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王族に生まれてしまったら  作者: 陸 なるみ
第一章 小さな島の王女にできること
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皇太子の場合

 ラドローは現れなかった。来ようにも動けなかったのだ。北の守りが薄くなれば北方民族が軍事境界線を越えて南下してくる。北の氷が溶け、敵の動向が活発になると、北部戦線とランサロード城の往復だ。

 ランサロード王は五十をすぎたが健在で内政をみており、長男のラドローが皇太子として軍事外交を担当している。


 ラドローは自分が北に縛りつけられているのが我慢ならなかった。今までは遊び半分、境界線を越えてくるヤツを戦いつぶせばよかった。しかしこれからはそうはいかない。北が落ち着かなければ南のことは考えられない。愛するピオニアの国のことは。

 意を決して北方民族との停戦と、国境線決定の交渉に入ることにした。

 

 レーニア城にルーサーがいる。それがラドローを苛らつかせた。何度考えても結論は同じだ。

 

 ――男に守られることこそ女性の名誉と考えるルーサーは、何かとピオニアの世話を焼いていることだろう。ピオニアはそれを喜ぶ女じゃない。昼夜問わず、フランキ軍撃退法に頭を絞っているはずだ。ルーサーは聞く耳をもたぬ。「心配要らぬ、メルカット船が守ってやる」の一言だろう。

 ピオニアは自分の作戦に間違いがないかアドバイスが欲しいだろうに。

 海戦はわからぬオレでも布陣についてなら何かわかるかもしれない。

 そして昼勇ましく振舞いながら夜は震えているのだろう。領民を失えば心を痛めるのだろう。遺族を慰めるピオニアをいたわり温めるのはオレの役目だ。

 あの日見せた女らしさ、いじらしくて添い寝するだけで満たされた。大切にしたくて処女のままおいた。ルーサーにやるためでもフランキ軍に汚させるためでもない。

 南に行きたい。父上お許しください。弟ハイディよ、おまえに北の平和とこの国を遺していく。オレはランサロードの皇太子ではいられない――


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