第12章
・新キャラ登場でヤンス。
〜出歩いて…落っこちて・第12章〜
ギルドにある依頼の掲示板を眺めていると、受付のお姉さんが保管庫から戻ってきた。
今日は午後から依頼を受けようと思っていたので、紅も交えて少しおしゃべりしていると―――
「そういえば〜イガラシ君たちには〜まだ自己紹介してませんでしたね〜?」
「あ、そう言えばそうですね?」
「じゃあ教えてあげるね〜?私の名前は〜」
―――と、突然彼女は自己紹介を始めようとした。
おお!なんとなく気になってたお姉さんの名前が今解る!
……と、言いたいところだけど……
「た、大変だぁ!!」
――どうやら、そう上手く物事は進まないようで…。
大声が聞こえたので入り口に目線を向けると、一人の青年が息を切らせて入ってきた。
う〜ん、なんとなくだけど、この後の展開が予想できる…。
「ケ、ケンカだぁ!!」
ほらやっぱり。
「あら〜?どうしたんですか〜?」
お姉さんが緊張感の無い声で、青年Aに話しかける。
しかしこのヒトが聞くと、どんな事態になっても脱力感たっぷりになるなぁ。
「い、市場で親方と“アイツ”がまた!」
「あ〜、いつものやつですね〜?ほっとけば収まるんじゃないですか〜?」
「だ、だけどよう!今回は規模がちげぇんだって!」
随分とあわててるな?何があったんだろ?
親方って人と、アイツと呼ばれてる誰かがケンカしているのは解ったんだけど…
「と、とにかく誰か腕のある人を送ってくれ!じゃないと市場が崩壊しちまう!!」
そんな大げさな…そう思った瞬間、ドウン!という音と共に地面が揺れた!?
何だ!?地震…じゃない!アレは魔法的な力が働いてた!ってことは人為的!?
「親方がおっぱじめやがった…なぁ姉さん!頼む!誰でも良いから…!!」
「う〜んそうねぇ〜?ギズボンさんだと〜やりすぎちゃうし〜……チラッ」
――――すいません、お姉さん…何故こちらを見るんですか?
「じゃあ〜イガラシ君お願いねぇ〜?」
「えっ?何「アンタが来てくれるのか!?よし行こう!すぐ行こう!兎に角行こう!!」ちょっ!」
え、なんで!?ていうか襟首引っ張らないで〜!!伸びる〜〜!!
――そのまま僕は、有無を言わさず青年Aに拉致られました(泣)
ちなみに紅達は僕が拉致られるのを見て慌てて追いかけてきてます。
はぁ、せめて状況の説明くらいしてくれよ〜!!
青年Aにズルズルというかズザザザって感じで、僕は市場に続く通りをそのまま引きづられて行く…。
とゆうか何?この羞恥プレイ…行き交う人が抵抗空しく引きずられる僕を生温かい目で見ている。
いい加減離してくださいと叫ぼうかな?
――っと思った瞬間、さっきよりも大きな振動が通りを揺さぶり、青年Aがバランスを崩しかけた。
その為彼は一旦停止する、その隙を突いて何とか腕から逃れる事が出来た。
まぁ実際は僕もバランスを崩してこけたからなんだけどね。
「アイタタタ…一体なにが起こってるんだ?」
「親方と“アイツ”がぶつかったんだ…」
――はて?“アイツ”とは誰だぞなもし?
「ねぇ…“アイツ”ってだr「そんなことよりも行くぞ!」ちょっ!引っ張らないで〜!!」
またもや襟首掴まれて連行される僕。
気分的にはドナドナというより市中引き回しって感じかな?
「あの、さ!僕に、どうして、欲しいの!!」
言葉が途切れ途切れなのは首を引っ張られているからです。あしからず…。
「なに!簡単だ!お前は今現在市場で“値段交渉中”の親方と“アイツ”を止めて欲しい!」
「だから、どうなって、るのか、説明して、ほしい!!」
「説明するより見た方が早ぇ!!ほらもう着いたぞ!」
そう言った彼は僕を放り投げる。
着地したとこでケホケホ喉をさすっていると少し離れたところで―――
「いいから昨日までのレートで売りなさいです!でないと魔法使うです!」
「それだと商売あがったりなんだよ!少しは考えろ!このお子様!序でに脅迫してんじゃねぇ!」
「ムキィィィ!!お子様ではありませんです!!」
―――お髭が御立派な筋肉質のおっさん…多分親方さんと、おっさんの半分以下の身成りの良い身長の少年?が声を荒げていた。
「むぅまた話がそれました。そんなことよりも何故いきなり値段が倍になるんです?苛めですか?」
「だ〜か〜ら!何度も何度も説明してるだろうが!!
