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王族に生まれてしまったら  作者: 陸 なるみ
第七章 捕虜になってしまったら
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夫のご実家のはずが

 

 次の日ルーサーはレーニアがメルカット領になったこと、そしてクーデター首謀者を一週間後に公開処刑することを発表した。

 その報がハイディに届いたのは、彼が船上のジンガからの手紙に苦慮して父親に相談にいったときだった。

 

「父上、レーニア国民がルーサーに国を奪われて頼ってきております。上陸許可を出すわけにはいかないでしょうか?」

「そのことはもう話し合い済みだ。亡命受け入れはできないと云ったはずだ。そんなにルーサー王と戦いたいのか?」


 齢がいってからの子であるハイディは、父は父親である前に王様で、その威厳には気圧されてしまう。

「そうではありません。ただ、ランサロード沖に投錨したまま冬を越すことはできないと思います」

「同情で外交はできない。レーニアに戻り、ルーサーに統治されるがレーニア国民の運命であろう。戦に負けたのだから」

「この戦争自体が戦って決着するものではありませんでした。ルーサー王のただの横恋慕です。それを力で抑えこんだルーサー王のやり方には賛同できません」

「賛同する必要はない。敵対する必要もない」


「私は先の聖燭台会議で決定したパラシーボでの調停会議を実現したいのです」

「もう手遅れであろう。レーニアは滅び、木こりは処刑される。ランサロードがこれ以上介入することではない」

「このままでは私はルーサー王を尊敬できません」

「確かに何か勘違いしておるようだな。しかし、それと受け入れは別問題だ」

「二百人国民が増えるだけです」

「違う。ルーサーの疑念と自国民とのいさかいを引き入れる」

「父上、女子供だけでも上陸を」

「だめだ」


 午後には船上に上陸却下の書状が届いた。ハンスが処刑されるという情報も伝わった。ピオニアは真っ青になりながらも、北に行こうか迷うジンガに云った。

「私をつれてハイディ殿に謁見を申し込んでください。お話したいことがあります。その後、北へ向かいましょう」


 次の朝にはジンガとピオニアはハイディに会うことができた。

「この度は無理なお願いをいたし申し訳ありませんでした。ピオニアのほうからお話したき義がありますゆえ参上いたしました」

「傷病者だけでも上陸させてあげたかったのですが、力及ばず申し訳ありません」

「ハイディ殿、あなた様にできるひとつのことをお願いにあがりました。メルカット城に行っていただけないでしょうか? ルーサー王は夫が私の居所をしゃべらないから処刑という形で私をおびき出そうとしているのだと思います。夫は私がここにいることを知りませんし、私が出ていってはレーニアの皆に申し訳がたちません。夫は従容として殺されていくでしょう。どうかルーサーに会って説得してください。夫を生かしても殺しても私はルーサーのものにはならない、処刑など無意味だと。そして、夫に会ってやってくれませんか」

「姫様!」

 ジンガは思わず声をあげた。


 ハイディは

「あなたを愛しただけで処刑されるのは理不尽なことです。私もルーサー殿を軽蔑したくない。明日にも出発しましょう」

 と答えた。それに対してジンガが謝意を述べた。

「ありがとうございます。ひとつだけ教えて頂きたい。ハイディ殿が、お父上が亡くなる前に即位されることは御国ではないのでしょうか?」

「不思議な質問ですね。通常ありません。父が執政可能な限り。そして私はまだまだ力不足です」


「大統領、おいとまさせていただきましょう。そしてルーサーが思いつかない場所へ向かって船を出しましょう」

「そうですね。では、失礼します」


 城を出るやいなやジンガはピオニアに訊いた・

「ハンスは名乗るでしょうか?」

「わかりません。でも死に別れるとわかっているなら肉親は会う権利があるわ。ランサロード王は無理でも、彼ならハンスも怒らないと思うの」


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