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第1章

やや、強引かも知れません。




〜出歩いて…落っこちて・第1章〜







「さてさて、こいつは困った」

「わふ(そうだな…)」


 周りを見渡しても木ばっかりで何処まで行っても緑緑緑緑緑のオンパレードでまるで人気がありません。落ちてきたはずの頭上は、どこまでも広がりそうな蒼い空。天井なんて無いし当然穴もございません。


 なんで妙に落ち着いているって?ハハ違うよ?

 もう驚きを通り越してるだけで、いつ取り乱してもおかしくないんだ。

 現に心臓はどっくんどっくんと血圧が随時上昇中って感じ。



「しっかし、お前も災難だなぁ、まさか俺と一緒にココに来ちゃうなんて…」



僕は不安を紛らわす為、ついつい隣でお座りしている赤毛が特徴の犬に話しかける。

この犬さんはあれだ。冒頭で僕を追いかけ回していたあのワンちゃん。

だけど現状で唯一の知り合い(?)な訳だから・・・・うん、もう混乱絶頂って感じだな。

でも一人で無くて良かったよ、これで犬が喋れたら良かったんだけどさ・・・。



「がう(確かに・・・ココじゃ飯も期待できそうにないなぁ)」

「飯って・・・まぁ確かにココじゃ無理そうだよねぇ・・・・・・・・・ん?」

「わふ?(どした?)」

「ねぇ・・・なんで僕、犬が喋っている事が解るんだろうね?」

「わう(ソレを何故犬である俺に聞く?つーか、さっきから普通に受け答えしてるじゃねーか)」

「そ、そう言えばそうだった・・・」



う〜ん、どうやら大分頭がまいってるみたいだ・・・犬の言葉が聞こえるなんて。

あまつさえソレが理解できてしまうなんて・・・・病院はどこですか?



「あれ?でも、さっき追っかけてきた時は聞こえなかったような?」

「わふん(あんときは今より頭回らなかった。オマエ マルカジリって感じだったんだぜ?)」

「・・・・とりあえず何度も尻尾踏んだこと謝っとくよ…もう追いかけられるのはごめんだしね」

「く~ん(大丈夫だ。なんでだか知んないけど、頭すっきりしたらなんだかもう怒って無いし)」

「そいつは有り難い・・・はは、僕何してんだろう?」



あれ、何故かこの異常事態に順応してる自分がいるよ?ヤバくない?

しまいには幽霊とか妖精とかが見え始めるんだ。きっとそうだ。ほら、あそこに道への扉が――


―――OK、とりあえず落ち着こう。このままじゃ完璧に発狂した変人みたいだからね。


しかし、この状況。本当にココはどこ何だろうか?僕の住んでいた地域に、こんな森は無いし・・・。

とりあえず、まずは現状において、置かれている自身状況を冷静に整理してみよう。

こう言った時は焦ってはいけないんだ。しんだ爺ちゃんもそう言ってた。



「ココはどうやら、広大な森の中らしい」

「(だな)」

「そして、周りに人の気配は無し・・・今の所動物も」

「(そうだな)」

「どうするべきだろうか?」

「(いや、俺に聞くなよ・・・)」



あ、いや、他に呟くべき人というか、相手がいなかったもんで。

ふーむ・・・・そう言えば僕の持ちモノで何か役に立ちそうなモノは無いだろうか?

とりあえず持ってるモノを確認してみよう。



「えーと、持ち物は・・・鞄一つに中に財布、それと携帯・・・携帯!?」



そうだ!携帯!もしかしたら電波が入る――――



「・・・・んな訳も無し。圏外か」



ですよねー。山の中ですもん。完全に圏外です。

電波が無いところで、携帯に意味はありません。



「後は以前から入れっぱなしのライター・・・なんで入れてるんだろう?」



うーんと、うーんと・・・そう!以前キャンプした時にしまったんだ!

・・・って、ソレ以来入れっぱなし?使えるんだろうか?