鉱物の輸出入には市場とかで飽和状態にならないように値段に制限付けたりするって!」
「だからって納得できないです!昨日通りの値段で売るです!」
「だから、そう言うのは国の役人に言ってくれ。あいつらがレート決めて、俺達はそいつに従っただけなんだからな」
「国に盾突く訳無いじゃないですか?バカなのですか?」
「おい!じゃあ何で俺に言うんだよ!?」
「只の八当りです!」
「解った表に出ろ!」
「すでに出てますよ〜?」
「うがぁぁ!!むかつくお子様だぜ!!」
「お子様って言うな!です!」
「うるせぇ!お前見たなガキんちょはお子様だって相場が決まってんだよ!」
「またお子様って!」
「おう!お、こ、さ、ま?」
「ムキィィ!!そこになおれです!魔法で倒してやるです!!」
「さっきからそう言って倒せネェじゃねぇか!!このお子様!」
「また言ったぁぁ!!許さないです!」
………ゴメン、なにこのカオス?
僕は気を取り直して、僕を市中引き回しの刑にしてくれた青年Aに話しかける。
「ねぇ、もしかしてこれを止めるの?」
「ああ頼む。俺達じゃアレの間に割って入るのは無理だ」
「でも只のケンカでしょ?しばらくすれば収まるんじゃ?」
「そうだったら苦労しねぇよ。周りを見てみろよ?」
そう言われ周りを見ると、辺りには破壊された屋台やら粉砕された店先やらが散乱している。
「なんか、嵐が通り過ぎた後みたいになってるけど?……ってまさか?」
僕の言葉に、青年Aはニカッ!とある意味いい笑みを浮かべ―――
「正解、その嵐がアノ二人だ。」
―――トンでも無い事をのたまった。マ、マジですか?
「つまりアノ二人を止めろってことですか?」
「つまりも何もその通り、いい加減ここいらで止めてもらわないと、この市場が崩壊しちまうからな。」
――嫌まさかそんな訳無いでしょう?たかが人が暴れた位で。
そう思い彼らの方に視線を向けると……その考えがいかに甘いのか思い知らされた。
「行きますですよ?親方さん“一つ目の炎神を司るは日照りの火災…炎に呑まれろ!”フレイム・スロウワー!…です!」
ちっちゃい方はいきなり魔法詠唱を開始し、その小さな見た目からは想像もできない程の
禍々しい炎の渦を前方の親方さんに向かって撃ちだした!
………射線上にあった何件かの屋台を巻き込んで………。
「デケェだけで中身のねぇ魔法が通じる訳ねぇだろう!聞きわけの無いお子様にはゲンコツだ!喰らえ!親方流気合コブシ!!」
こっちはこっちで訳わかんない攻撃繰り出したぁぁ!!
親方が力を込めたアッパースウィングみたいなのをした瞬間、
目に見えるくらいの衝撃波が現れてちっちゃい方の炎を相殺している…な、なんて出鱈目な…。
あ、余波でこの間ご飯食べて気に言った料理店の店先が崩壊した…気に言ってたのに。
「………って!なんですかコレは!!」
「だから嵐みたいなもんだって?クノルの町の嫌な名物さ。」
ハハハと乾いた笑いで答える青年A……というかアレを止めろと?
「むぅ、イジワルな親方はキライです!エアリアル・ダガー!」
「な?詠唱破棄だと!親方流気合ガード!」
「防ぐなです!いい加減言った値段で売るです!フレイム・スロウラー!」
「そんなことしたらなぁ?こちとら商売あがったりなんだよ!算数くらい習えお子様!親方流気合砲!」
「むぅぅぅぅ!!またお子様って!!エアリアル・ファラリカ!!」
「そんなもん気かねぇぇぇぇ!親方流気合ガード!!」
………ごめん、このカオス空間を止めるのは、僕にはちょっと荷が重すぎるんですけど?
