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Evening Rain  作者: てぇると
日常編
8/104

八話 Stormed’s

「何すんだ雨乃!」


「何すんだはこっちのセリフ、なんて事言ってんの!?」


いやー、言葉足らずなのは謝りますよ? 確かに俺が悪かった。いやちげぇな、こんな状況を作り出した月夜先輩が悪い、俺は悪くない。


「あのー?」


姉妹の一人が声を上げた。


「すまん、お前は夏華か? 冬華か?」


「夏華です。なぜ私達のことを知っているんですか? 二年の夕陽先輩」


表情を隠してニコリと笑いながらそう問いかけるが、警戒のオーラがヒシヒシと伝わってくる。てか、やっぱ俺って気づいたか。


「俺は─」


言いかけてやめた、雨乃が黙ってろばかりに軽く睨んで来る、短くため息をついて雨乃嬢にバトンタッチ。


「えっと、私は星川 雨乃。これは知ってるみたいだけど紅星 夕陽」


これって、物扱いですかそうですか。僕はものですかそうですか。


「私達も貴方達と同じ学校に通ってる、二年生」


「あぁ、雨乃先輩方でしたか。知ってますよ、夕陽先輩の近くに必ずいますもんね。それで? その先輩方が雁首揃えて何の御用で?」


雨乃は口調こそ丁寧なものの、なんか怖い。

つか、雁首揃えてって怖いよ、高校一年の女子が使うような単語じゃねぇよおー。


「お前らを保護しにきた」


「頼んでいません」


「そりゃそうだろ、今日初めて喋ったんだし」


「……屁理屈ですね」


「屁を取りゃ理屈だ」


俺の暴論にやはりイラッときたのか、軽い睨み合いが続く。屁を取りゃ理屈だってすんごい暴論だよなぁと我ながら思う。


「お前ら不良グループに喧嘩売ったんだろ? 顔割れてし「双子狩り」なるものが発生してるらしい。このままじゃBad End間違いなしだぞ?」


「それはご親切にどうも。ですが大丈夫です、私達には特別な『能力』がありますから」


その言葉を聞いた瞬間、無意識に笑いが零れた。

能力? 夢見てんじゃねぇぞ小娘共。


「能力? それがか? はっ、そんなものは能力じゃねぇよ」


「……何か知ってるんですか? 夕陽先輩」


その時、初めて冬華の方が声を上げた。夏華に比べ冬華の方は俺に対しての警戒の色は薄い、まだ話し合いの余地はある。


「知ってるも何も、俺達二人もお前らと同じだよ。お前ら2人の言う能力者()ってやつだよ」


雨乃が俺の袖を掴み止めるが、それを振りほどいて前に進む。

この役は俺がやる、人の事煽るの得意だし。適材適所だ、この役は雨乃には難しい。


「それは能力じゃない。それはお前らの心を蝕む、体を蝕む。正常な判断を損なわせる」


俺の態度にムカついたのか、夏華が俺をキッと睨みつける。冬華の方は良く表情が読み取れない顔をしているが、目だけは俺を離さないでいた。

よし、作戦成功。


「私達が病気? 冗談ですよね?」


「冗談じゃないさ、お前らのそれは病気だ。自覚症状がないみたいだから教えてやるけど、女子高校生二人だけで不良グループに喧嘩を売ったりすることが正常な判断だとでも?」


「私達はゴミ掃除をしようとしただけです」


「ゴミ? 俺からしたらお前らの方がゴミに見えるぞ」


あと少し、あと少しで食いつく。早く使えよ、絶対的だと思ってるその『能力』って奴を。


「ッッッ! 冬華」


掛かった、思わず自分でも分かるぐらいに口元が綻びる

その直後、バイクが木っ端微塵に割れた。バイクだけじゃない、ガードレールもカーブミラーも地面ですらも割れたのだ。凄まじい轟音を奏ながら。

こりゃ、来るって知らずに受けてたらチビってたな、間違いない。


「……で? そんなもんか?」


少しばかり心臓の鼓動は早いが、平静を装った声でそう言った。


「な、なんでビビらないんですか!?」


冬華が初めて声を上げた、余程能力とやらに自信があったのだろう。身動ぎ一つせずニヤニヤと笑う俺に驚いている。

はん! お前らの起こした現象なんかより、生理中でイライラしてる雨乃の方が数百倍怖いわ!


