異世界屋プログラマ開店
異界屋プログラマー店内は人でごった返している。それはもう人がいっぱいで、この街、こんなに人いたのという賑わいだ。
そんな中、俺は一人で客をさばいている。
「カレーはどこだ!」
「我にカレーを」
「カレーこそ正義」
いっぱいの人がカレー、カレーと騒いでいる。
俺は、一人で客をさばいている。
◇
日本で商品を仕入れた俺は会社近くのいつもの神社に行き、お祈りをした。そして――。
「帰ってきたぜー。異世界」
いつものように異世界に戻ってきた。
ビルジャングルはなく、空気はすがすがしい。
やっほーい、という感じである。
商品がたくさんぎゅーぎゅーに詰められた段ボールを俺は両手でしっかりと前に持って、店に向かう。そんな姿が珍しいのか行く人行く人がジーと見てくる。
うっしょい、うっしょい。うっしょい。うっしょい。ジー。ジー。
うっしょい、うっしょい。うっしょい。うっしょい。ジー。ジー。
しばらくすると、店に到着した。
「よーい、しょ」
店に到着すると俺は段ボールを床に置いた。じつに重たかった。距離はそんなにないが、いっぱいダンボールに商品を詰め込んだので、もってくるのに一苦労だ。次からは、もうちょっと楽な方法をなんか考えよう。
よ~~~し。商品を並べるぞ。
明日の開店に向け、俺は商品を並べる。
食品を並べる。カレー、お菓子、缶詰などいろいろと商品棚に並べていく。
日用品を並べる。ジャンプ―、リンス、石鹸、歯磨き、歯磨き粉などいろいろと商品棚に並べていく。
その他いろいろならべる。ルービックキューブ、知恵の輪、パズルなどいろいろと商品棚に並べていく。
ならべーる。
ならべ~~~る。
並べ終わ~~~る。
小~~~~~~休止。
俺が小休止しているとバタンと店のドアが開き、巫女ちゃんがやってきた。なんだか荷物はたくさん抱えている。
「どうしたの、イナリさん」
「どうしたのじゃないわい。神社の新しい巫女を見つけて、よろしくしてきたのじゃ。だから、こっちにきたのじゃ」
巫女ちゃんは抱えていた荷物を床に置き、そう説明してきた。なんだとー。早すぎる。朝、店を見つけたと報告したばかりなのに、もう、新しい巫女を見つけた? どうやって見つけた。そんなんでいいのかー。
「お主。わしの部屋はどこじゃー」
キョロキョロとあたりを眺めていたかと思うと、巫女ちゃんは不意にそんなことを叫んだ。
「え? イナリさんの部屋? 店の隣にある社の前とか?」
巫女ちゃんがさも当たり前のように部屋を要求してきたので、ちょっといじわるを言ってみる。
「ぬー。何をいっておるのじゃー。いやなら、出ていくのじゃー。出て行って、ここの店はブラックじゃーと言いふらすのじゃー」
ほっぺたをぷくっーとふくらまして巫女ちゃんはやべーことを言いだす。彼女に出ていかれては店の許可がなくなる(少なくとも一年後以降やばい)し、変なうわさを流されるのも困る。
くそがー。でも、やばい。ここは巫女ちゃんのごきげんをとらねば。
俺は段ボールの中をごそごそしながら、巫女ちゃんにおべっかを使う。
「嘘だよ。嘘に決まってるでしょ。部屋は用意してあるし、ほら、稲荷ずしももってきたし」
段ボールの中から稲荷ずしを見つけて、巫女ちゃんに手渡す。伝家の宝刀「稲荷ズシ」―普通の稲荷ずし。効果:巫女ちゃんの好感度を100にする―をおみまいだー。
「これはイナリズシ。ふくく。それに、部屋も用意してあると。それを早くいうのじゃー。勘違いしたのじゃー 」
巫女ちゃん、陥落。
それから、巫女ちゃんを2階にある部屋に案内して、共同ルームみたいなところで、稲荷ずしを一緒に食べた。
で、一生に食事しているときにふと疑問に感じたことを聞いてみた。
「ところで、巫女ちゃんって店の手伝いとかもしてくれるの?」
「ふむ、もちろん! そのためにわしはここにおるのじゃー」
おや、一安心。まだ、店員を雇ってないので一人で対応できるかどうか不安だった。でも、かといって、最初からお客さんが来るかわからなかったから、店員を雇うには気がひけた。そんなところに、巫女ちゃんのこの言葉。商家つきの巫女をやるだけではないらしい。
でも、――。
「そうなの? よかった」
「ふむ。そうじゃー。店のために一生懸命祈るのじゃー。一生懸命祈って、店に貢献するのじゃー」
「そんなこったろーと思いましたよー」
俺はだらんと体中の力が抜けてしまった。
ある意味、予想はできたが、現実に起こるとこうも力が抜けるのか・・・・・・。
明日はだいじょーぶかー?
てんてん。
◇
さて、話は冒頭に戻って――。
「カレーをくれー」
「カレーはどこだ―」
「買い占めてやるー」
「なんだとー。こらー」
店内はカレーを求めるお客さんでいっぱい。
でも、俺はいっぱいいっぱい。
くそー。巫女ちゃんめー。
カレーを購入していくお客さんを俺はさばく。
さばく。さばく。
さばきまくる。
でも、なかなか終わらない。
見ていると、ほとんどのお客さんがカレーだけを購入していく。
で、たま~~~に、カレーをメインに他のものを買っていく人がいる。
そんな感じで、閉店までどとーの時間を過ごした。
最後のお客さんを送り出した後、俺は床にばた~んと倒れこんだ。
だいじょーぶ、じゃなかった。
つかれた。つかれた。疲れ果てた。燃え尽きてしまったー。
床に倒れこんだ俺は天井を眺めながら考えた。
やばい、これは早急に店員を確保しないと。
もしかしたら、今は開店ブースターがかかってお客さんが多いのかもしれないけど、それにしても、俺には仕入れもあるし・・・・・・。
よ~~~し。
店員を募集するぞー。