第九話 「幹部基地」
第九話 「幹部基地」
「ほら轟、これが例のブツだ。」
「おう、いつもサンキューな。良い資料になりそうだ。」
「・・・お前ら何してんだ?」
今日、村にいる戦士は全員酒場に集まれと命令が出たので零治はやって来たのだが、轟と見知らぬ人が闇の取引的なことをしていたのが目に入った。
見知らぬ人の容姿は、かなりの長身で髪が長めの男性。背中には薙刀を着けている。
「お、零治早いな。何って闇の取引だぞ。見てわからないか?」
「いや、そういうのいいから。もう一回聞くぞ。何をしていたんだ?」
「ったく、面白くない奴だな。
この前知り合いに情報屋がいるって言っただろ?それがこいつさ。新しい情報が入ったみたいだからそれをまとめた紙を貰っていたというわけだ。他にも郵便配達の仕事をしているから、他国からの手紙も一緒に貰ったんだ。」
「白城神影と言います。君は菊屋くんだったかな?はじめまして、君の名前は色々なところで聞いているよ。」
「あっ、ええと・・・菊屋零治です。は、はじめまして。」
ああ駄目だ、やっぱり初対面の人とは上手く喋られない。成長しないなあ俺。
しかし、この情報屋さんには少し質問したいことがあるんだ。試しに聞いてみるか。
「白城さんですよね。少し質問したいことがあるのですが・・・。」
「良いですよ、何でも聞いて。」
「そうですか、なら率直に言いますね。
どうやって情報を集めているのですか?こんな危険だらけの地域を通って各国を回って情報を集めるのは無理があると思います。未開拓地ばかりですし。
また、郵便についても方法が知りたいです。今は事件のせいで、電子メールが無ければ郵便局やポストも無い。こちらも無理があると思うんです。」
零治の質問に白城さんは硬直した。こんな質問が来るとは思っていなかったのだろう。
だが、確かに白城が言っている仕事は現在不可能に近い。この前も関西からの援軍がないと討伐できなかった狼エネミーの群れなんかもも出現した。事件から一年以上経っているというのに自分の村の周りすら完全に整備が出来ていない。こんな状況で全く無整備の地域を動き回れるのだろうか。関西の戦士たちが関東に来た道は、ある程度整備されていたが、世界のほとんどは完全なる無整備なのだ。
白城は硬直していたことに気づき、首を横に振って立て直した。
「すみませんが企業秘密ですね。深く考えると不可能なことを言っているんじゃないかと思われるかもしれません。ですが、今はあまり気にしないでくれるとありがたいです。」
「そうですか。」
零治はあまり質問の成果を手に入れられなかった。まあでもそんなにすぐに答えてくれるような内容じゃないか。そう自分に言い聞かせて今度は轟に質問した。
「なあ轟。ということは、この情報屋の内容について話すために戦士らを集めたのか?」
「それもだが、本題はそれじゃない。」
「え、じゃあ何について話すつもりなんだ?」
「あの遊園地についてだ。関西からの援軍もある今この時期が一番だと思うんだ。」
轟のその発言で零治の顔は急に険しくなった。
零治は二人が座っていた机に手を『バン!』と置き、険しい声で質問を繰り返した。
「轟、本当にいいのか?あそこは冗談にならないほど危険なんだぞ。もう一度考え直してほしい。」
「いや、俺はもう決めた。作戦も近頃始める予定だ。こうやってグズグズしている間に敵の進行は進んでいく。急かしたい訳ではないが、早く決行しないとこの村も危ない。」
轟の言い分もわかる。でもあそこの開拓には圧倒的に戦力不足だと思う。あいつがそこまで言うのなら止めないがまだやめておいた方がいいだろう。
そんな話をしていると、戦士たちも酒場にかなり集まってきたようだ。
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「どうも。今日は集まってくれてありがとう。今回集めた理由や方針については俺、品原轟とこの菊屋零治から説明させてもらう。」
その一言でその場にいた戦士たちは一斉に二人の方へ向いた。見てみたところ、狼エネミー討伐作戦に参加していた人がほとんどで、強者揃い。
「では、早速説明する。
俺たち関東の村、ミレルヴァはただただエネミーに抗ってきたわけではない。開拓の日々を重ね、ついに敵の幹部基地の一つを見つけたのだ。」
轟の言葉に、戦士たちは歓声をあげた。日本ではまだそういった敵の基地など、敵の明確な場所が分かっていなかった。この成果はあの事件についての大きな手掛かりになると予想できる。皆が喜ぶのも妥当だろう。
「はいはーい。それってどこにあるんだい?」
手を挙げながらそう言ったのは、零治の幼馴染みの海だ。横にいる花知咲さんと南優芽も同意見のようだ。
「ここから南に下りたところに有名な遊園地があるだろ?あそこは、裏で暴薬の研究をしていたらしい。」
「なるほどね、今度はそこに攻めにいくために、作戦を立てようと集めたわけだね。」
「そうだ。しかし大きな注意点がある。」
「どういうこと?」
その言葉を聞いた後、零治は少し息を整え、話し始めた。
「実は関西からの人たちが来る前、一回一人で行ってみたんだ。でも、目標の半分も行けなかったんだ。」
「えぇ~なんでなんでぇ~。」
「行き道の途中で青エネミーと遭遇したんだ。」
「なるほどね。そう言えば、狼エネミーを討伐しに行ったときに言ってたね。」
「そうだ。もちろん敵の基地の侵略はかなり高難易度だが、そこにたどり着くまでも高難易度というわけだ。」
「ねえ、零治。そんなところ行って大丈夫なの?僕、自信ないな。・・・。」
「それでもいずれは行かなければならない場所だ。関西からの戦士もいる今がいい機会だと践んだんだ。協力してくれるか?」
関西の戦士たちは顔を見合わせた。『剣王』の二つ名を持つ零治でも苦労するところに行くのは、やはり抵抗があるようだ。
「でもこの作戦に参加しなかったら、僕らがここに残っている理由が無いよね。よし、僕らも参加するよ。」
「本当か!?下手すれば生きてかえってこれないかもしれないぞ。」
「何言ってるんだよ零治。僕らは関西から関東まで、危険な道を歩いてきたんだよ。それくらいの覚悟はあるよ。」
「・・・そうか、ありがとうな。頼りにしてるぞ。」
「任せてよ!」
関西のリーダー、海の了承を得て作戦が決行されることになった。他のメンバーも乗り気なのだが、そう上手くいかないのが現実だった。
to be continued
人がまた一人増えましたね。
また今度、登場人物を整理した文章でも書きましょうか。