≪カチ、カチ、カチ――シュボ≫


「ライターは使えるのか・・・」



地味に嬉しくて、何回か点けたり消したりしてた。

だが、ガスがもったいなくて火を点けるのをやめた。

もしかしたら、野宿も有り得る訳だし、火を熾せるものは大事に取っておくべきだろう。

さて、残ったモノは―――



「後は十得ナイフ――――それと、何これ?」



色々と便利そうで買ったは良いモノの、案外使い道が無かった十得ナイフ。

あとは持ち物の中に、見覚えが全くない手帳の様なノートらしきモノが入っていた。

僕は携帯に予定書く人間なので、あまり手帳は持ち歩かないし、愛用の手帳は我が家に置きっぱなしであるから、こんな手帳は持っていない筈なんだが。



「ねぇ犬さん、コレなんだと思う?」

「(手帳じゃねぇのか?つーか犬さん言うな)」



まぁ、手帳に見えるよね。でも僕も普通にとなりの犬さんに話しかけたな。

でも、もう犬相手でもいいや、話しが出来るならば・・・。

会話でもしてないと、絶叫して走りだしそうなくらい不安なのさ。



「そう言えば自己紹介がまだだったね。僕は五十嵐かなめって言うんだ。君は?」

「(俺か?俺ァ・・・まぁ、ずっと野良犬やってたからな。アカ坊とか(べに)とか呼ばれてたな)」



紅ね?・・・きっとその赤毛の感じから来たんだろうね。

元の犬種は解らないけど、立派な毛並みだとは思う。



「じゃあ、紅さんって呼ぶよ?それでいいかい?」

「(紅で良いよ。さん付けだとしっくりこねぇからな。その代わりこっちもかなめって呼ぶぜ?)」

「解った。それじゃあ紅、よろしくね」

「(おう、よろしく)」



さて、これで一応挨拶はすんだ訳なんだが・・・。



「さて、取り出したるはこの手帳。一体なんなんだろうね?」

「(開いてみたらいいじゃね~か?何か書いてあるかもよ)」

「・・・それもそうか」



いやー、なんかあやしいの一言でどうにかなりそうなくらい怪しい手帳で。

―――ってどんな手帳だよっと。まぁとりあえず開いてみる事にした。

最初の1P目を開けてみると、何とまぁびっしりと色々と書かれている。



「ん~と、何々?“まずは五十嵐君、君には大変申し訳無いことをした”――へ?」



そして驚いたことに、手帳に書かれた言語の冒頭には、何故か僕宛で謝罪文が載っていた。

この手帳を僕に持たせた人物は、少なくても僕の事を知っていると言う事なのか?

この時、亡国のスパイが!?とか考えた僕は悪くないと思う。

そういうニュースよくテレビでやってたし・・・ソレはさて置き。



「(続きは?)」

「あ、うん“この文を読んでいるという事は、無事にそちらの世界に着き、またこの手帳がある事に気がついたという事だろう。まぁそうなるようにしておいたのだがね。さて、紹介が遅れたが、この文を書いた私の名前は“監視者”君達の言うところの、いわば神にちかい存在だ”―――??」



なんだか訳がわからないぞ?!ココに来て急に神さまですか?!

いや、神さまに近いってことは、厳密には神さまじゃないのかな?

と、とにかく続きを読んでみよう――



「“困惑していると思うが、そうとでしか君達が理解できる呼称が無かった為勘弁してほしい”」



あ、やっぱり。でも自分のことを神さまとか・・・頭病んでる人?それともマジ?



「“あとココからが本題だが君達が何故いきなり見知らぬ土地・・・というか異世界だ。そこに居るのかというと私に色々と責任がある”」



はい、異世界入りました。すさまじく読む気力が減少していきます。

・・・・ドッキリと書かれたプラカードは無いか!?とか考えつつも続きを読む。

これ以外の情報が無い以上、読むのをやめる訳にも行かないのである。



「(ふ~ん、イセカイね?かなめ、イセカイってなんだ?食い物か?)」

「えと、まぁ後でね?――“大変申し訳ないのだが、君達は私が消し忘れてしまった“覗き穴”と呼ばれる所に偶然落下してしまった”――覗き穴?」



覗き穴って何だ?名前からすると、覗く為の穴・・・だよね?



「“あのマンホールみたいな穴の事だ”」



ああ、そう言う事・・・でも何故に地面に覗き穴?

何を覗く気でいたんだろうか?・・・まさかねぇ?

