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1-12 混浴ナイト

第一章 辺境都市『ムサシノハラ』


 ヒタヒタと素足で近づく音に気がつくと、目の高さに楚々(そそ)とした細い足首があった。薄闇の中でその程よい肉付きの脚が、妙に(なま)めかしく際立って見える。


「ちょっとギジェ、あっち向いててよ」


 少女はぐいっと手ぬぐいを、太腿(ふともも)まで引き伸ばした。


「はいはい、ここから入ると段になっていて降りやすいよ」


 ギジェは言われるがままに、視線を湯の池へと移す。


 ずっと奥まで続く壁面を伝って、あちこちから広く湯が流れ落ちていた。流れは湯煙を巻き上げて視界を白く曇らせる。よく見れば中央付近は深くてかなり熱そうだった。


 気がつくと波紋を引きつつ華奢な裸体が、すっと横まで進んでくる。金髪を大きく上に()い、顔を紅く火照らせたライシャが、恥ずかしそうに腰を降ろした。


「どお? いい湯加減だろ」


 何故だか、すでにのぼせ気味の少女が、口まで湯に浸かって上目遣いに彼をみる。


「う、うん… 自然の露天風呂とは思えないね」


 ギジェは苦笑しながら、湯の中を隣まで移動してくる。


「ち、近いから」

 

 すると彼女の手を取って、ぐいっとそのまま身を起こした。「きゃっ」とライシャが声をあげると、胸までが湯の上に晒されてしまう。


「そんなに深く浸かっていたら、すぐにのぼせるよ。温泉の基本は半身浴です」


「だって見えちゃうもん… わたし胸あまり無いし」


 双丘を片手で隠しながら、もじもじと(うつむ)いた。


「君は妖精のように綺麗だぞ?」


 ギジェは少女を前にすると、両頬をぴしゃっと手で挟みこむ。むーっと膨れ面になる妖狐の顔を、笑顔で覗き込む藍色の瞳。


 観念したように少女の手は、自分の胸から彼の膝上へと移っていった。


 跳ね上がるように形の良い双丘が(あらわ)になる。確かに大きくはないが、想像通りの上向きでバランスの良い膨らみだ。


「わたし… なんで温泉に行こうとか言ってしまったんだろ…」


 そう(こぼ)した膨れ面に、ギジェの唇がゆっくりと押し付けられた。


「あっ… んんっ」


 少し熱を帯びた深いキス。恥ずかしさが欲情へと簡単にすり替わる。


「ん… はぁ」


 舌を絡めて満足するまでお互いを味わうと、いつの間にか濡れ肌のままで抱き合っていた。


「ライシャ、こういう時は深く考えたら負けだから」


 いえ、すでに戦わずして負けているのです…。


 ギジェは笑顔で華奢な背を後抱きにすると、彼女を膝に乗せたまま浅場へと座り込んだ。ふたりの絡んだ脚が具合よく湯に沈む。


「もう降参します… お好きにどうぞ」


 ライシャはすっかりと諦めて、彼の裸体に背中を預けた。ギジェは後から胸のすぐ下を腕で抱きしめる。素肌で密着する濡れ肌の感触。


 ああ… 幸せだけど逃げ出したい…。


 少女は真っ赤な顔でイヤイヤと身悶えた。


「もう、お返しだからね」


 ライシャは振り向くと獣のように、ギジェの引き締まった胸を甘噛する。それに微動だにしない彼… さらに首筋の汗を子猫のように舌先で舐め取ると、そこでもう一度荒く唇を奪われた。