つーか何?あの人外。
自称神からの改造を受けた僕が恐怖を感じるくらい、有り得ない光景なんですけど?
アレを止めるには魔力全開にすれば何とかなるだろうけど……正直逃げたくてたまらないのですが?
「はぁぁぁ!!今回最大の攻撃です!!」
「おもしれぇぇ!!俺も全力だぁぁ!!」
っていきなりクライマックス!?どこの戦闘民族だアンタらは!!―――と、唖然としている僕に青年Aは……
「じゃあ、早速止めてきてくれ!」
「え、僕に死ねと?というか何故襟首を掴んでぇぇぇぇ!!」
……目の前の人外達の放った最大級の攻撃の真っただ中に……放り投げてくれました。
あはは……短い二度目の人生だったなぁ………
――じゃ無い!まだ嫌だよ!僕はまだ死にたくないんだよ!!
だけど、このままだとどう考えても着弾点に直撃コース。
考えろ!考えるんだ僕!生き残りたいならば考えろ!!
―――着弾点まで後2秒…。
―――回避……不可。
―――逃走……不可。
―――防御……恐らく可能!
―――最適行動……魔法使用!
―――術式選択……最大出力イマジンツール・シールド!
―――ココまで0,8秒…魔力収束開始!―――
「“防げ…”」
僕は両手に今までで一番の魔力を込める…
生命の危機により、より一層高まった僕の集中力が、魔力を僕の思い描く形に具現化させる…
そして言霊を込める事で、更に強力なモノへと昇華させていく…。
「ITシールドォォォ×2!!!」
両手を基点に顕現した大きな盾は互いにつながり合い、僕を包み込む形で展開された。
その防御は人外2人が放った最大攻撃を―――
「ぬおおおぉぉぉ!!!!!」
―――防ぎきる事に成功した……こ、怖かったぁぁ……死ぬかと思ったぁぁ……。
「む、アナタは誰なのです?交渉の邪魔するなら容赦しませんですよ?というか消えろです!」
「おい、坊主!危ねぇだろうが?割り込みは行かんぞ?割り込みはよ?順番守るが社会のルールだぜ?」
全ての諸悪の根源の2人が何故かそんなことを僕に言う。
その有り得ない言い草に、たった今この二人の所為で生と死の世界を垣間見た僕は……
―――――――プチ―――――――
…という音が頭の中に鳴り響いてキレてしまった…というか、いい加減…………………怒っても良いよね?
「い」
「「い?」」
「いい加減にしろぉぉぉぉぉ!!!!!」
――――キレてしまった僕は、先ほどの最大出力設定の魔力のまま……
「IT……巨大ハリセン!!!!」
「「な、何だそれ!!」です!!」
僕のイメージを形にし、魔力を食って膨れ上がった長さ20mはありそうな超巨大ハリセンで―――
「頭を!冷やしなさぁぁぁぁい!!!」
バシン!!!
「「ぐらっち!!」」
―――バカ2人を吹き飛ばした!でもハリセンって…どうやら何とか理性がまだ残っていてくれたらしいね……。
間違ってブラスト使わなくて良かった……そんな事したら町が地図から消えちゃうもんね。
―――改めて考えたら恐ろしいわな…くわばらくわばら。
***
「……で、何か言う事は?」(黒い笑み)
「「「申し訳ございませんでしたぁぁぁ!!」」です!!」
超巨大ハリセンの一撃の後、何とか通常サイズに戻したITハリセンで、この騒動の中心人物である親方と少年……
それといきなり放り投げてくれた青年Aを叩き廻してこの場を収める事に成功した。
「まったく、死人が出なかったから良かったものを…良い大人が何ムキになってんですか?それとそこな少年も、国が決めた適正価格なんだから
ゴチャゴチャいわないでその値段で買うか、また安くなるまで待つか、それだけの力があるんだから自分で探すとかすれば良かったでしょう?
それに青年A!よくもいきなり放り投げてくれたよね?いくら僕でもトサカに来たんだからね!?三人ともそこんとこ反省してる?
あと僕の言ってる事間違ってる?ねぇ?ねぇ?ねぇ?」
「「「………」」」
グゥの音も出ない三人……やだコレ気持ちいい……じゃなくて。
「とりあえずこのケンカはギルドが納めますから、今後は注意してください!僕からの言葉はコレで終わりです!」
「「「え?それだけ?」」」
ポカーンとする三人……うん僕からはコレ以上ないよ?……僕からはね?
