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5. 84/65535

 「数字の支配者」が覚醒したアランは、難攻不落と言われた魔王軍の城の一つを陥し、一躍有名冒険者になった。


 そんなアランを追放した俺は無能扱いされ、冒険者ギルドでも腫れ物扱い。

 依頼を受けようとしても


「え、あのアランを追放した無能でしょ? そんな人に任せられませんよ」


 と依頼主に断られるのだ。


 冒険者なのに、あまり依頼を受けられない。

 つまり収入は激減する。


 そんなパーティーに愛想を尽かし、ファランは抜けていく。


 レナは厚顔無恥とも言える提案をして来る。


「ねぇ、アランを呼び戻しましょう」


 毎回なので、もしやこれも必須なのかと思った。


 面会は頑なに断られるので、何度か人伝(ひとづて)、それも伝言する人を代えながらアランにパーティー復帰の打診してみたが、その都度


「もう遅い」


 と同じく人伝に断られる。


 それに、この打診が赤文字で記される事もないため、ただレナが図々しいだけだ、と結論付けた。

 ただ、レナが「戻せ戻せ」としつこい上にやかましく騒ぐ。

 そこで諦めさせる為に仕方なく、無駄だと知りつつも、毎回面会および、復帰の打診だけはしているが⋯⋯。


 そして⋯⋯俺は毎回、いつもの同じに日に死ぬ。


 アランを追い出すようにしてからは、毎回同じ死因。 

 口にするのもおぞましい死に方だ。


 死後、復活した俺は「(しるべ)」を開く。

 アランが「数字の支配者」に覚醒した場合、そこには黒字でこう書かれていた。


「アラン、魔王に挑むも勝てず」


 そして、謎の数字がその下に記される。


 ちなみにアランが初めて「数字の支配者」に目覚めた周期では


(41269/65535)


 といった具合だった。


 最初、何を表してる数字なのか、まったくピンと来なかった。

 だがきっと、何かの手がかりの筈だ、と考え、注視する事にした。


 それからは、俺は青字で記される『因果(フラグ)』の積み重ねを重視した。

 パーティを結成するのが、成人の儀式を終えた二年後。

 これは二年間の冒険者活動がなければ、パーティ立ち上げの許可が下りないためだ。


 もちろん立ち上げ前にも色々試したが、パーティ立ち上げ前には赤字はおろか青字すら追加されない。

 その期間は重要ではない、ということだろう。


 とはいえ、俺は少しでも金を溜めるなど、その後の青字の因果をこなす上で少しでも有益になるように、と準備期間に関しては動いた。


 そしてパーティを結成し、実際に青字で示される因果の積み重ねを始めると、少しでも効率的に動けるように、一つ一つの項目を整理した。


 その中には、どう逆立ちしても同時にはこなせないものもある。


 例えばパーティメンバーの選定もそうだ。


 四人の枠のうち、俺を含めた三人は固定。

 となると、残り一人はどうしても、複数存在する、青字で記される人物から選ばなければならない。


 そして悩ましいことに、青字の人物はそれぞれに、固有の「因果」がある。


 詳細は省くが、例えば槍使いのファランの場合、代表的な独自の青字の因果として「マレー山の竜討伐」がある。

 弓使いのニックなら「メリル村の橋渡し」などだ。


 だが、九十回目からは四人目はファランに固定した。


 マレー山の竜討伐の場合、その準備として立ち寄る魔法都市バルハントで、アランがアクセサリーを入手する、というこれまた青字の因果がある。


 そしてこの因果は、メリル村の橋渡しとは重複できない。

 メリル村に向かった場合、その後バルハントに向かってもアクセサリーは売り切れてしまっているのだ。


 つまり、バルハントでアランがアクセサリーを入手する、というのは時限的な因果なのだ。


 もしかしたら、メリル村の橋渡しと同時進行できる、他の因果があるのかも知れないが、俺は発見できなかった。



 その間も、毎回の結果発表。


38926/65535

36497/65535

31283/65535

24637/65535

27294/65535


右の数字は固定、左のみ変動する。


 これらと、アランの「数字の支配者」というスキルから立てた俺の仮説は。


「これは⋯⋯魔王の生命力、それを数値として見えるようにしたものなんじゃないか?」


 ということだ。


 俺の仮説が正しければ、左の数値0になるときが、魔王の死、つまりアランが勝つ、ということになる。


 その仮説を立てたあとは、左の数値ができるだけ減算する青字の因果を選ぶ。


 バルハントでのアクセサリー入手は500の減算。

 65535から見れば微々たる数値だが、他の因果と比較すればかなりの数値。

 ファランが固定メンバーとなった一因でもある。


 同様に、どちらか一方しか選べない因果、というのは結構存在する。


 同時期に行われる東の街での祭り、西の街で武闘大会、といった具合だ。

 俺はそれらを取捨選択しながら、その中でも、一つでも多くの因果と重複可能な物を選んでいった。


 だが、青の字の因果には罠があった。 

 折角追放しても、アランのスキル「数字の支配者」が覚醒しないケースがあったのだ。


 その場合、アランはあっさりと死ぬ。


 どうやら組み合わせに条件があるらしく、ただ闇雲に数をこなしてもダメ。


 青字の因果で、重複させる総数だけで言えばスルーした方がいい「東の祭」などは、スキル覚醒の観点からいえばむしろ効率的、などということもあったのだ。


 なんで祭りが? などと思うが、結局俺のスキルではないし、考えても仕方ない、とそこは割り切った。


 大幅に減れば喜び、むしろ増えてがっかりすることもあれば、手応えを感じていたのにアランのスキルが覚醒しなかったり。


 七年に一度発表される数字に、一喜一憂する。






 そして、百八回目。


(4234/65535)


 


 まだ何か足りないようだ。


 だが、もう少し。

 もう少し⋯⋯のはずだ。

 何が、どれだけ数値を減算するのか仮説を立て、それを因果の起こる時期と照らし合わせて考えていきつつ、未発見の青字の因果を平行して探す。

 黒字を避けつつ、やれることは試す、という感じだ。





 

 そして迎えた百十五回目。


 スタートしてすぐに「導」を立ち上げた俺の目に映ったのは、百十四回目の結果。


 相変わらずの黒字だが、希望が見えてきた。


「アラン、魔王に挑むも勝てず」


(84/65535)。



 それは百十三回目の(1050/65535)からの、大幅更新だった。


 ついに、見えてきた。


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