つーか、こんな事態に陥って、そんな考えが浮かんでしまう自分にビックリだわ。



「“あの穴は私がいる空間につながっていたのだが、そこでは君達の様な脆弱な肉体では存在する事が出来ない。まぁそう言う訳で君達は一度死んでいる”・・・・・≪パタン≫」



僕は静かに手帳を一度閉じた。さて、今の言葉を信じるなら、僕は一度死んでいるらしい。

訳が解らない事のオンパレードで、慣れない環境にすぐ適応する流石の僕も雄たけびを上げたい気分だったが、そう言う訳にも行かず、湧き上がる何かを押さえつけるのに精いっぱいだ。


ここで取り乱したら、事態が悪化するというのを、本能的に理解していたのかも知れない。

僕はため息を吐きながらも、もう一度手帳に手を伸ばし、先程閉じたページを開ける事にした。

せめて、最後に“ドッキリでした”という言葉がある事を祈って―――



「はぁ~。よし―――“まぁ普段は一ミリにも満たない穴なのだが、

 時々もっと周りを見ようと人が通れるサイズの“覗き穴”を作って、周辺を見ていたのだがね。


 そうして見ていた所、突然君たちが落っこちて来たのだ。

 最初は驚いたぞ?人が殆ど来ない場所なのは確認済み。


 人が近寄れない様にもしておいた筈なのに、何処をどう通ったのか君達は・・・

 まぁ過ぎた事を言ってもしょうがないか。


 とにかく、誰も来ないと高を括っていた私にも原因があった為、

 今回は特別に君達を、覗き穴の向う側でも生きられる様にして、生き返らせることにした。


 だが、そこで問題が起こった。

 君達を生き返らせたのは良かったのだが、

 今度は覗き穴の向うでも生きられる様にした為、

 君達と言う存在を元のあの世界に戻す訳にも行かなくなってしまった。理由としては―――”」



ココから先は、何と言うか・・・僕にもよく解らないのだが、所謂ガイア理論的な感じで・・・。

まぁ世界は生き物?とかそういう感じです。

だから、必要以上にパワーアップした僕らは居られないのだそうな。

つまりは元の世界において僕らは歩く爆弾だと言いたい訳なのだろう。

う~ん、難し過ぎてよく解らん。とりあえず読めるところまで飛ばそう。


――パラパラっと。


「“―――と言う訳なのだが、そう言う訳で君達を元にの世界には戻せない。

 身体をあの世界に用に戻したいところだが、そんなことをすれば、また死んでしまう。

 考えに考えた結果が、君たちがいても平気な世界へと送ると言うものだった。

 運良くそう言った世界も監視対象だったのが幸いだったと思う。

 

 そう言う訳で、唯一君達が行ける世界はそこしかなかったのだが、

 そこは君達の世界で言うところの中世くらいにしか発達していない。

 おまけに魔獣やらモンスターやらが徘徊する世界でもある。

 

 さすがの私も鬼と言う訳では無い、神に近い存在ではあるがな。

 そう言う訳で君達には最初ある程度の力を与えることにした。

 その力については、五十嵐君の頭の中からヒントを得たモノだから扱いやすいとは思う。

 詳しい事はこの手帳に出るし、ちょっとだけ色を付けといた。

 

 あとこの世界の言語も解るようにしたし、文字も書ける様にしてある。

 肉体能力も前とダンチだ。だがココまでしか私には出来なかった。

 どうか頑張ってくれ・・・・。



 P,S


 紅ちゃんについては、君が寂しく無い様に、

 その世界の種族の中で近い存在へと、彼女の身体を変化させる力を与えておいた。


 確かドワーフとかいう種族だったかな。

 今は無理だが、彼女が意識を集中すれば身体を人型へと変化させることも可能だ。

 

 では、もう会う事のない私が言うのも何だろうが、

 どうか君達の歩む道が平穏であるように・・・グッドラック”」



・・・・・・何だこれは?つまりはココは“異世界”僕たちは“超人”にされた。

だから元の世界に戻せないし、居場所も無い。

“異世界”なら問題無い程度だから、そっちでよろしくやって欲しい。

―――と言う事なのだろうか?・・・つーか。



「紅って・・・女の子?」

「(言わなかったか?)」

「聞いて無いよ?」



だってねぇ、喋り方がアレだしねぇ・・・ってそうじゃない。

さっきから異世界と書かれていたが、アレは本気なのだろうか?


