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Evening Rain  作者: てぇると
GW編

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二十六話 Today is Enjoyed


「という訳で! 大型ショッピングモールですよ、ゆー先輩!」


何がという訳だ……と夏華の頭に鉄槌を打ちつつ、当たりを見回す。

見渡す限りの人、人、人。


「先輩、先輩!」


「はいはい」


「ゆー先輩! ゆー先輩!」


「だぁー! 分かってるって!」


両脇に犬(小型犬)のような後輩とその光景を微笑んで見守る雨乃。

現在位置、暁姉妹の街にある大型ショッピングモール。雑貨から家具から服からゲームから何から何まで揃っていると謳っている人地獄の場所にいる。


「んで、何買うの?」


「「ん?」」


「え? なんで首傾げてんの?」


極々当たり前の質問をしたつもりだが、共有している常識が違うのだろうか? こんな大型ショッピングモールに来たんだから何か買うのだろうと思ったのだが。


「いや、遊びに来ただけですよ? ゆー先輩?」


「なんか買うんじゃねぇの?」


「いいのがあったら、そりゃ買いますけど。ねっ、冬華」


「そうだね」


どうでもいいけどお前ら姉妹仲いいよなぁ。


「夕陽、邪魔になってるわよ」


右端から服を引っ張られ、強制的に移動させられる。振り返れば通行の邪魔になっていたようだ。


「さんくす」


「ボケっと突っ立てるからそうなるのよ」


「うーす」


適当言いながら、暁姉妹にも動くように促す。

さーて、さしたる目的もない今、何処から回るか。


「ゲーセン?」


「「「無いわー」」」


女子共にそう否定されました。だってゲーセンぐらいしか行くとこないじゃん!? 瑛叶と遊ぶ時はゲーセン行くぞ!?


「女子と男子は違うのよ。女心が分かってないわね」


勝ち誇った笑みを浮かべる雨乃にイラッとしつつも、適当にその辺の店を見回す。


……あ、あの女の人めっちゃ胸デカイ、そして顔可愛い。


「死ね」


吐き捨てるような言葉とともに、尻に蹴りが飛んでくる。


「おま! 公衆の面前でなんて事を!」


「貧乳で悪かったわね!」


「誰もそんなこと言ってねぇよな!? てか、大きいの見たら目が行くのは自然の摂理だろ!?」


「死んでください」


違う方向から蹴りが飛んできた。

冬華ちゃん? ちょっと暴力的じゃない!?


「てぇい!」


膝裏にも蹴りが飛んできた。今度は夏華だ。


「何しやがる、膝カックンじゃねえかよ」


「え? なんかノリ的に」


「ノリ的に先輩の膝裏を蹴るんじゃねぇ!」


「まぁまぁ、ほーら行きますよー」


グイグイと俺よ両袖を夏華と冬華が引っ張りながら進む。

なーんか、俺の扱いが雑なんだよなぁ。


「今に始まった事じゃないでしょ」


鼻で笑いながら雨乃がそう言った。

お前あれだぞ、俺にそんなに冷たい態度とってるからいつまで経っても貧乳なんだぞ。俺知ってんだからな、ゴミの日に燃えるゴミ整理してたらバストアップ下着のゴミが出てきたの知ってんだからな。


「へ? な、え!? ほんとに!?」


「yes」


「……よし死のう」


「ごめん、ワザと見たんじゃないんだよ? ただね? 雨乃さんがゴミ整理してって言ったから整理してたら出てきたのであってね?」


「ゆー先輩、何の話ですか?」


夏華が首をかしげながら、俺達の話に興味津々といった感じで問いかける。なので、先輩として答えてあげるのだ。


「雨乃のゴミの中からバストあぁぁぁあ、痛い痛い痛い!」


それダメなやつだから、抓ったら行けないとこ抓ってるから!


