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炭都  作者: 小川藻
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はじまり

 鉱山事故が起こってから4日間は、まだ多くの鉱夫が、各所に設けられた非常用の電源から供給を受けて生き長らえていた。しかし1週間を超えるとどうだろう。地上からの電力供給は、ずっと復旧されないのではないか。電気は、もう来ないのではないか。




 暗視を(つかさど)るゴーグルのナノマシンはそれなりの電力を使う。あるいは、COを気管で換気する生体機構も同じく電力を消費する。




 もちろん、鉱山夫は筋肉にラチェットが仕込まれていて、動けば動くだけ自家発電が可能だ。ただし、暗視や換気は体を動かしてできる電力をすぐに費やしてしまう。




 私は4日目に、多くの人間が避難し、控えていた新幌内(ほろない)第三立坑(たてこう)付近を離れる決断をした。新幌内第三立坑は、2年前に新設された入り口で、現今のほとんどの鉱夫がここから坑内に出入りしていた。事故が起こり避難をしようとしたとき、自然と鉱夫たちは第三立坑の直下に戻ってきた。




 ここから8000メートルほど、巨大なエレベーターで上れば、日の目を見ることができる。地上に戻り、いくばくかの適正な補償を受けて、飯を食って酒を飲んで歌って喧嘩して、そしてやがてヤマへ戻る。




 そうするために、立坑の直下まで戻ってきた。エントランスには詰め所があり、非常電源やいくばくかの食料が置かれていた。カネビシに直接雇われた鉱夫や技師がリーダーになって、多くの男たちと少数の女たちが禁欲的に救助を待つことになった。




 私は下っ端だが一応カネビシの直雇(じかやとい)だった。集団のはじっこで体育座りみたいな恰好でうずくまっていた。




 直雇いだから、この場所でこの人数がいると、何日で電源や水や食料がなくなるか、あるいはそれを予期して人々の諍いがいつころから起こり始めるか、何となくだが解っていた。




 だから4日目、私は密かに集団を離脱した。

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