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とんでもない人に出会ってしまった……。結局、連絡先はわからないと言って教えてもらえなかった。どこから来たのか、年もわからない。
ただ、わかっているのは、隼人という人を探している事と、名前がシェロだという事……。シェロって何?外国人?!外国人なの!?
「なんか、リン、いい匂いがする。甘い匂い。」
「え…………?」
「クッキーだ!!クッキーちょうだい!ちょうだい!」
驚いた!この人本当に鼻がいいんた。
私はおばあちゃんにあげようと思っていた手作りクッキーをシェロにあげた。すると、あっという間にクッキーは食べられてしまった。
ペットボトルの麦茶のを渡すと、どうやって飲むかわからないと戸惑っていた。ペットボトルで飲んだ事無いって……ある意味凄い……。
シェロは何故か、飲み口を噛みながら飲んで、むせていた。変な飲み方……。
そんな事をしていたら、待っていた電車が来た。
「すげ~!電車~!あれに乗れるのか~!」
「そっち、それ以上行くと線路に落ちますよ!」
「散歩の途中で遠くから見た事あったけど、近くでみるとデカイなぁ~!ロボだなぁ~!」
ロボ?電車のどこがロボ?!
電車に乗ると、シェロは急に落ち着きが無くなった。何だか…………この人、仕草が犬…………?みたい。あ、また耳の後ろ掻いてる。
それに、さっきからあちこち匂いを嗅いでる。本当にこの人は王子様なんだろうか…………?
「おかしいな。全然隼人の匂いがしない。」
「それは、しないはずだよ。同じ電車、同じ車両に乗った訳でもないのに、人の匂いなんか残る訳ないよ。」
私がそう言うと、シェロは少しおとなしくなった。
しばらくすると、電車の中は少しずつ混んで来た。私が妊婦さんに席を譲ると、何故かシェロは若い男の人に席を譲っていた。
そして、こう言った。
「狭い!!」
心の声が駄々漏れ!!
「しー!」
人差し指を口の前で立てて、静かにするように言った。
すると、シェロはこう言った。
「リン、狭くても我慢しような。」
お前がしろ!!できればその心の声も我慢しろ!!
何だか腹が立って来た。本当に王子様なの!?ただのバカ犬に見えて来たんだけど!!
そう考えながらも、車内でソワソワするシェロをなだめて、やっと池袋駅に到着した。
電車が池袋駅に着くと、流されるように電車から出て、改札を出た。
駅には、人、人、人……人の波だった。ターミナル駅だから、人が多いとは思ってだけど……。平日でもこの人の量。やっぱり東京って人が多い。とりあえず、巣鴨に向かうには乗り換えないと……。
そう思ってふと、隣のシェロを見ると、シェロはその、人の多さに呆然としていた。あまりの多さな圧倒されて、隼人どこですか?と訊く事を忘れている。
「どうしよう……。これじゃ、全然隼人を見つけられない。」
シェロは頭を抱えて、しゃがみこんだ。
どうしていいかわからない。でも、ここでこうしてるよりは、お母さんの所に行った方がいい。そう思った。
「とりあえず、一緒に巣鴨まで行きませんか?巣鴨に着いたら、警察に行きましょう。」
「スガモ?ケーサツ?どっちに行くんだ?」
「どっちも。とにかく、行こう。」
お母さんなら何とかしてくれる。そんな気がして、巣鴨に向かった。
巣鴨に着くと、シェロは突然走り出した。
「あ!ちょっと!どうしたの?」
私はシェロを追いかけた。
すると、大福を食べていた男の子にシェロはこう叫んだ。
「隼人!!隼人がいた!!」
隼人って…………子供?!家族って……子供の事?まさかの子持ち!?