 これ以上求めると後戻りできないギリギリで、お互いの口先がつっと離れる。


「違う意味で、すぐにのぼせそうなんだけど」


 少女は少し息が乱れ、妖しく潤んだ瞳で彼に振り返える。確かに恥ずかしさよりも気が楽かもしれない…。




「このぐらいの熱さが丁度いいな。そしてライシャの胸も凄くいい」


 こっそりと腕を引き上げて、少女の胸の膨らみを(てのひら)で包みこむ。貼りのある柔らかさが指に吸い付いて気持ち良い。


「あんっ… ちょと、そこは…」


 身悶える妖狐のキツネ耳に「ごめんちょっとだけ」と(ささや)いた。びくんと震える耳の端を口先で挟んでキスをする。そうして濡れたキツネ耳の味も堪能してみた。


「駄目だって… 耳は、あっ… あん」


 少女の華奢な身体が、とろけるように力抜けしてしまった。


「もう… はぁ、ギジェ絶対遊んでるでしょ」


「あまりに君が可愛いもので… つい」


 ライシャはするっと身を返すと、首に手を巻いて抱きついてくる。彼の胸板に柔らかく自分を押し付けると、今度は彼がびくっと反応した。


「もう駄目よ… これ以上は、止まらなくなるでしょ?」


 もっと進んでも良いのだけど…。 こっそりとライシャが本音で想う。


「君が可憐すぎて、色々と悩ましい」


 湯の中に寝転がって、ぎゅっと互いを前抱きにした。さすがにギジェも、これ以上欲望を抑える自信が持てなかったらしい。


「よし、では俺がライシャを洗ってあげよう」


 何処から出したのか、彼女のオリーブオイルの石鹸を手にしている。


「あ、私の石鹸をいつの間に…」


「ふふっ、罠に掛かったな」


 ギジェは少女を前抱きにしたまま立ちあがると、浅瀬の平たい岩に彼女の腰をやさしく降ろす。


「あーん もうみんな見えちゃうよ」


 足湯状態で太腿(ふともも)をすり合わせて、もじもじと恥ずかしがるライシャ。


 なにこのエロ可愛い生きものは…。 たっぷりと泡攻めで愛でてやろう… 


 手ぬぐいで石鹸を一杯に泡立てると、汗が浮かぶ可憐な裸体にそっと泡を置いていく。その度にキツネ耳がびくびくんと跳ねている。


「ライシャは本当に肌が綺麗だな」


 艷やかなうなじから、背中に駆けて優しく泡を広げると、肩や脇下に手を差し入れて洗っていく。


「あ、凄い… あっ、くすぐったいよ… もう、誰も居ない荒野だと、何でそんなに積極的なのよ」


 脇の下をぬるぬると洗われて、つい声が漏れてしまう。


「荒れ地こそ俺のホームだからだよ」


 更に石鹸を追加すると、背中から腰へ、そしてお尻へと泡の侵攻が続いていく。


「あっ… 尻尾いくの? ああっ…」


 一杯の泡で可愛い尻尾を包みこむと、優しく優しく揉み洗いを始めた。


「ダメよ、あっ… はぁはぁ、切なく… なちゃうの」


 とたんに今まで以上に身悶えて、可愛いお尻が左右に逃げ惑う。


「尻尾ってそんなに気持ちいいんだね」


「良いけど… 刺激が、あっ… 強すぎるの」


 ほとんど力を入れずに洗っているのだが、それが逆に刺激的なのだろうか?