「言ったら殺す、言ったら殺す、言ったら殺す!」


「ばっ、お前!? 分かった! 言わないから目に光を灯せ!」


「夕陽を殺して私も死ぬ」


「まじ怖い、ほんとに辞めて!」


最近、殺害予告多いな。


「あっ、先輩! 先輩! 犬ですよ!」


グイッと力強く冬華の方に引っ張られ、顔を上げた先はペットショップ。犬のケージが並んでいる。


「あ、チワワ。こっちのはパクですよね!」


「犬好きなの?」


「猫と同じくらい好きです!」


「へぇ、動物が好きなんだなぁ」


すごーい、動物が好きなフレンズなんだね!


「プッ!」


後ろの方で雨乃が噴き出した。


「それにしても小さいな」


「これは赤ちゃんの犬ですからね! 先輩はなんの動物が好きなんですか?」


動物? 好きな動物かぁ。


「……強いて言うならクラゲ?」


「「「クラゲ?」」」


おぉ、雨乃も知らなかったのか。


「クラゲってさ、見てる分には宝石みたいで綺麗なんだよ、海の月って書くしな。虹色に光るクラゲなんかもいるんだぜ?」


子供の頃、兄貴と姉貴達と見に行った水族館で一目見て綺麗だと思い、そこから好きになった。

海にプカプカと不規則にたゆたうクラゲは見ていて穏やかな気持ちになる、そして少しだけ


「自分に似てると思った?」


その先の独白は雨乃が拾って補完した。


「あぁ」


「そうね、宙ぶらりんな所がそっくり」


「失敬な。俺はちゃんと地に足つけてるっての」


「「「ないない」」」


先程から俺の事を執拗に傷つけてくるのは何故なの? 先輩泣くよ? 先輩最近傷つく事が多発しててナイーブなんだよ? 誰か優しくしてッッッ!


「夏華はなんの動物が好きなんだ?」


「ウーパールーパー?」


「渋いな」


「あのキモ可愛い所が好きなんですよ。あ、先輩も好きですよ?」


「その言葉は大変嬉しいんだがよ、キモ可愛いの後に言葉を続けるから俺がキモ可愛いみたいになってるんだが?」


「分かりました、キモいです!」


「可愛いを付けろ可愛いを!」


「自分のことが可愛いと?」


「いやだ、この後輩めんどくせぇ」


夏華の頭にアイアンクローをかましながら冬華と雨乃の姿を探す。


「おーい、行くぞー」


「ちょ、ゆー先輩ギブ!」


「てめぇはもっちっと苦しめぇ」


馬鹿なことをやりつつ、次に次にと回っていく。




「ソフトクリーム食べましょうよ!」


ソフトクリームをみて突っ走る夏華と全員分奢らされる俺。




「先輩! 先輩! 可愛くないですかね、この服!」


自分の身体の前に服を合わせてニコニコと可愛く笑う冬華にホッコリとする。その服が気に入ったのか買おうとしていた冬華は値札を見て悲しそうな顔で棚に戻していた。





「夕陽、聞いてみて」


片方だけ自分にイヤホンをさして、何気なくもう片方のイヤホンを俺の耳に付ける。音質がどうのこうの言っていたが、正直いってそんな事が頭に入らないくらいにはドキッとしていた。