今の段階では、突如この森の中に置き去りにされたと言う風にしか感じられない。

つまりは半信半疑、この手帳らしきモノに記された事の半分以上信用できない。


唐突に森の中にいなければ、何だこの頭痛い話と笑っていた事だろう。

こういう時に取り乱さない、自らの精神に実に感謝したいね。



「しかし・・・力、ねぇ?」



あの神さまに近い人、まぁ自称神としておこうか?

彼の言う事を信じるなら、僕らには力が与えられているという。

だが、今の所そんなのを感じることは出来ないんだが・・・そういえば。



「詳しいことは手帳に・・・書いてあるんだっけ?」



半信半疑、だがもしかしたらと思い、僕は手帳にページをめくって行く。

そして、恐らくはそのページだと思われる個所を見つけたのだが・・。



「これは・・・冗談、なんかじゃないのか?」



そこ描かれていたのは、どう見てもTVゲームとかのRPG系ゲームで見る様なステータス表。

他にもスキル、アビリティ、技と続きそして最も気になったのは、魔法という言葉が刻まれていた事だった。僕の頭にあった知識と言うのは、どうやらそう言った類の事だったらしい。



「・・・・・」



その事で、リアルに口を半開きにして、呆然と意識を飛ばしかけた僕は・・・多分悪くない。

つーか、自らの能力が数値化されるというのは、恐ろしく不思議に感じられるものだろう。

ちなみに今装備しているのは黒のタートルネック長袖とGパンで、どうやら初期装備らしく武器は所持していない。



それと手帳に書かれた現在の僕のステータスはこんな感じ。


HP(体力)………………………200/200      

MP(精神力)……………………2000/5000

LV(現在のレベル) ……………LV1       

EXP(現在の経験値) …………0/50

STR(力の強さ) ………………17

INT(知性) ……………………8000

DEX(器用さ)…………………24   

AGL(素早さ)…………………90

ATK(物理攻撃力)……………60

MAG(魔力) …………………8000

CON(耐久力)…………………40     

HIT(命中率)…………………36

AVD(回避力)…………………90    

RDM(物理防御力) ………… 44

RST(魔法防御力)……………700        

LUC(幸運)……………………9

AP(アビリティの装備容量) 38

CP(技及び魔法の装備容量)…50



さて、さっそくだが有り得ない事になってるね。

つーか、何であんなにMPとINTとMAGが馬鹿高いのだろうか?

他のは結構普通な癖に、あれですか?魔道師にでもなれとでも?


これは恐らく、手帳に書かれていた色をつける・・・と言う事なんだろう。

確かに色をつけといたとか書いてあったが、これは明らかにやり過ぎでしょう・・・。

これが本当だとするなら、どうせならHPとかCONを上げといて欲しかった。おまけに幸運が低い。

しかしなんでMPはフルチャージじゃ無いんだ?半分も無いぞ?それでも多いけど。



と、とりあえず次だ次!お次は・・・


スキル(体験で習得)

・家事A    

・悪運EX      

(他はまだ習得していない)



まぁ仕方ない。僕は普通の一般人。

どこぞの小説じゃあるまいし、暗殺技能やら戦闘技能やらなんて習得してません。

精々出来て家事くらいです。でも悪運EXって・・・・幸運が低い代わりとか?

―――お次お次・・・。




アビリティ(装備品の付属効果を習得) 


・経験値入手UP    必要AP 5      習得まで0/50

・警戒         必要AP 2 習得まで0/20   



これはまた随分なアビリティな事で、いきなり最初から経験値UP系は随分と胡散臭い。

ちなみに効果は、経験値入手量がおよそ五倍になるんだそうな。

というか経験値って何さ?



「―――ん?」



ページをめくって行くと、恐らくは魔法の事に関するページに辿り着いた。

そこには、魔法の使い方らしき事が書かれている。

その後の魔法に一覧にある最初の魔法は、ブラストと呼ばれる初期魔法らしい。


ちなみに紹介文は、こんな感じでした。


【魔力放出で敵を吹き飛ばす。だが熟練者が収束させれば大砲を超える威力を持たせることが可能】


 最下級魔法・射程 中〜超遠距離    基本消費魔力20   必要CP15


「・・・・・・これをやれと?」



これは確かにゲームだ。だがあまりにも胡散臭い。

こんなので本当に魔法が使えるとでも言うのだろうか?

