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なんか、変な臭いがする。懐かしいような、寂しいような、不思議な臭いだ。臭いを辿ると、ゴミに埋もれた家に着いた。
「やっぱり、寂しい臭いがする。」
俺がそう呟くと、リンが言った。
「ゴミの臭いが?この臭いが寂しい?」
「シェロ…………もしかして、シェロじゃなくて、シェロなの?」
「少年、意味不明なんだけど?」
俺が犬のシェロの方だとわかると、隼人はあからさまにガッカリしていた。
「そっか……犬の方のシェロか……。」
「犬の方って、他にシェロがいるの?」
隼人は小さい頃出会った、願いを叶えてくれる龍の話をリンにした。
「で、そのシェ◯ロン……あ、違った。そのシェロを探して家出中って事?!」
「家出なんかしてないよ!」
「あのね、誰にも行き先言わないのは家出って言うんだよ?」
二人が話をしているのを聞きながら、家の中に進んだ。
「あ、シェロ!勝手に中に入っちゃダメだよ!」
リンがそう叫んだけど、俺はどんどん奥に入って行った。中はゴミで詰まってて暖かい。
何だか…………ここは懐かしい。
「シェロ、どうしたの?」
ゴミで埋まっていて1列にしか進めなかった。俺が立ち止まると、後ろのリンが辺りをキョロキョロして言った。
中に、人がいるのに気がついた。
テレビの灯りだけが、その姿を照らしていた。
「寂しい……。寂しいねラッキー。」
誰…………?
俺がその部屋の方に入ると、さっきまで寝ていたのか、住人が俺達に気がついた。
「…………ん?誰だ?」
こうゆうとき…………なんて言うんだっけ?
「こんにちは!」
リンがそう言った。
「こんにちは!」
俺も真似して言ってみた。
「もうこんな時間か…………何の用だ?金ならないぞ。」
「あ、すみません!すぐ出て行きます!ほら、シェロ、行こう!」
「よっこらせ」
住人はそう言って立ち上がると、天井から下がった照明をつけた。
すると、部屋が明るくなって、白髪の老人と、ゴミだらけの部屋が鮮明に現れた。
「何の用だ?」
「じーさん、なんか履くもの貸してくれよ。」
「はぁ?何で俺がお前に履くもの貸してやらにゃならん?」
そこに、隼人がやっと入って来た。
「シェロ、迷惑だよ。行こう。」
「それに、ここじゃ服なんか見つからないんじゃない?」
リンがボソッと一言言うと、老人は機嫌が悪くなった。
「そんなもんすぐ見つかる!そこら辺にあるもの何でも履けばいい!何でもやるからさっさと出て行け!!」
「何でも!?じゃ、俺、これがいい~!」
さっきから気になっていた、ちょっと酒臭いデッカイペットボトルを手にとった。
「ちょっと、シェロ、それペットボトル。それ、ゴミだよ?せめて履くもの…………」
「ゴミじゃない!!」
じーさんと同時に言った。
「リン、ここ、宝の山じゃん!」
「宝の山?どこが?」
「じーさん、これ、噛んでいい?」
潰れたペットボトルも見つけた。
「止めなよ!汚いよ!」
「汚い事あるか!ちゃんと洗ってある!」
二人のやりとりを横目に、俺はペットボトルを噛んだ。噛み心地、まあまあだな。悪くない。
「僕、これがいい~!」
隼人は網の無い虫取網を選んでいた。いいチョイスだな!!
「ちょっと!二人とも!!すみません、すぐに出て行きます!ほら、それ置いて!」
「やだよ~!これ、俺がもらったんだもん!!」
「あ、ズボンあったよ!」
隼人がズボンを引っ張ると、ゴミが崩れて来た。
「危ない!」
俺は隼人の手を引いて、ゴミの雪崩から回避した。
「また直で履くの?パンツは?なんでパンツ履かないの?」
「あ!あった!」
隼人は雪崩れたゴミの中から、パンツを見つけて俺に渡してくれた。
「いや、あるだろうけど!他人のパンツ履くの?信じられないんだけど……って、ここで脱がないでよ!!」
「じゃ、どこで脱げばいいんだよ!」
俺は、ズボンを脱いでパンツを履いた。




