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王族に生まれてしまったら  作者: 陸 なるみ
第五章 メルカット戦争 籠城 新聖燭台会議
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籠城する場合

状況説明の多い部分になっています。戦いの佳境はまだ先です。


 メルカットへの渡しの港脇みなとわきの丘で見張っていた者たちが帰ってきた。

「敵船が十二隻近付いてきた。上陸間近だ」

「よし、皆城内に入ったことを確認して跳ね橋を揚げよう」


 レーニア城は空から見ると正方形に近い。コの字型の三階建ての建物と石塀でかなり広い中庭を囲っている。四隅にチェスの駒のルークのような塔があり、建物の屋上と石塀を伝ってそのままぐるりと上を歩くことができる。

 石塀の外側は濠まで芝地だ。

 全領民を抱えて陸の孤島と化した城は、小高い丘の上に、北、メルカットを睨むように立っている。


 大広間に集まった皆にジンガが語った。

「窮屈だろうが、どうか我慢して欲しい。ルーサー王にレーニアを諦めてもらう大事な籠城戦だ。私たちはそう簡単にはこの島から追い出されないし、メルカットにもなる気はない、という意思表示だと思ってくれ。戦いは基本、屋上から矢で撃つことになる。その隊を組織しよう。

 中庭は、当分は安全を保てるはずだから、子供たちは遊んでもいい。ただ、庭には乳搾り用の牛と山羊、卵を取るための鶏などがいる。動物たちを驚かさないようにしてくれ。野菜畑になっているところもあるから、詳しいことは姫様から聞くように」

 子供たちから「はあい」と声が上がった。


 二時間後、メルカット軍はレーニア王城を取り囲んだ。

 すぐに済むと思っているのか、野営の準備も見えない。ルーサーの姿もそこにはなかった。メルカットの陸軍数隊がやってきただけのようだ。

 敵は城に向けて一斉に矢を放ったが、屋上まで届く者はいない。ハンスは、一応メルカット国民である弓矢の名手、アストールが参戦しないでいてくれることに感謝した。

 逆に屋上から撃ち下ろす、レーニアの矢は良く当たった。

 業を煮やして濠を泳ぎ渡ろうとするメルカット兵が出てきたが、屋上からの矢の的になっただけだった。


 中庭に(かくま)いきれないレーニアの家畜たちは、濠と城との間の芝地で草を()んでいるのだが、そのうち何頭かに矢が当たった。攻撃の合間を縫ってレーニア側は、その死体を城に引き摺りこみ、食料にすることにした。

 

 籠城最初の一週間を負傷者もなくゲーム感覚で過ごすと、もう聖燭台会議の前日となっていた。漁師二人とジンガ、ハンスの四人は城のワイン貯蔵庫の奥の階段をさらに下に降り、ダンジョンを抜けると南の岸壁にくり抜かれた鉄格子戸に出た。岩壁から浜に滑り降りたところにボートが三隻置いてある。大型船の修理をするために、船大工他、数名が毎日のように東の湾へ行き来するのに使っていたものだ。

 四人は東の湾で中型船に乗り込んだ。ハンス一人を最寄りのサリクトラの港で下ろし、三人はランサロードへ向かう。

 

 サリクトラの国境は、入国手続きは難しいが出国は楽だ。港の官吏に「メルカットに行く」と云えば、審査もせずに「メルカットへの船便はあっちだ」と指示された。その船はレーニアへの渡しが出ていたのと同じ港に着くのだから、便利なものだ。ハンスはまんまとメルカットへ上陸し、一路アストリーの森に向かった。


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