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王族に生まれてしまったら  作者: 陸 なるみ
第四章 海や陸でのメルカット戦争
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政治軍事は夜のいとなみ


 ――これから先どう乗りきろう?

 ハンスは好きな女の寝姿を横に、妙にさえわたる頭で考えていた。

 

 ルーサーはこんな小さなレーニア、上陸して城を囲めばたまりかねて姫を差し出すと思っている。メルカット軍はもうさっさと片付けて家族のもとに帰りたいと思っている。

 サリウはどうしているのだろう?

 フランキは静観していてくれるのか?

 パラスはどうだろう? この機にメルカットに攻め入ろうなんて思うヤツじゃない。民間代表が聖燭台に並ぶのは想像できない様子だったが。ルーサーにあって難しいこと云われて混乱してるだろうしな。

 ジャレッドは血気盛んにエール島のことを考えているのだろう。

 ランサロードは高みの見物か。ハイディが立太子して二ヶ月。まだ何もわからないだろうな。父上が動くわけもない。

 

 それにしても、だ。皆聖燭台会議で何を築こうとしていたかわかっているのだろうか?

 外敵には協力しても聖燭台同盟参加国同士の戦いには一歩も動けないというのか。集団安全保障とは何だ。オレが当事者でなければ聖燭台代表軍を組織して休戦監視にあたらせるだろう。内乱は短いほうがいい。休戦させて調停会議を開いたらどうだ。ピオニアが誰と結婚したいか、それだけの問題だろう? もちろん民間代表の国を認めるかどうかという問題もあるが。

 

 ルーサーの納まりがつくかどうかは微妙なところだ。

 しかし愚かな話だ。聖燭台同盟の考えを進めることができるのはルーサーかオレだ。十代の頃退屈な舞踏会で顔を合わせるたびに、ふたりで話していたことだ。そのふたりが揃って当事者なんだから。

 サリウはフランキが攻めてこない限り動かない。自国の益しか見ない男だ。

 パラスやジャレッドには想像もつかないだろう。

 

「これからどうなるの?」

 眠っていると思ったピオニアが訊いた。

「わからない。とりあえずは毎日二十一人体制で上陸ポイントを守る。港でみな追い返しちまいたいが、いずれは城を取り囲まれるだろう」

「そうしたら全滅?」

「はは、その時はフォントの出番だ。あいつは姫さんの知らないレーニア城を知っている」

「どういうこと?」


「レーニア城にはワインセラーの奥にダンジョンがある。南の岸壁にも、地下水路経由西の浜にも出られるようになっている」

「うそでしょ?」

「自分の先祖を侮っちゃいけない。フランキに攻められて手をこまねいていたわけじゃない」


「それをどうしてあなたが知っているの?」

「書斎に歴史書があるだろ? 八十年前の戦いでレーニア王は地下に潜んで難を逃れたと書いてある。それで心当たりを探ってみただけだ。西の浜や渡し船の港横の噴水池の水がどこから湧いているのか気になってて。フォントに訊いてみると、地面の中に水路があるっていうんだ。十一年前城の濠から水を抜いた時に両方の池が枯れたらしい。それでレナ川の水を、濠を通さずに西へ流す水路を掘ったという。その後この病気が蔓延しなかったのも水を分けたからだろう。水路を辿ればフォントだって、こっそりと姫さんの寝室に忍び込むことができるんだよ」

「そんな無礼者はハンスだけよ」

「フォントによれば、ルーサーが外海に回って船を壊しにこない限り、南から逃げ出せるんだ。西側は危ないにしても」


「わかったわ。もうひとつ気になることがあるの。一ヶ所からは一度に数人しか上陸できないけど、島のあちこちにボートを廻して一斉に上陸されたら?」

「ああ、今予想されるのは多くみて三ヶ所だけだ。ルーサーがおまえやサリウだったら最初からそうしてる。ジャレッドだったら島中に火矢を打ち込んで焼け野原にしてから上陸してくるさ。ルーサーがそういった作戦を使うまであと何日かかるかな」

「ルーサーは、戦争は得意じゃないのね」

「そうだな。軍人というより為政者なんだろう。好きな女の国だっていう遠慮もあるし」

「あなただったらどう攻める?」

「攻めるも何も、今やってる通りだ。ひとりで忍び込んできて姫さんを虜にする。身も心も。それでおしまい」

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