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駅に向かってるのが見えたから、駅周辺を探した。
すると、ちょうどトイレから二人が出て来るのが見えた。私は急いで二人の元に行った。
「あー!いた!シェロ!!」
「誰?シェロの知り合い?」
男の子はシェロに私の事を訊いた。
「家の近くの駅で、俺のこれ、やってくれた人。」
シェロはそう言ってズボンのチャックを指差した。やめてよ!!そこ指差すのやめて!!
「あと、クッキーくれた。凜、ありがとう!」
なんなの!?その王子様スマイルは!!その笑顔にもう騙されない!!
「違うでしょ?私のICカード。返して。」
「シェロ、ICカード借りたの?!」
シェロが私にICカードを返すと、男の子は驚いていた。
そりゃそうだよね……。見知らぬ人(しかも、素肌に黒スーツでかなり怪しい人)に、普通貸さないよね……。
「もしかして、シェロに脅されたとか……?ご、ごめんなさい!」
そう言って男の子は頭を下げた。
「いやいや、そんな事はないから。」
本当は顔が好みで、セレブだと思ってたから。とは言えず……。
今は何となくわかる。シェロはセレブとかじゃない。多分、ただの変人。それも、かなり特殊な人。
「僕、お金持って無くて、シェロが使った分、今は返せないけど、いつか必ず返します!」
小学生のクセに、精一杯飼い主してる。可愛いな~。
「じゃ、出世払いね。それも、お金じゃなくて、お姉さんをデートに誘ってね。」
「デート?」
「いいな~!俺も~!俺もデート行く~!」
シェロはデートの事なんだと思ってるの?
「デートって、楽しい所?芝生?芝生ある?」
「公園か何かと勘違いしてる?」
「え?違うの?」
三人で話をしていたら、シェロがぶるぶる震え始めた。
「寒いの?」
「足が冷たくなって来た。」
よく見たら、シェロのズボンがびしょ濡れだった。そりゃ寒いよね。春先とはいえ、夜は冷える。もうすっかり日が傾いていた。これからもっと気温が低くなって来る。
ここは、おば様達の力を借りるとしよう。
私はお母さんに電話をかけた。
「こっちに来てだって。」
「こっちって?」
「あ、位置情報送られて来た。行こう。ついて来て。」
私は送られて来た携帯の地図を便りに、二人を連れてお母さんとおばあちゃんの所へ向かった。
とげぬき地蔵を越えて、角を曲がって、進んでまた曲がって…………
「なんか、変な匂いする。」
「え?ちょっと、どこ行くの!?」
シェロが急に行き先とは違う方へ歩いて行った。
たどり着いた先は…………ボロボロな家……。そのボロボロな家は、ごみが沢山積みあがっていた。これは…………つまり、ゴミ屋敷だった。




