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王族に生まれてしまったら  作者: 陸 なるみ
第八章 島に帰るためには
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新婚旅行に出たら


 ピオニアの体調をみて十日後、ジンガ大統領の書状を携えてふたりはランサロード城に向かった。

 気分次第ののんびり旅だ、馬で普通に走って二日のところを五日かけて、ピオニアとハンスはランサロード城下町を見遥かす丘にたどり着いた。

 町は足元、城は目の前に迫ってくるように見える。

 

「大きな城だな、こうやってみると」

「星型なのね。空から見たらどんなにか綺麗かしら。鳥が羨ましいわ」

「そんな感想初めて聞いた」

 元皇太子はにっこりとした。


「ねぇハンス、本当にもう派閥争いとかは大丈夫なの? ハイディ派に対抗するためとか、連れ戻されたりしない?」

「もう大丈夫だ。情勢は刻々と変わるんだよ、ピオニア。トップレベルではルーサーとジャレッド以外、皆オレがラドローだと知っている」

「ジャレッド、ショック受けてた、あなたがいなくなって」

「まだ理解できんだろ、あの血の気の多さじゃ。戦争ごっこイコール統治、みたいな考えでいるから。折りを見て会いに行くさ」


「ランサロード国内は、あなたにとって安全なのか尋ねたんだけど?」

「王妃は息子が皇太子になってハッピーだし、オレの忠臣たちは『新聖燭台会議』を主宰したハイディの力量を見てる。路線もオレと同じ。親父が目の黒いうちに要職を分け与えて再統合するだろう。顔合わせて『心配した』となじられはするが、今さら戻って王様になってくれとはいわない」

「もしかして、そのためにハイディを焚きつけたの? 会議を開けって」

「まあ、それもあったかな」

「外交練習とか云ってたわよ、策略家の兄を持つと大変ね」


 ピオニアの胸にはまだ他にも疑問符がひしめいている。

「もしお父様に会えたらどうするの? 顔隠したまま? 私はどんな顔してればいいの? 息子をこんな姿にした私は?」

「気がついてもどうこういう男じゃないよ、親父は。ハイディの態度からもう気づいてると思う。オレをこんなふうに育てた人だからね。人払いしてくれたら顔隠す必要はない。間違ってもおまえを責めたりしないよ」


 まずはハイディとの謁見の間に通されたふたりは、ジンガの書状を差し出した。

 中にはレーニアの民が落ち着いた生活が送れるようになった謝意と他の集落との交易の許可が欲しい旨書いてあった。

 ハンスもピオニアも何の相談も受けてなかったが意見は同じだった。

 

「私は何もあなたがたを隔離したつもりはありません。隣町の市にもどんどん参加されたらいい。行商に出られてもいい」

「皇太子殿、隣国のランサロード市場にランサロード人に混じって参加させてもらうわけにはいきませんか?」

 ハイディは丁寧語で話しかける兄の声をせつなく思った。

「ランサロードに住まわれて売るものがあるなら制限するものはありません。商業組合のほうに名前を登録するだけです。組合長に前もって挨拶しておけば何の問題もありません」

「ありがとうございます。その旨大統領のほうへ書状にて返答賜ると助かります」

「わかりました」


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