異世界人の異世界人による異世界人のための異世界3
実はまだ続くのです。
さて、1人で探検に出てきたのはいいが、どう動くか。
森の方にはカブトムシみたいなツノの生えた巨大な12本足の甲虫が列をなしてズシンズシン歩いているし、それに踏み潰された芋虫状の生物から飛び散った、赤紫色の液体は周りの草木をシュウシュウ言いながら溶かしているので、絶対に入りたくない。
「てことで、湖に沿って探索してみるか!湖に沿って行けば、川とかも見つかるかもしれないしな!」
俺は、覚悟を決めて歩き始める。森からは離れたところを歩いているというのに、森から爆発音や獣の鳴き声やらが聞こえて非常にうるさい。
「夜には静かんなんのかなぁ。いくら夜を無くしたとしても、昼間は気になって休めないだろ…。あの子達はなんとも思わないのかな…」
歩きながら、何も見つからなかった場合、元の場所で生活しなきゃならないことを考えると恐ろしくなる。
そんなことを考えながら、1時間ほど歩いたところで、湖の上に文明の兆しを発見する。
「?湖の上に何か建ってる?それと煙か?集落があるのか?」
水上都市とは、なんともロマンがある。見知らぬ者に友好的な集団であることを祈りつつ、さらに30分ほどかかってたどりついた場所で見た物は…
「水上都市、いや、水上集落って感じだな…」
水上都市と呼べるほどの洗練さは全くなく、広めの桟橋に、ワラか何かで屋根を作ってその下で暮らす人々の集まりだった。ワラで作った家は目に見える範囲では5軒ほどしかない。桟橋の集落の入り口には見張り役が2人立っており、こちらを睨んでいる。1人は背が高い青年、もう1人は子供のようだった。2人とも槍のような武器を構えている。
(こちらに敵意がないことをまずは知ってもらわなくちゃな)
俺は手を上げて、その2人に害を加えないアピールをしながら、話始める。
「すまん、いきなり現れてびっくりさせたかもしれない!俺は今日、この湖に来た者だ!この辺のことを知りたくて探索してたんだが、少し話を聞かせてくれないか?」
2人は目線を俺から離さず、槍を構えたままで何も反応しない。こちらが言っていることが理解できないんだろうか?確かに、異世界に転移してきて、その世界の全員と同じ言語で喋れるのは不自然だもんな。むしろ最初に出会った2人が同じ言葉を喋れたのがラッキーだったのかもしれない。
「お前、セゼベバの使いじゃないのか?」
と、思ってたら、話した。この2人もラッキーなことに言葉は通じるらしい。ただ、今度はこっちがなんと言っているか、理解できない。わけのわからない固有名詞は女神様だけで十分なのに…。これだから異世界は…。
「俺はそのセゼなんとかなことは知らない!もしかして、その使いじゃないと君たちとは話すことはできないのか?」
「いや、セゼベバの使いでなければ、話をするくらいなら大丈夫だ。ただ、この村の外は全てセゼベバの領地とのことだ、お前もうかつにうろうろしていると、捕まるぞ。通るなら、湖ギリギリを通れ。奴らは水には入らないから、いざとなったら湖に飛び込めばいい」
そんな危ないところを歩いてたのか、俺。まぁ、元の世界でも世界で一番危険な生き物は人間だなんて言われてたもんな。この人たちに最初に出会えてよかった。
「そんな恐ろしい場所だとは知らなかったよ、ありがとう。そちらに行っても?」
「いいから早くこちらの村の領域まで来い!捕まったら我らには手出しできなくなるぞ」
セゼなんとかさんの一味は、そんなに素早い動きで人を捕まえることができるのか?
彼らの焦りから、緊張感が走る。
その時!
「湖に飛び込めー!!」
門番の少年の方が叫ぶ!
俺はとっさに湖の方にかけるが、少しだけ気になって後ろを見てしまった。そう、見てしまったのだ。
明人が見たものとは!?そして、この後、彼はどうなってしまうのか!