むしろジョークと言われた方が、この場合まだ信用性が出てくる。

だが―――


(どうしよう?普通ココまで手の込んだ事はしないだろうし・・・)


悪戯にしても、これは度が過ぎる。

見知らぬ人間を誘拐して、あまつさえ見知らぬ土地に放置して、こんな手帳を与える。

それに何の意味があるのだろうか?誘拐されたのならまだ解ると言うものだろう。


(・・・・試して、みるか?)


だが、現状本当にどうにもならない以上、試してみるのも悪くない。

ふと、そう思った。これが本当なら、少なくても手帳に書かれた内容が本物であると言う事になる。

そうなれば、身を守る術が必要となって来ることは明白だった。

出来なかったら、犬と喋れるというのは確認できたから、獣医もやるか?とか考えつつも、手帳に書かれた魔法を発動させる工程を踏んでみる事にした。



***



「(おーい、なんか落ち込んでいるが、大丈夫なのか?)」

「・・・・うん」



さて、しばらくしてだが、色々と書かれていたので呼んでみたモノの、結局良く解らなかった。

試したいのだが、書かれてあることが魔力を手に込めてとかで・・・まず魔力って何さって話しである。

しかも、最初の魔法以外は思い付きで習得とか書いてあるし、親切なのか不親切なのか・・・・。

一応、なんとなく力んでみたモノの、特に何か変わった事が起こる気配も無かった。


(う~ん、イメージすると、魔力ってどんなんだ?)


 魔力とか言われても解らないが、なんとなくボヤ~とした感じの何かエネルギーが集まると考えればいいのだろうか?目をつぶり、こうなんとなく、何かモヤッとかぼんやりした“ナニカ”を集めてみるイメージをしてみる。



「(お、光った)」

「え?何か言った?」



紅が何か言った為、何かあったのかと思い目を開いたのだが、周辺に何かあった形跡は無い。

・・・・何かを見間違えたんだろうか?でも、森の中で何か光るモノを見るとか・・・どこか不気味な気もしないでも無い。



「光ったって何が?」

「(いや、かなめが目をつぶって、なんかしてたら一瞬ぼんやりと身体が光ってたぜ?)」

「身体が?」



どういう事だろうか?魔力を使えるようにする事と関係があるのだろうか?

良く解らないが、それならばと思い、今度は目を開けた状態で同じことをしてみる。

要は、よく解んないけど不思議な力あつまれー!って感じ。


すると―――



「ッ!?なに、これ?」



成程、確かに薄ぼんやりとだけど、腕が光っている。

正確には見える範囲全部の身体の部分も光っているように見えた。

もしかしたら、これが―――



「腕、腕・・・いや手に―――」



手に集まれと、身体を纏っているソレが移動するようにイメージをすると、ソレらは本当に動いた。

そして考えた通り、手へと収束していくのが見て取れる。

ソレらは手に集まると、以前どこかで見た・・・そう、セントエルモの火のように、手から噴き出している様に見える。どうやらこれが――――



「これが、魔力?」



―――と言う事になるのだろうか?


正直自身の身に起こった怪奇現象に、戸惑っていたのだが、徐々にそれに慣れて行った僕は、その光景が面白くて、ドンドン集まるようにイメージした。魔力が大きくなって行くのが面白かったからである。



「(・・・・おい、なんか手に集まってるけど大丈夫なのか?一度消した方がよかないか?)」

「・・・・・・・消し方解んない」

「(おい!?)」

「ははは・・・どうしよう?」



だけど、すこし調子に乗り過ぎて、ある程度は拡散出来たけど、手に魔力が集まったまま戻らなくなってしまった。光が強って目立つ事この上ない。灯りに苦労しないだろうが、手が使えないので物が持てない為、この状態ではすこぶる不味い。



「えーと、確か手帳には・・・」



確か魔法を使おうとしていた事を思い出し、この状態なら出来るかなと思い、魔法を使う事にした。

ブラストのやり方はすこぶる簡単、魔力を集めた腕を対象に向けて、放てば良いらしい。



「・・・・放つってどうすればいいの?」



ふと思ったのだが、魔力を解放できないから困っている訳で・・・。

放つというイメージをすればいいのか?―――と、そう思った瞬間!



