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王族に生まれてしまったら  作者: 陸 なるみ
第九章 親になるということは
87/120

ルーサーという王の恋路は ①

すみません、割り込み投稿です。

無しで済ませようと思ったのですが、結末に左右しそうなので、考え直しました。

構成、プロットの甘さです。ご容赦のほどをお願い致します。

 

 ある日作業場で編み針を動かしているとアンナが訊いた。

「ルーサーさまはどうしていらっしゃるんですか?」

「それが行方不明らしいの」

 レーニアの他の者は先の戦いで敵だったルーサーをよく知らない。ふんぞり返った王様だと思っているだろう。

 何かと理由をつけて遊びに来ていた若い頃、港から城まで颯爽と馬で駆ける姿を見た者は多いはずだが、記憶は塗り替えられてしまったかもしれない。

 アンナだけは城内でお茶を出したり、付添役として同席したりしてルーサーの人となりを知っている。


「アンナ、『ルーサーさま』だなんて敬語使わなくてもよくなくて? 私たちがここで寒い思いをしてるのはその人のせいなんだから」

 周囲の女たちが会話に混ざる。

「姫さまに求婚して断られたんでしょ、カッコつかないわよね」

「でも島から追い出しといて、姫さま探し出して捕まえに来ないの?」


 口さがない女たち、特に若い女たちの意見にピオニアは苦笑した。

「昔はもっとカッコよかったのにね。乗馬を教えてくれたり、剣の相手をしてくれたり。溺れかけたときは助けてももらったわ。頼りにしていたのに」

「姫さまがハンスのほうがいいなんて云うから」

「そうよね」


「行方不明ってこっそり姫さま捜してるんじゃ?」

「どうかしら。メルカットの外務大臣はね、一応、『貴国にレーニア人の集落はないか』って各国に問い合わせたらしいの。でもランサロードもサリクトラもパラシーボも無視したって」

「外務大臣って、ルーサー王じゃないの?」

「違うのよ、あのデルスっていう、レーニアを攻めた指揮官」

「嫌だ、あのひと大っ嫌い!」

「私も!」


「あんな男に好き勝手させたらダメなのに、ルーサーもどこまで情けなくなっちゃったのかしら」

 ピオニアは俯いた。

「姫さまに振られて、戦争おっぱじめて、レーニアみたいな小さな島占領するのに苦労して、東の国からバカな男連れて来て、城を落としたと思ったらだあれもいなくて、捕まえたハンスには処刑場で逃げられて、今姫さまがどこにいるかさえわかってないなんて、オロカとしか云えないわ!」

 ここ一年でぐっと大人びた土建屋のおしゃま娘アソニアが大声で云い、一同笑い転げた。


 その夜うちでハンスに怒られた。

「ピオニア、おまえだけはルーサーを笑っちゃいけない」

 編み物組の会話を、作業場の反対側で夫は聞いていたらしい。

「どうして? 私が一番ルーサーを知ってるの。大好きだった幼馴染と戦争なんかになって、がっがりしてるのよ? 笑っちゃだめなら怒ればいいの?」

「ルーサーの思いに応えられなかったのはおまえの方だろ?」

 そんな糾弾を受けるとは思っていなかった。


「ルーサーはレーニア付きの私が欲しかったんでしょう? あなたの妻になった私を捜してもないわ」

「バカだな」

「バカって……なに?」

「傷ついた心抱えて内政建て直しに頑張っているのに、おまえにそんなこと云われるとはね」

 夫は怒っているというより、悲しそうだ。


「自業自得じゃない」

「おまえのせいだろう? おまえとオレのせいか。ピオニア、おまえが選んだのがルーサーだったら、オレのこと笑ったのか? おバカさんね、国を捨て顔を壊して、私に愛される可能性なんてこれっぽっちもないのに、バカな男って」

「そんな、あなたとルーサーは違うわ。あなたのしたことは筋が通ってる。そして行動で示した。ルーサーはただ手紙書き連ねて、たまにお茶飲みにきただけ」

「だからバカだというんだ。オレは知ってるよ、小さい頃からアイツがどれだけおまえを思ってきたか」

「え?」


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