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49「ゲマリード来襲」

 騎士団訓練教官のルハイストには、訓練に耐え得る者か否かを判断し、国王に申請を出す裁量権が有ると言う。

 ただ面白そうという理由だけで稽古を付けてくれる訳じゃないようだ。

 とりあえず敬意を払う意味で俺は受けから入る事にした。


「いざ!」

「応!」


 ガキン!


 ルハイスト教官のロングソードの上段振込みを、ファルシオンで受け膂力だけで弾き返す。


「ほう、やるな」

「こちらから行きます」

「来い!」


 ガスン!


「うお!」


 俺はファルシオンを振りかぶり、ルハイスト教官のロングソードを斬り込み、叩き落す。


「お前……、面白い、剣に切り込みを入れるか」


 討ち合った瞬間、ルハイスト教官は目を見開き剣の重さに驚いた様子。

 剣を取り落とした後、満足そうに目を細め、口角が上がる。

 周りで見学をしている騎士達は一様に驚いている。


「片手剣でロングソードに切り込みを入れるだと!」

「私共では勝てぬ教官相手に勝利するとは」

「こんな新人が存在するのか」


「これから、何時でも騎士団と訓練が出来るよう、国王様に申請をしよう」


 ルハイスト教官は実力を認めてくれたようだ。


 専用文官ランダレンは今この一連の状況を書き留めている。

 護衛騎士バイロブ・エドウェルの二人は呆然とした様子。





 ふと横を見れば、城から一人の騎士が大声を上げながら走ってくる。


「ドラゴンだーーー、ドラゴンが来襲して来るぞ、全員集合し迎撃に移れーーー」


「何だと、ドラゴンの来襲?」


 この場にいる者たちは全員が凍り付いた。

 ドラゴンなんて数万の軍団を出しても勝てるかどうかの相手だ。

 備えを整える前の状態で迎え撃つなんて無謀でしかない。


「とうとうゲマリードがここまで来たか」




   ☆




 国王が城内に演説するための大きなバルコニーの手前までゲマリードが来た。

 大きな翼を羽ばたかせながら、バルコニーの位置で空中停止(ホバリング)する。

 マクシミリアン国王は気丈にも、ゲマリードの背に乗る魔族女騎士ベラルダと対応する。


「これは何事であるか!」

「ここにゲマリード様のお子ラーデルなる者がいると聞いて来た、我等に引き渡してもらいたい」

「魔族による宣戦布告ではないのだな?」

「左様、我等に侵略や戦争の意図は無い」

「そうか、いま此処にはいないから、後で話は付けてみよう」

「此処では威圧するばかりで、話しはし辛かろう、我等は街の外で待つ事にする」

「解った、どの様な返事になるか判らぬが、必ず返事をするようにしよう」

「お待ちする」


 ドラゴン・ゲマリードと魔族女騎士ベラルダは踵を返し城外へ飛び去って行った。


 城内はパニックになっている。

 城内の前庭には騎士団が整列し、号令を待っている状態だ。


「魔族めが、早速ラーデルを奪いに来よったか」


 マクシミリアン国王の表情は苦々し気だ。

 ラーデルの正体がドラゴンという事は報告書で知っている。

 魔族側勢力にドラゴンが組しているなら、人族側でもドラゴンという戦力を失いたくは無い。

 今ここでラーデルを失えば、人族側は圧倒的に劣勢になる事が理解出来る。


「ラーデル、ラーデルはいるかー?」

「至急お連れします」


 マクシミリアン国王の下から使いの者が走る。




   ☆




「ラーデル様、マクシミリアン国王様がお呼びです」

「解りました、急いで駆けつけます」


 ラーデルは取り巻き達と共に国王の執務室へ駆けて行く。






 国王の執務室には重臣達が集まり、緊急対策会議の真っ最中だ。

 そんな中マクシミリアン国王は、青白い顔で緊張し冷や汗を流していた。


「ラーデル様がお起こしになられました」

「来たかラーデル」

「遅くなりました」


 ラーデルはマクシミリアン国王から、魔族が取り戻しに来た事を知らされた。

 ドラゴン・ゲマリードと魔族女騎士ベラルダは王都の外で待っていると言う。


 ……とうとう、ここまで追って来たか。


「余はラーデルを厚遇しようと考えている、其方(ソチ)はどう考えておるのだ?」


 正直言って、その問いは答えに困る。

 マクシミリアン国王側について欲しいと言われているのは解る。

 快諾して国王に匿われれば、ザーネブルク王国が滅ぶ。

 ザーネブルク王国を助けるなら、ラーデルは魔族側に付くしかないのだ。

 二律背反する問題の答えを、ラーデルはまだ出せないでいる。


「マクシミリアン国王様のお申し出、ありがたく存じます。 しかし今はあのドラゴンと魔族を何とかするのが火急の問題、何はともあれ自分が行って話しを付けなければならないでしょう」

「うむ、その通りであるな。話し合いの場には一個大隊の護衛を付けようと思う、大臣、至急手配せよ」

「ははっ、承りました」




 やがて一個大隊の騎士団に護られたキャビン馬車がラーデルを乗せ、ゲマリードの下に向う。


 ……前回、あんな分かれ方をしたんだから、無事じゃ済まないかも。

   いや、確実に無事に済まないだろうなぁ。


 前回もゲマリードは、いきなり実力行使に出るほど気が短い。

 今回もいきなりやって来て、直球の申し入れだ。

 また戦闘になる可能性が高いから、念のため精神高揚薬は持って来ている。




 首都外壁の外、丘の上にラーデルを二人の女が待っていた。

 人化したゲマリードと人に擬態した魔族女騎士ベラルダ。


「待っていたぞラーデル。 お前には聞きたい事が山ほどある」

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