「雨乃…すまん、読んでくれ」


不機嫌そうに座っていた雨乃が溜息と共に口を開いた。


「まずは夏華ちゃん「なんで? なんで驚かないの!?」次に冬華ちゃん「意味がわからない、こんな人達今まで居なかった」次に夕陽「あ、今の俺最高にカッコイイな。うん」って感じかな」


「雨乃さん!? 俺の心までは読まなくていいんですよ!?」


まじで何してくれっちゃてんの!? せっかく精一杯カッコつけたのに台無しじゃないか!


「なんで私達の思ったことが分かるんですか…?」


「ハッタリじゃないよ? 私もまぁ、貴方達の言う『能力』ってものを持っててね、私は人の心が読める」


「私達と同じ…?」


「まぁ、一応は。そこのカッコつけもね」


「分かってもらえたか?」


「……先輩方が私達と同じってことは理解しました。ですが、私達が病気って言うのは納得できません」


……説明してないからね。


「お前らの『病気』は…なんだったけ?」


あれ、ものを壊して治すんだったけ? でも、雨乃が違うって言ってた気が…。などと考えていると、俺の頭をポンッと雨乃が叩いた。


「片方が虚像を見せる、もう片方が音を響かせる…よ。月夜先輩はそう言ってた」


「とゆう訳だいいか? それは『能力』じゃなくて『病気』なんだ、俺達は今日一日不良グループからお前らを保護するついでに説教タレに来たんだ」


コホンっと咳払いをして、暁姉妹の頭を軽く叩く。


「バカみてぇにソレを乱用するな。俺や雨乃のとは違って、それは誰かを「殺しちまえる」って事をしっかり頭に入れとけ」


俺や雨乃のように自分達にだけ作用するのなら別にいい。

だが、暁姉妹の能力は誰かを殺せる可能性があるのだ。リーダー格の女が不登校になったのがいい例だ、精神的にダメージを与えた。学校に行けなくなるほどの『恐怖』を体に心に刻み込んだ。


「お前らの話は聞いた。不良グループに喧嘩売ったり、いじめっ子の女子をソレで不登校にしたりと…やり方さえ間違えれば誰かしら死んでたかもしれない。いいか? お前らの思考回路は麻痺してるんだ『能力』なんて呼んでるソレは判断力を奪うんだよ」


暁姉妹は黙って俺の話を聞いている。分かってくれればいいんだが。


「自分に酔うのも大概にしろ、『能力』なんて言ってるが俺からすると痛々しいぞ。選ばれた人間なんて思ってんじゃねぇ、俺達は選ばれてなんかいないんだ」


その言葉が効いたのか、下を向いて黙る。

その時だった…大量のバイクの音が聞こえたのは。


「……冗談だろ?」


直感的にその音を響かせる連中が分かってしまった。

嫌な汗が額を伝う、あぁちくしょう!


「逃げるぞッ! って、マジかよ」


時すでに遅し、覆水盆に帰らず、そんな言葉が頭の中でリピートする、既に囲まれていた。


「冗談でしょ」


暁姉妹に報復をしようとしている不良グループ。何人いるんだコイツら。


「あー、お兄さん達。お話の所悪いんだけどついてきてもらってイイかなぁ?」


極めてガラの悪いリーダー格の男がそう言ってニヤリ笑った。


※※※※※※※※※※※※※※※


場所は変わって近くの廃墟、逃げようかとも思ったが完全に逃げ道を塞がれていたため、大人しくついて行くしかない。


「それで? 俺達が用があるのはその二人なんだわ、お兄さんとお姉さんは帰ってくんない?」


「連れてきたのアンタらだろうが。あと、お兄さんって言ってるけど、アンタ達の方が年上だろう? てか、ガキの悪戯だと思って見逃してくんないっすかね? このアホ共も充分反省してますし」


