序幕
聴け、此の世の外より訪れし者達よ。嘗て、此の地に彗星が堕ちた。
天穹を割る一筋の光条は、咆哮を上げ幾多の星屑を産み出し、その輝きと共に神魔は此の地へ降り立った。
地は震え熱を持ち。大気は流れ空は嘶く。天より降りし雨粒が神々の欠片を包み。青い青い胎水の中で胤は動き出した。
そうだ……その数多の胎動の中に、我等も在ったのだ。
啼け、玉座に侍る者の末裔達よ。産声を上げるのだ。種としての生誕を喜び給え。
混じり無き純血か或いは望まれぬ混血かは此処で問う必要も無い……ただ泣き叫べば良いのだ。醜き嗚咽を無様に晒せ、己は此処に在ると宙へ喚いて見せろ。
そして……知るが良い。
黒白の双子月が再び天穹へ昇る刻、二つの無色が世界から色を奪うだろう。訪れるは審判の時、奏でられるは復活の調べ……
なれど、此の世に救いなど存在しない。慈悲は無く、赦しや情けも在りはしない。希望や夢という脆い虚像は全て崩れ去ったのだ。在るのは汚れた血、錆びた鉄と、果てなく広がる空シキ空のみ。
数多の英雄達が、慟哭と憤怒の絶叫を上げながら無惨に散って逝ったのだ。然して……これより紡ぐは、彼等を謳う英雄譚ではない。
——我は聞く。
これは、純白と漆黒の狭間で、未だ見ぬ世界を追い求めて醜く地を這い進んだ、欲深き愚か者達の……そう、果てなき旅の軌跡であると————