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王族に生まれてしまったら  作者: 陸 なるみ
第八章 島に帰るためには
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親しい王の心裡は


 パラシーボではふたりとも、パラスにギュッと抱き締められた後、盛大なディナーとなった。王太后、パラスの妹のフラ王女、側近の貴族たち、そしてラドローを治療した、救護院の専門医が呼ばれていた。


「医者よ、この人に見覚えはあるか?」

「はい、やはり、一年ほど前うちで手当てさせてもらった方です。変だと思ったんです、こんな健康な若者がこの病気になるなんて。それも顔だけに病変が出るなんておかしいですから。あ、食事中にすみません」

「よいよい、おまえのお蔭でオレの友人はこんなに元気なんだ」

 パラスはすこぶる上機嫌だ。

 

「それも王様がレーニアから治療法を取り入れたからで。どれだけの患者を救うことができたか、数えきれません」

「取り入れたのが偉いのではない、レーニアが偉いんだ。こちらの姫様に好きなだけ感謝するがよい」

「こちらはレーニアの、ピオニアさまですか! この度は大変なことになりました。あのとき世話になったエリオ医師とシェル医師の安否が気になっていたのですが……」

「二人とも元気です。どんな条件下でも黙々と最善の治療をする頼りになる医師たちです」

 ハンスが言葉を継いだ。

「籠城しようが放浪しようが病人は出ないな」

「よかった、ご無事なんですね。さすがだ!」


 デザートが済んで食後のお茶を飲んでいると、パラスはハンスと席を外した。

 王太后はそっとピオニアに話しかけた。

「食欲があるのはいいことです」

「王太后さま!」

「赤ちゃんがいるのでしょう?」

「はい、あんなに馬を乗り回したのにお腹の中にいてくれました」

「気付いていたのですか?」

「あの時はまだ」

「剛い子供に育ちます」

「ええ」

「ピオニア姫、もしできたら懐妊の報を皆が揃ったら発表してくれませんか?」

「皆さまの前で、ですか? それは恥ずかしい」

「パラスのために、お願いします」

「パラスの?」

「あの子は不器用で自分のあなたへの思いが、友情なのか愛情なのかわからないでいます」

「こちらの都合で男装したりしてお心をかき乱してしまったのですね」

「親友の妻であることをきちんと見せてやって欲しいのです」


 階上の王の間でパラスはハンスに相談をもちかけた。

「隠しごと嫌だから云ってしまうが、オレ、ピオニア姫が気になってしかたない」

「待ってくれよ、おまえまで恋敵か? 身が持たないよ」

 何か政治の話でもあるのかと思っていたハンスは目を丸くした。


「これが恋なのか? おまえの奥さんには敬意を表したい。覆面殿には尊敬の念でいっぱいだ。おまえを助けたいと現れたピオニア姫はいじらしくて、助けたいと思った。あの夜、オレの顔を見るだけで元気が出ると云ってくれた。嬉しかった。今日みたいに食卓で淑やかに食事するあのひとがいったい誰だがわからない」


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