なんとか、交渉に持って行ければ勝機はある。てか、何人いんだコイツらさっきより数増えてるし。


「そうはいかないんだよねぇ。怪我人まで出てるんだわコッチは、バイクに乗ってたヤツらが驚いて三人ほど病院送り」


その言葉に二人が固まる。こいつらはきっと怪我人が出てるなんて思いもしなかったんだろう、ちょっと驚かす程度の軽い気持ちでやってたんだ、その証拠に冬華と夏華の顔は青ざめている。


リーダー格の周りは二人の反応を見て口々に「まとめてボコせ」だとか至極物騒な事を言ってる。


「……アンタらこの人数で四人をボコボコにすんのは、ちっとばっか卑怯じゃない?」


「じゃあどうする? 俺とお前でタイマンでもやる? 俺はそれでいいけど」


「お兄さん決闘罪って知ってる? それ以前に俺って喧嘩弱いんですよ。だから」


一か八か、俺の土俵に引きずり込んで賭けに出るしかない。


「アンタが俺を十発殴ってくださいよ。俺は何の抵抗もしない、俺が一言でも「痛い」「やめてくれ」だとか言ったらアンタの勝ち。俺達を殺そうが犯そうが文句は言いません」


その言葉に暁姉妹の顔が青ざめる。雨乃はいつも通り……いや、いつもより不機嫌そうな顔で俺を見ている。


「その代わり、俺がアンタの十発耐えきったらチャラにしてくれません? 今後一切暁姉妹や俺達には手出ししない。悪い条件じゃないですよね?」


「……お前、正気か?」


「正気ですよ。正気じゃなかったらこんな提案しませんって」


リーダー格の男は、少し考えるとニヤリと笑った。

この勝負、俺の勝ちだ。


「いいぜ気に入ったよ。そのルールで行こう。お前が勝ったら二度と手出ししない」


「ありがとうございます」


俺はジャケットを雨乃に預ける。あー、嫌だなぁ。これ明日死ぬ程痛いやつだろ。


「……服頼んだ」


南雲に連絡しろ。ジャケットのポケットにスマホが入ってる、パスワードは俺の誕生日だ、俺が出来るだけ注目集めるからその間に頼む。


「了解」


よし、うまく伝わったみたいだ。後は龍太が来るまでひたすら粘るだけ。


「ほんとにバカね。はぁ、まったく」


「そういうなって」


上着を脱いでシャツ一枚になる。あー、本当にマジめんどくさい。


「待ってください! そんな馬鹿な賭け」


「そうですよ、大体先輩にはそこまでしてもらう理由が」


あぁ!? この状況になってから言っても遅せぇよ。本当に面倒臭い、この姉妹。


「んじゃなに? お前らボコボコにされてもいいの? いくらなんでもこの人数から逃げ切るのは無理だろ。てか、お前ら見捨てて逃げたら後味悪いにも程があるだろが。それに」


ちらっと雨乃を見て、口を開いた。


「ここで逃げ出すような男なら、雨乃は二度と口聞いてくれないだろうしな」


それは辛い、雨乃に口聞いてもらえないのは何としても避けねばなるまい。惚れた弱みだ。


「すんませんね、お待たせして」


「いやー、いいなお前。気に入ったよ、なかなか度胸あるじゃねぇか」


「そりゃどうも」


死ぬほどやりたくねぇに決まってんだろハゲ!


「じゃあ行くぞ? おい、その兄ちゃん抑えてろ」


「心配しなくても逃げませんよ」


「形式上だよ、じゃないと他の連中が納得しない。まぁ、あんなイカれた提案するような奴が逃げるとは思えねぇけどな」


俺の腕に手を回し屈強な男が俺の事を羽交い締めにする。これで逃げる事も衝撃を逸らすことも不可能だろう。


「じゃあ、行くぞ。あぁ、言ってなかったけど、俺ってボクシングやら齧ってるんだわ」


「ははっ、マジかよ」


そんな、最悪な宣言と共に俺の腹に衝撃が走った。

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