタンッ≫
そして、ウィンディが何かスイッチの様なものを操作すると、いかにもな音を出して開いて行く…。
しかし、こういったところの扉の開く音って、何か来た事あるなぁ…狙ってるんじゃないだろうか?
「ふぅ、ようやくカビ臭い所から帰れたぜ」
『おつかれさまです』
僕が扉から這い出ると、その後に続いて紅も出て来た。
「さてと…ココは屋敷のどのあたりなんだろう?」
ぐるりと辺りを見回す…どうやら今僕たちがいる場所は、どうやら研究室の一室らしい。
僕たちが出て来た扉は、壁の中に上手い事隠されていた様だ。
そう言えば、僕達あのスリの女の子のリアに頼まれて、ココに薬を探しに来たんだっけ…。
「ねぇウィンディ、この屋敷の最奥ってこの部屋?」
『え?ええそう…ですね。確かにココが屋敷の最奥です』
ふ~ん、てことはこの部屋のどこかに薬が落ちているって訳だね。
僕が何か落ちていないか、IT懐中電灯を使った。
「うわぁ、改めて見ると埃だらけだね」
「でもつい最近、誰か来てたみたいだな。足元の埃の一部が薄くなってるところがあるぜ?かなめ」
『足跡…みたいですね。ちょうど子供くらいの大きさの』
ふむ、どうやらココで間違いなさそうだね。
「皆、手分けして何か落ちていないか探してくれないかな?」
「OK、良いぜ。元々その為に来てたんだしな」
『ええと、良くわからないけど、お手伝いします』
僕たちは手分けして、この部屋の中を捜索する事にした。
一応紅にはIT懐中電灯を渡してある。
ウィンディの方は、自分自身で光を出せるそうなので、問題無しだ。
――――――――さてと…とりあえず最初の目的である落し物をみつける事にしましょうか。
そう思い、埃がつもっている床を明かりで照らしつつ、辺りを見て回る。
しっかし、流石は錬金術師の研究室、色んなものが置いてあるなぁ。
中でも目を引いたのは、フラスコや試験管、ソレとアルコールランプを組み合わせ、ソレをチューブでつないだ蒸留装置みたいな大きなヤツ。
ソレと、何故か釜戸があって、そこにかけてある……なんて言うか魔女が薬作る時に“イィ~ヒッヒ”とか言って使っていそうな半球状の大鍋だった
…………試験管はともかく、鍋は何に使うんだろうか?
「ふ~ん、薬も豊富なんだぁ」
本当は薬を探していたんだけど、なんとなく…ふと眼を逸らした先にあったのは薬品棚。
面白そうなのでついつい脚がそっちに…好奇心が優先されてしまう僕であった。
ふむ、多少荒らされているが、どうやらこの研究室で使われていた材料や完成品の様だ。
なんとなく僕はソレらの薬品に目を向けたのだが……。
「え?……ちょい待ち、イヤイヤまさかねぇ?」
たまたま読みとった薬の瓶のラベルを見て動揺し、動きを止めてしまった。
まさかと思い、薬品棚から薬の瓶を取り出し、ラベルを良く見てみる。
そこに書かれていたのは―――――
「試作型のエリクサー、だって?」
―――――エリクサーなんてファンタジー世界じゃかなりスゴイ薬だったハズだ!
