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開店準備 パート2

 店を手に入れた俺は神社に戻り、巫女ちゃんにそのことを伝えた。


 そして、翌日。

 「早速なのじゃ。さっそく、この神社の巫女の代わりを探して、すぐにそっちに移るのじゃ」

 そう言うと、巫女ちゃんはすたこらさっさーとどこかへ消えてしまった。やはり、せっかち。せっかちの塊のようなけもみみ獣人である。


 巫女ちゃんがいなくなってから、このじゃらじゃらといい音色のする貨幣をどう日本円にしようかと、考えに考えた。

 フーム。ふむ、ふむ。

 フーム。ふむ、ふむ。フーム。ふむ、ふむ。

 グー。

 はっ、いけない、立ったまま寝てしまっていた。

 

 うーん。そうだ。とりあえず、このじゃらじゃらとした貨幣を両替しよう。

 確か、日本での銀の価格がグラム当たり60円くらい。金は、グラム当たり4000円くらい。

 で、あと、2プラチナ貨+4大金貨くらいお金が余っているから、銀貨だと24000枚に金貨だと240枚になる。

 金の方が高いけど、銀貨は枚数が多いから、・・・・・・。

 いや、もう決まっている。金貨だ。金貨に両替だ。24000枚なんてメンド―すぎる。


 よーし。両替にいくぞー。この世に両替商なるものがいるかは不明だが、いや、いるはずだ。こんなにじゃらじゃら持ってられない。いなきゃ皆こまる。だから、いるはず。うむ。

 両替ショー、両替ショー。どこかな。

 りょー替商どこかなー。

 両替商、両替商と俺はその辺を歩き回る。

 

 しばらく、その辺を歩き回っていると両替商らしき店を発見する。

 文字は読めないけど、貨幣っぽい円形の絵が看板に描いてある。

 ここに違いないと思い、ガチャンと扉を開けて俺は店の中に踏み入った。


 「すいませーん。ここで両替してますか?」

 「はいはい、両替ですね。やっておりますとも、はい」

 俺が店に入ると、なんだか緑いろのいかつい顔をした化け物っぽいのが両手を擦り合わせつつやってきた。にこにことやってきた。

 俺はびっくりしてきゃーとなってしまう。おそわれるー。

 「おや、お客様、ゴブリンは初めてでらっしゃいますか、はい」

 なれたようにそのゴブリンとかいうやつは尋ねてくる。にこにこと尋ねてくる。

 

 「ご、ゴブリンですか? 初めてですね」

 びっくり、ゴブリンという存在はファンタジーでおなじみだが、この様子を見るにモンスターではないらしい。

 「そうですか、そうですか。初めてで。それなら先ほどの反応も理解できます。はい」

 そのゴブリンはうんうんとうなずいている。にこにことうなずいている。よかったー。モンスターどころかなかなかにできた人らしい。

 

 「それで、両替ということでしたが?」

 「ええ、銀貨や銅貨がじゃらじゃらとかさばるので金貨にしてもらいたいのです」

 そういって、俺はカウンターの上にじゃらんと袋を置く。じゃらん、じゃらん、いくつか袋を置く。


 「はいはい。分かりました。金貨ですね。ちょっと、お待ちください。はい」

 ゴブリンはそういうと、じゃらんじゃらんと袋から貨幣を出して、いろいろと調べ始めた。

 なんか、いろいろ調べている。

 

 調査チュー。

 ・・・・・・・・・。

 

 「お待たせいたしました。はい」

 にこにこと両手をすりすりしながらゴブリンが言った。どうやら、調査が終了したようだ。


 「全部で金貨240枚になります。手数料を6枚をいただきますから234枚お渡しします。はい」

 ゴブリンは、にこにこと金貨の入った袋を手渡してきた。

 「はい、確かに」


 てって、レッテ、れー。

 俺は、金貨234枚を手に入れた。

 そして、ゴブリンに別れを告げて、店を後にした。


 ◇

 いつものように俺は神社でお祈りをして、辞めた会社近くの神社にやってきた。

 

 ふむ。来てしまったか・・・・・・。

 なんだか、異世界に行ってこっちに来ると、こっちの環境にびっくりしてしまう。

 人が住む場所じゃないよ。本当に。

 コンクリートジャングルに鼻をつくようににおう排気ガスの匂い。

 あー、いやだ。いやだ。早くあっちに戻りたいな。


 俺は金貨を手に金券ショップを探すことにした。確か? それでよかったはずだ。

 昔、金券ショップの店員がテレビ番組で金とか銀を買っていた気がする。

 