「ほらもう少しだから」


 逃げられないように後から抱きしめると、最後に尾の根本を指の腹で優しくマッサージする。


「あぁ… やあぁあああ、ダメよ… あああっ」


 ライシャが反応して全身がびくびくと跳ねてしまう。軽くいちゃったかもしれない…。


「本当にここが弱いんだね」


 ちょっと意地悪しすぎたので、脱力している肢体を支えながら、お尻から足首までをさらっと洗って許してあげた。


「さぁ、今度は前向いて」


「はぁはぁ… ええっ?」


 もう言われるがままに、こちらをへと向き直る少女。


 本当に艷やかで白い肌に目が奪われる。綺麗な双丘が目前で(あらわ)になり、閉じられた太腿が羞恥にきつく閉じられている。


 再び石鹸をたっぷりと泡立てると、まずは手を繋ぐように指先から洗い始める。


 腕から首すじ、胸元へと泡まみれになり、ついに並んだ膨らみも白い泡に埋もれてしまった。ぬるっと手の指で、下から上へと洗いあげると、ぷるんと可愛く泡が跳ねる。


「ああああん… 切ないよお…」


 キツネ耳をびくびくさせてライシャが悲鳴をあげている。


「凄く可愛いよ、ほら脚も開いて… ここも洗うから」


「いや、そこは自分で… お願い、あんっ、あぁ、…あん」


 もう隠されたところは何処も無い… 全身(くま)なく泡だらけに洗われてしまった。ぐったりと力抜けしていた裸体が、ぐいっと突然に身を起こす。


「もうお嫁にいけないから! 責任とってよね」


 そう言って泡だらけの細身で、ギジェの筋肉質な胸板に抱きついた。ぬるぬると胸の泡を押しつけて、体中でギジェの全裸に泡を移していく。


「もう! 私もギジェを洗ってあげる」


 そのまま彼の手から石鹸と手ぬぐいを奪い取ると、彼の身体に泡を落として無遠慮に洗っていった。


「どう仕返しよ!」


 少女が勢いのまま大事なとこまで、ぬるぬると洗ってしまう。


 そ、それは刺激が強すぎます…。


 そうしてお互いに泡だらけになると、前になり後になって肌と肌で泡を交換して遊んでいた。それからライシャの太腿(ふともも)を抱きしめると、頬に少女のお尻を押し当てたまま、深みへと歩いていって、ずぼんと潜った。


「きゃー 髪が濡れる」


 少女の悲鳴に、ぎりぎり首までですんだらしい。そうしてすっかり泡も流れると、腰抱きから、するっとお姫様抱っこに入れ替えて、最初の浅瀬まで戻ってきた。


 そっとそのまま湯に沈むと、膝上に少女を抱いたまま、目前にエールのグラスを差し出した。


「い、いつの間に… その謎収納おそろしいわ」


 そう言って冷えたエールをぐいっと流し込む。ギジェも自分のグラスを手にするが、反対の腕はライシャの裸体を抱いたままだ。


「なにか、色んな邪気が洗い流された気分よ」


 もう何も隠すものはない、この晴れ晴れとした気分はなんだろう? 遊び疲れた子供のように、ぐったりとギジェの裸にもたれている。


「楽しかっただろ?」


 満面の笑顔でエールを飲み干した。


「うー 悔しいけど、凄い楽しかったわ。同じぐらい恥ずかしいけど」


 気だるく妖艶な眼差しで、うっとりと彼の瞳を見詰めている。


「もう少ししたら… ね?」


 そう言って軽くキスをする。


「ああ、君が居てくれるだけで怖いものなしだよ」


 同じように軽い口付けを返して言った。

 

 すっかり辺りは宵闇に暮れて、焚き火の色だけが水面(みなも)に揺れている。


 ああ、()()について全て打ち明けてしまいたい…。


 彼女を好きになるほどに、隠し事の重みが心を乱した。全てを伝える事ができれば、どれだけ気持ちが軽くなるだろう? そして何かの区切りがつく気もしていた。


「どうしたの?」


 しかしそれは、この可憐で愛しい少女を、遠ざけてしまうかもしれなかった…。


「ギジェ?」


 ライシャが手のグラスを彼の頬にそっと当てる。伝わる冷たさが妄想を振り払った。


「ライシャ… こうして何も考えずに君と居たいよ」


 触れ合った汗ばむ肌の、そこにある存在感が心地良かった。


「うん」


 何かを察するように小さく頷いた。


「俺はいつか、ちゃんと…」


 そこで妖狐の少女が可愛く舌を入れてくる。言いかけた言葉は途中で閉ざされ、しばらく互いに貪るように求めあった。


 うっとりと唇を離すと、目を細めて妖艶な表情で彼を見る。


「大丈夫だよギジェ… 待ってるから」


 思わずその細い肩を抱きしめる。


「今気がついた… ライシャっていい女だな」


「今更なのね…」


 そうやって湯に浸りながら幸せそうに笑いあった。







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