≪バシュッ!≫


「(うわっ!あぶねぇ!)」



腕の先に溜まっていた魔力が、急に解放されてしまったのだ。

しかもまるで如雨露から水を出した時のように、拡散して周囲に放たれてしまった。

何も考えずに放たれたソレは、殆どが拡散したが中心の一番密度があったと思われる部分だけは直進し続けて、木々を幾つか貫通して行ったのであった。



「こ、これが魔法!?」



驚きつつも手帳を見た所、2000あったMPが1980になっている。どうやら今のが魔法らしい。

太い木の幹を突き抜け、後ろにあった木をも粉砕し、更に奥にあったの岩にまで穴をあけている所を見ると、かなりの威力である事が解る。恐らく魔力を使う魔法であるから、あの自称神に変に手が付け加えられた僕のステータスが、これほどの威力をはじき出しているのだと思う。


あと何故だか知らないけど、習得した途端頭の中に謎の言葉や公式が浮かんできた。

これは恐らく呪文や魔法陣とかだと思う、これが自称神が言っていた手を加えたと言う事なのか

だが、まさか僕がこんなことが出来るようになっていたとは…信じられない。



とか、考えていると―――



「(これが魔法!?じゃねぇ〜!!)」

≪ガブッ!!≫

「――ッ!!いってぇぇぇぇぇぇッ!!!」



怒り心頭の紅に頭に噛みつかれた!紅の牙が頭にに突き刺さる!

痛い痛い!牙が食い込んでるって!ナニカで怒り心頭の紅にしばらく噛みつかれ続けた僕だった。








「(いきなりで驚いたじゃねぇ〜か!)」

「ごめん本当にごめんなさい。痛いから許して!もう噛みつくのは簡便」



この後3分も噛みつかれ、何とか許して貰う頃にはHPが半分以下になっていた。

ちなみに本人曰く軽く噛んだだけらしい――それにしてはいたかったけどなぁ。


お怒りになられた原因は、拡散した魔力が当たりそうになったかららしい。

ここはなんとなくだが、謝っておいたほうが良いと感じた僕は、ひたすら頭を下げていた。

はた目から見たら、犬相手に頭を下げると言う光景・・・シュールだ。


別に噛みつかれるのが、怖かっただけでは無いと思いたい。

そして何とか落ち着いたので、僕達はこれからの話をする事にした。



「(で、これからどうすんの?)」

「うん、これでこの手帳の中に書かれた事は、少なくても魔法に関してだけは本物だった。だから、この世界って魔物がいるらしいから、とにかく移動しようと思う」



もうそろそろ暗くなってくる。この世界での生き方はいずれ考えるとして、その前に野宿できそうな場所を見つけたいと思う。



「(ふ〜ん、解った。まぁ俺はかなめについて行くだけなんだけどな)」


「あれ、一緒に来てくれるの?てっきりさっきの事で愛想尽かされたかなって思ったんだけど?」


「(アレは驚いただけだ。別にもう怒って無い。それになんて言うか、ナカマイシキってヤツか?難しい事は解らないけど、前の世界からの知り合いだし?一緒に行動しようかなぁ〜て・・・な、なんとなくだ!なんとなく!それに、かなめは危なかっしいからな。近くで見てた方が安心だ。あ、後別に一人でこの森に居るのが怖いからとかじゃねぇーからな!)」



ぶっきらぼうな言い方だが、どことなく心配しているのが伝わってくるその言葉に、僕は有り難いと思った。



「ありがとう紅、正直前の世界の事知っている君が別れようなんて言って、そのまま別れたら不安でしょうがなかったよ」

「(い、イイってことよ)」



こうして、僕達は仲間として行動する事になった。

とにかく今の状況は危険すぎる。武器も防具も、医薬品すら持っていないのだ。

とりあえず人の居る所へ行って、何とかしなければ・・・・そう言えば。



「なぁ紅」

「(なんだ?)」

「この先もよろしくな」

「(・・・・ああ、こちらこそ)」


そして、とりあえず最初に現れた森の広場みたいなところから移動したのであった。



改訂済み。

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