エリクサーは、確か錬金術によってもたらされる霊薬の一種で、賢者の石を用いて生成される…もしくは液体版賢者の石とされる程のシロモノで、万病を癒す他、不老不死の効果があるとされるモノであったハズ。そもそも賢者の石自体が、あらゆる金属を黄金へと変化させ、地水火風の錬金術に置ける四大元素を全て内包した、第五万能元素とも言われており、当然錬金術師たちが長年追い求め続ける、錬金術に置ける一つの到達点であると言っても過言ではないらしい。僕の居た世界では水銀や硫黄を使い生成しようとしていたらしく、またエリクサー程ではないが、怪我人や病人を治療し、人々の精神を高める効果もあったとされている。まぁゲームの世界では大抵がHPMPを全快させるとかの様に大幅にスケールダウンした仕様だったけど、それでもその名を冠しているという事はかなりの薬の筈である。――――以上、長々脳内ウンチクのコーナーでした。
ちなみに何故僕がこんな事を知っているのか?……昔読んだ錬金術の本が面白くて覚えてました。
まぁそれはともかく、コレは結構なお宝だね。試作品とはいえお金になりそうだ。
それに例え売れなくても、もしかしたらリアの弟であるトール君の治療に使えるかも知れない。
う~ん、正義感ぶるつもりは無いけど、助けられそうな人を放っておくのは目覚めが悪いしね。
………………ん?なんか、良く見たらラベルに小さな文字が書いてあるぞ?
「………制作者…シエル」
―――――こんなスゴイ薬が、ココに残され(廃棄され)ている理由が解った気がする。
てか、シエルさんの名前をこんな所で見るなんて、実は結構有名人?
でもコレ…下手に使ったら使った人が二度と起きない気が……というか起きないだろうなぁ。
まぁ考えてもわかんないので、僕はそっと危険な薬を元の位置に戻しておいた。
***
「そっちなんかあったぁ?」
「まだ見付かんねぇ、かなめのほうは?」
「僕もまだみつからないよ、ウィンディは?」
『瓶は幾つか見つけたんですが、恐らくココの薬瓶でしょうね』
ふむ、入口付近に落ちていると思ったけど、見つからないなぁ。
一応リアから聞いた話だと、薬は小瓶に入っているそうだから、どこか転がって行ったのか?
「実は薬品棚と壁の隙間にあったりして…」
意外と探してみると、そう言ったところに迷い込んでいたりするよねぇ~。
とりあえず、そこに明かりを照らしてみた。
「え~と、落ちているのは…釘、銅貨、なんかの紙―――――」
う~ん落ちているのはゴミばかりか。
「お!あった!コレじゃねぇか?!」
「え?本当紅!?」
『やりましたね!紅さん!』
とりあえず、確認っと………うん、ラベルに書かれた表示からしてコレがそうだね。
僕は紅からその小瓶を貰い受けると、鞄の中にしまった。
コツコツコツコツ………―――――
薄暗い洋館に足音が不気味に響く………なんてね。
「しっかし、案外簡単に見つけちまったけど、出なかったなぁ」
「ん?何が?」
「いやホレ、アイツ言ってたじゃねぇか“屋敷の奥で魔獣らしき影を見てにげた”ってさ」
そう言えばそんな事を言っていた様な…。
「ねぇウィンディ?キマイラってあの個体だけ?」
『ええと…たしか私がいた時点ではすでに研究が打ち切られて、あのキマイラしか残ってはいませんでいたけど…』
「じゃあさ?他に魔獣とか居たりするのココ」
ウィンディはやや考え込むかの様に、米神に指を置く。
『う~ん、実験用として捕えられていたのが数体居たかと…でも、キマイラほど強くは無いですから、捕縛術式が生きている檻から出られる個体は居ないと思います』
ふむ、なら大丈夫かな?大方あの子が見たのは、外から迷い込んだ魔獣か動物だったりしてね。
でもこういう時に限って、何か出たりするんだよなぁ…僕、運が低いから…。
そう思ったのもつかの間――――――
――――……ぽんッと、何かが脚に触れた様な気がした。
「#%&()“&%$%?!????」
辺りに気を配っていたが、突然の不意打ちに流石に驚いた僕は、声にならない声を上げていた。
強い力こそ持っているモノの、基本的に僕はビビりで怖がりである。
なので、実はこの洋館のホラー成分で、結構ガクガク来ていたんだよね…コレが。
そして気が付けば、必死に脚にからみついていた何かに、必死にストンピングを敢行していた。