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「お母さんどこ?」
娘の凜が心配して電話をしてきた。
「今上野駅。今から巣鴨に向かう所だよ。」
「おばあちゃんは?」
「まだ巣鴨にいると思うよ?」
凜はお義母さんが巣鴨にいる事に驚いた。
「何?結局、美術館1人で行ったの?」
「だって、おばあちゃんやっぱり行かないって言うから。」
一緒に美術館へ行く約束していた義理の母に、ドタキャンされてしまった。予定を変更しても他に何ってやりたい事もないので、1人で美術館へ行って来た。
駅の改札を通ろうとすると、改札の向こう側で、小学生低学年くらいの男の子が駅員に話かけられていた。
「君、お母さんはどこ?」
その男の子は、私と目が合うと、私を指さした。
「…………あれ。あの人。」
それから、駅員と男の子は私の方をまじまじと見た。
えぇっ!そんな訳ないよ!
私はとっさに言ってしまった。
「いえ、違います……。」
そう言った瞬間、男の子は改札を出ずに、ホームの方へ走って行ってしまった。
「あ、ちょっと!」
駅員が追いかけようとしたけど、男の子をすぐに見失ってしまった。こんな広い駅じゃきっとすぐには見つからない。
すぐにバレるはずだよ……。私は改札を入ろうとしてて、あの男の子は改札を出ようとしていた。行く場所が別々。そんな二人が親子なんて当然あり得ない。
そう思いながら、改札を通った。
池袋方面の電車に乗ると、さっき見かけた男の子が、後から乗って来た。そして、その男の子は私の隣に座った。
巣鴨に着くと、後ろからずっと男の子がついてきた。今はICカードがある。切符買う手間がないからずっとついて来れちゃう。
「ねぇ、君、どうしてついて来るの?」
「僕、背が低いから、幼稚園児に見えちゃうから……。」
私についていれば親子に見えるって作戦ね。
「本当はどこに行きたいの?」
「どこでもいい。僕、シェロを探してるんだ。」
「シェロ?」
何かのペット?犬?猫?鳥?
「どこで見失っちゃったのかな?」
「家から向こう側の空。」
なんだ、鳥か。
「それは、いついなくなったの?」
「幼稚園の時に家に来て、どこかに行っちゃった。」
幼稚園の時って事はだいぶ前だよね?見つかる訳ないよね?
「その鳥さんは、どこかで自由に暮らしているのかもしれないよ?」
「鳥?違うよ!龍だよ!」
龍!?
「願いを叶えてくれる龍なんだ!」
それって…………7つのボールを集めると願いを叶えてくれるってアレの事!?アレって実在するの!?
「こんな時、ドラゴ◯レーダーがあればいいのに……。お父さんが大人しか買えないって言ってたから、僕持ってないんだ。」
可哀想に……嘘教えられて……。
「おばさん持ってますか?」
当然持ってる訳もなく…………。
「ごめんなさい。おばさんも持ってないの……。」
私、何謝ってるの?早くこの子、警察に届けなきゃ……。
「どこに行くの?警察?いい、大丈夫。それなら僕、自分で帰れるから。」
警察に行って欲しくないんだね。自分で帰れるなら保護しなくてもいいのかな…………?
とにかく、お義母さんとの待ち合わせの喫茶店に行こう。