雨乃さん、少しお高めなイヤホンご購入。






「おらぁー! 死ね、夏華!」


「うわぁ! ゆー先輩、背後からなんて、なんと卑怯な! 冬華、あー先輩! 標的はゆー先輩です!」


「「えい」」


「なんで私にこんなに甲羅が!? あ、ゆー先輩が1位だ!?」


「格が違うのだよ、格が。百年後に出直してこいや」


ゲーセンにあるカーレースゲームで四人で盛り上がる。

ふふふ、俺が1位だ! あーあ! 勝っつて気持ちがいい! 月夜先輩達とやる時は必ず月夜先輩が1位だからイラつくんだよなぁ。

今日は俺が1位なので文句はない。





「プリクラ撮りましょうよ、先輩」


「ほらほら、あー先輩も近くによって」


「おいばか、引っ張んな冬華」


「夏華!? どさくさに紛れて何処触って! ひゃん!」


「おい夏華、何処触ったか詳しく」


「フンッ!」


「痛い! 冬華、足踏んでるって!」


久しぶりにプリクラを撮った。

前に撮ったのは幼馴染み連中で一回だけだったよな。


「あ、スマホに写真落とせるらしいですね!」


「今時のプリクラってすげぇのな」


男女比1:3と言うなんともアレな感じで撮ったプリクラだが、以外に綺麗に撮れている。

元がいいからか、プリクラの補正がかかると全員ガチで美人だな。

ここだけ切り取ると、女三人侍らせてるクズ野郎みたいで面白いな。いや、まぁ事実っちゃ事実な気もするが。







「あー、遊んだ」


抹茶ラテとかいう、すんごく甘い飲み物を啜りながら俺はそう呟いた。現在地はショッピングモール内にあるお洒落志向なカフェ。

時刻は四時半、あれから三時間半が経過したのである。


服にゲーセンにスマホショップ、雑貨屋に本屋に……と四人で回りまくった。流石の双子もヘトヘトのようで、ぼーっと椅子の背もたれにもたれ掛かっている。


「楽しかったぁ」


冬華がそう呟いた。


「うん、楽しかったねぇ」


続けて夏華も頷きながらそう言った。

二人共満足気で幸せそうな顔をしている、少しばかり疲れたがここまで楽しんでくれたのならば良かったと思うよ。


「また来るか、今度は別の所にでも」


「「はい!」」


勢いよく、二人が返事をした。


「ふふ、夕陽ってばたまーに面倒見がいいわよね?」


「俺はいつだって、面倒見がいいんだぞ」


そう言って笑う。







※※※※※※※※※※※※※※※




ドーナツの列に並ぶ。

なんでも、最後に一件だけ女性陣だけで見ておきたい店があるらしい、ドーナツでも食べてきたら? と言われ、1人で食べに来た所存である。


「何見に行くんだろう、アイツら」


まぁ、男は来んなって時点である程度お察しだが。

それにしても、列の最前列が騒がしい。クレーマーでもいやがるのか? 少しばかり聞き耳を立てる。


「いや、ちょっと待ってください!」


どうやら財布が見当たらない女の子がいるらしい。

あー、可哀想に。流石の俺でも知らない奴に金を貸してやるほど器量は広くない。


「おい、早くしろよ」


女の子の後ろの見た感じ強面風の男が苛立ち混じりに急かす。女の子は焦った様子で財布を探している、今にも泣き出しそうな雰囲気で。

なんか、普通に横顔だけだと可愛いな、フードすっぷりかぶってるから良く見えないが。


「すみません! ちょっとまってください。あるはずなんすよ!」


ん? おい待て、この声どっかで。

その間も、結構な剣幕で強面の男が女の子に迫る。

そして、何かの弾みに少女のフードが外れる。中から現れた髪色は黒と白。


「だー! もう!」


列を飛ばして、自分のトレイを彼女のトレイの近くに並べる。


「へ?」


間抜けな声とともに、俺を見上げる。


「すみません、こいつの連れです。全部で幾らですかね?」


「980円です」


「んじゃ、1000円からで」


千円札を取り出して、店員さんに渡してお釣りを受け取り。素早く空いていた席に自分の分と彼女の分のトレイを並べる。


「そんで? なーんでテメェがここにいるんだ」


目の前には昨日とは打って変わってオロオロとして、涙をためる自称黒幕、晃陽だった。


「あ、ありがとうございます」


以外なところで、昨日のフラグを回収してしまった。まぁ、回れ右はしなかったけどな。

かくして、昨日とは形勢逆転的な話し合いを始めようと思う。




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