だってどうせ貴方達は市場の復興の為にこき使われるんだし……無償でだよ?
かなりの範囲が巻き込まれたみたいだから、相当大変だろうなぁ。
同情はしないけどね。後ろからもう怒り心頭で笑みをこぼしている集団が近づいてるけど…まぁ頑張ってね。
「じゃあかなめ、帰ろうぜ?」「くーくー♪」
「うん………ところで君達は、僕が大変な時なんでいなかったのかな?」
「別に……かなめなら何とかするだろう?」
ふ〜ん?そうなんだぁ?
「ところでさぁ?口の周りにソース付いてるよ?キミたち?」
「げ!?」
「やっぱり寄り道してたんだ………あとで説教だからね?」
「「………」」
あからさまにズーンとした空気を纏いだした2人をスルーし、この場を後にする僕。
まったく、有り得ない程疲れたよ。
あ、そう言えば受付のお姉さんの名前聞くの忘れてた。
まぁいずれ解るだろうから…今日はもういいや…疲れたし帰ろう…。
―――そう思い、僕は宿に足を向けたのでありました……はぁ、疲れた。
*おまけ
「アレ?経験値が増えてる?」
アレでも倒した事になるんだ………経験値100しか入ってないけどねw
☆かなめの現在のステータス☆
HP(体力)………………………3230/3230
MP(精神力)…………………6130/6540
LV(現在のレベル) ……………LV32
EXP(現在の経験値) ………2470/10056
STR(力の強さ)………………105
INT(知性) ………………… 8940
DEX(器用さ)…………………82
AGL(素早さ)…………………194
CON(耐久力)…………………78
ATK(物理攻撃力)……………116
MAG(魔力) …………………8970
HIT(命中率)…………………85
AVD(回避力)…………………171
RDM(物理防御力) …………103
RST(魔法防御力)……………885
LUC(幸運)……………………9
AP(アビリティの装備容量) 113/129
CP(技及び魔法の装備容量)…53/139
―――レベルUPはしていない為、ほぼ変わらず。
★魔法★
・ブラスト
【魔力放出で敵を吹き飛ばす。だが熟練者が収束させれば大砲を超える威力を持たせることが可能】
最下級魔法・射程 中〜超遠距離 基本消費魔力20 必要CP15
・フレイムブラスト
【ブラストに炎属性を付加した魔法。直線状の炎が目標を燃やす。込める魔力量で強弱可】
最下級魔法・射程 近〜遠距離 基本消費魔力量30 必要CP20
・アイシクルブラスト
【ブラストに氷属性を付加した魔法。氷の光線が目標を氷結させる。込める魔力量で強弱可】
最下級魔法・射程 近〜遠距離 基本消費魔力量30 必要CP20
・〜〜ブラスト
【ブラストの派生魔法、スペルを組みかえた事による属性変化を追加】
最下級魔法・射程 中〜超遠距離 基本消費魔力20(属性により変化) 必要CP15
・イマジンツール
【魔力を用いる事で武器から料理器具、大工道具まで様々な道具を作り出せる。】
中級魔法 射程無し 基本消費魔力40(一度使用すると30分ごとに20消費) 必要CP20
・キュアウィンド
【癒しの力のある風を対象に向けて放ち傷を治療する】
回復魔法 消費MP 60 必要CP30
・サーチ
【魔力波によるスキャンおよび解析を行う。】
探査魔法 消費MP 10 必要CP5
★アビリティ★
・警戒 必要AP 5 習得済み
【装備している間、五感が研ぎ澄まされ気配を探ることが可能になる。長く装備すると感覚を覚えスキルへと昇華する】
・経験値UP 必要AP 2 習得済み
【敵を倒した際の経験値が上昇、さらに鍛冶等の作成スキル系熟練度にも効果あり】
★スキル★
・家事A
【整理整頓が好きという性格も相成り、高レベルで家事を行える。】
・悪運EX
【どんな事に巻き込まれても生き残る。EXになると隕石の直撃ですら生き残る】
・スキル魔力操作 A
【このスキルはイメージによる魔力の操作を容易にする。今まで以上の威力の魔法が使用可能】
・魔術理解 A+
【魔法やそれに関するモノへの理解度が深まる。B以上なら立派な魔法使いレベル】