 金券ショップはどこかな。金券ショップはどこかな。

 金券ショップはどこかな。

 おや、あれではないのか? 店の看板に「金券ショップ 金、銀買い取ります」と書かれている。

 

 見つけた金券ショップに意気揚々と乗り込んだけど、うまくいかなかった。

 こんな金貨、データベースに乗ってないとか、偽金じゃないでしょーねとか、言われた。

 俺はやばいと思い、店を飛び出した。危うく、お縄になりそうだった。

 

 その後も、この手の金券ショップなど金貨の買い取りを行っている店を何件かまわったけど、全滅だった。警察にお縄になって留置場行きでなかったことが奇跡のようだ。


 だが、天は俺を見捨てなかったようだ。

 案外うまくいかないものだなー、と俺がとぼとぼと道を歩いているとき、背後から何者かが近づいてくる。

 「待つアル。お兄さん待つアルよー」

 アル? だと。何だか、怪しさを覚えながら、俺は振り向いた。

 そこには中華服を着たきれいな女の子がいた。


 「なんですか?」

 「いい話あるよーアル。さっきから見てたアルけど、お兄さん、金貨を両替したいアルね?」

 「そうだけど」

 ひえー、ストーキングガール?


 「それなら、あてがあるアル。ついてくるアル」

 「えー。ちょっと待ってよ。怪しすぎるよ」

 怪しすぎる。いきなり話しかけてきたと思えば、ストーキングガールでついてこいだと。ストーキングガールをストーキングしろだと。怪しいと思わないやつはいない。

 「怪しくないアル。これでもミーは東大の学生アル」

 アルっ子は、そう言うと、財布から学生証らしいものを取り出し、こっちに見せてきた。


 「こっ、こっ、これは。これは伝説の・・・・・・。ついていくよ」

 一応、俺も地方の弱小大学を出た身分。アルっ子が提示してきた学生証を見て、ついていくことに決める。くそー、くそー。久々に味わったぜ、この感覚。

  

 アルっ子についていくと、なんだか古物商らしき店に案内される。

 「ここ、アル。ここはミーのパーパの店アルね。ついてくるアル」

 アルっ子が店の中に入ったので、俺も後に続く。


 店内にはショーケースが並べられており、その中にいろいろな古物が置いてあった。で、店のカウンターの奥に中華服を着て丸いサングラスをかけたでっぷりしたおっさんがいた。

 「パーパ、お客さんアルー。金貨の両替アルー」

 「あいやー。金貨の両替ねー。お客さんついてるねー。今、高価格買い取り期間中ねー。金貨出すねー」

 

 Mr.あいやーは、俺から受け取った金貨をルーペを目にはめてじっくりと眺めた。先ほどまでとは打って変わって、真剣なまなざしである。


 「あいやー。グラムあたり1000円で買い取るよー」

 「グラムあたり1000円? ということは、一枚・・・・・・」

 「1万円よ」

 「ということは・・・・・・?」

 「全部で、234万円ね」

 Mr.あいやーはぶっぱなす。


 おそらく、金の交換比率や手数料の関係で、だいぶ目減りはしているが、じゅーぶんである。仕入れ値から考えるとじゅーぶんぶっとんでいる。

 にやにやが止まらない。

 にやにや、にやにや。にやにや、にやにや。

 

 「あいやー。何、にやにやしてるね。これでも、ぼっているね。マゾね?」

 「失礼な。なかなかに儲けたからにやにやしてただけですよ」

 

 「あいやー。で、これでいいかねー」

 「それでお願いします」

 「商談成立ねー」

 俺とMr.あいやーはがっしりと握手を交わした。


 「また、くるアル。待ってるアル」

 「あいやー。待たねー」

 アルっ子とMr.あいやーに見送られて俺はその店を後にした。


 ◇

 その足で俺は神社近くのショッピングセンターによって、いろいろなものを買い込んでいく。

 稲荷ずし、カレー、お菓子に缶詰などの食料品に、シャンプー、リンス、石鹸などの日用品に、その他さまざまなものをかごにぶちこんでいく。さいわい、お金の心配をする必要はないので目についたものを片っ端からぶちこんでいく。

 

 かごに商品を大量にぶち込みすぎてレジ袋で持ち帰れなかったので、俺は店員さんに頼み込んで段ボールを分けてもらい、商品を持ち帰ることにした。


 段ボールを両手で力いっぱいに持ちあげ、神社を目指す。

 頭の中は、商売のことでいっぱいだ。

 よ~~~し。明日から、商売はじめるぞー。

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