開店準備 パート1
商業ギルドに行って話を聞いてみると、どうやら、いくつか必要なものがあるらしい。
ひとつに、店。
ひとつに、年間店税。
ひとつに、巫女ちゃんの身分証明書。
説明が終わった後、受付の人にそろえてもう一度来い、と言われた。なんだか、メンド―だな。ファンタジーじゃないのか?
ふーむ。店だ。店だよな。商業ギルドを出たところで俺はふーむと考える。
年間店税はこの前儲けた金で払えるはず。
巫女ちゃんの身分証明書も貸してもらえる。
あとは、店なのだ。店さえ確保できれば・・・・・・。
そうだ、店を探そう。
「えーと。不動産屋的なものはこっちにもあるのかな?」
キョロキョロと俺は不動産屋を求めてさまよう。さまよい歩く。
キョロキョロ、キョロキョロ。
でも、見つからない。
「あのー、すいませんが、この辺に不動産屋というか、建物とかの貸し借りを売りにしている店はありませんか?」
近くを歩いている人に聞いてみることにする。
「あー。それなら、すぐそこにあるよ。ついておいで」
その人についていくとそこは普通の家だった。もっと、日本の不動産屋みたいなものと思っていたが、こんなのは探しても見つかるわけない。不動産屋が隠れ家系でいいのだろうか?
こんこん、こんこんとノックをしてみる。
こんこん、こんこん。
こんこん、こんこん。
・・・・・・。
「はーいだ、ぴょん」
しばらくすると、ドアを開けて一人の人間ではなく、一人のうさぴょんが中から現れた。
身長1mくらいの女の子か女性かどちらか。かわいい身長とかわいいうさ耳。でも、髪は銀色のショートカットでシャキッとした眼鏡を装着している。服装も全体的に落ち着いた雰囲気だ。
一言でまとめると、できる系幼女なのだが、この世界の年齢はいまいちあてにならない。様子を見よう。
「あのー。今度、店を開くので不動産を買いたいのですが」
このうさぴょんが子供なら親をよぶだろう。このうさぴょんが大人なら自分で対応してくれるだろう。
「分かったぴょん。店ぴょんね。それなら、3プラチナ貨からあるぴょん。でも、この物件はあまり立地とか状態とか大きさとかよくないぴょん。おすすめしないぴょん」
おや、そのまま接客するということはどうやらこのうさぴょんが不動産屋さんらしい。どうやら、できる系幼女ではなくて、できる系非幼女らしい。あぶない。あぶない。やっぱり、この世界の見た目年齢と実年齢はイコールではないな。これからも気を付けよう。
おっと、それはおいといて。3プラチナ貨が最低金額か。
「うーん」
確かこの前、8プラチナ貨とちょっと儲けたから・・・・・・。
「予算はいくらぴょん?」
「5プラチナ貨でほしいんですけど」
「ぴょん? それならなかなかいい物件がいくつかあるぴょん。見に行くぴょん?」
「そうですか!? 見に行きます」
うさぴょんが不動産に案内してくれることになった。早速、1件目を紹介してくれるということで俺は彼女の後について歩く。彼女はぴょんぴょこ、ぴょんぴょこ歩いている。しばらく歩いたところで、うさぴょんが立ち止まった。
「1件目はここだぴょん」
そう言って、うさぴょんは一軒の建物を指さした。
「おー」
そこにはなかなか立派な建物が立っていた。大通りから近いので立地的にも悪くない。2階だてなので、居住スペースもありそうだ。
「どうだぴょん。この物件なら、立地も悪くないし、建物の状態もいいぴょん。中を見るぴょん」
うさぴょんはそう言うと、ガチャリと鍵を開けて店の中を見せてくれた。
「うぉー」
中もなかなかに立派だった。そうじをしてないのか少々埃っぽいが、商売をするには十分な広さだ。
「なかなかいいですね」
「そうだぴょん。いいぴょん」
でも・・・・・・。
「ここ、商売祈願的な巫女をおけます?」
「ぴょん? 商家つきの巫女ぴょん?」
「はい」
「いるなら、早くいうぴょん。なら、ここではだめぴょん。それなら、少し高くなるぴょんが、同じような条件でちっさい社つきの物件があるぴょん。そこに案内するぴょん」
うさぴょんは若干あきれたような顔をしてそういった後、その物件に鍵をして、また、歩き始めた。
異世界おそるべし。巫女ちゃんおそるべし。
そして、ぴょんぴょこ、ぴょんぴょこうさぴょんがしている後についていくと、しばらくして、別の物件の前で彼女が立ち止まった。
その建物を見てみると、外観は1件目の物件と同じだったが、その横に小さい社が建っていた。で、中を見せてもらうと、やはり埃っぽいがなかなかの大きさで、商売するのに十分だ。2階に居住スペースもあるようだし。よーし、ここに決めた。
「ここにします。ここに。いくらです?」
「毎度ありー、ぴょん。6プラチナ貨だぴょん」
「はい。どうぞ」
じゃりん、じゃりんと俺はうさぴょんにお金を渡した。うさぴょんは俺に権利書を渡した。
店を手に入れたぞー。
店を手に入れた俺は、さっそく、巫女ちゃんに身分証を借りて、商業ギルドに向かった。書類にいろいろと書き込み、店の権利書に巫女ちゃんの身分書、そして、年間店税に1大金貨を支払った。
こうして、俺は一土地一店の主となった。
◇
やっほーい。やっほーい。
やっほーい。やっほーい。
と、心の中で大声で歓喜のおたけびを上げながら俺は、店のそうじをしている。しばらく、そうじをしてなかったのか埃がつもっており、なかなかそうじのし甲斐がある。
ざっざっ、ざっざっ、ほうきでほこりを集める。
ざっざっ、ざっざっ、ざっざっ、ざっざっ。
ふきふき、ふきふき。雑巾がけをする。
ふきふき、ふきふき、ふきふき、ふきふき。
よ~~~~~し、きれいになった。
うーむ。店がきれいになったところで、ほかにきめることは何か?
う~~~ん。
う~~~ん。
一土地一店の主・・・・・・。一国一城の主・・・・・・。領地の名前・・・・・・。
そうだ、店名を決めないと。領地には名前が必要だ。同じように、この店にも名前を付けないと。
どんな名前がいいだろうか?
う~~~ん。異界屋?
う~~~ん。落人屋?
う~~~ん。巫女ちゃん屋?
・・・・・・、だめだ、なんかだめだ。
分からない。
ピコーン。そうだ、日本でも大手の企業は企業名が創業者の苗字だったりする。俺の苗字はプロ・・・・・・。なんだか、カッコつかないな。え~~~い、悩んでいてもしょうがない。チーン。そして、決めた。
そうだ、「異界屋プログラマー」にしよ。
そうして俺は、異世界の商店がしているように看板に店名を入れて、店の前に立てかけた。
これで、商売ができる。もっと、うはうはだ。
で、店の前に立てかけた看板を見て感慨にふけっていると――。
「あれー。なんか、新しいお店ができている。もう、売ってるの?」
と、近所の人から話しかけられる。
「え? あー。いや、まだです」
「そうなの。残念。また、くるわ」
その人はさっと帰ってしまう。
そうだ。受かれるのはまだ早い。商品を仕入れて売って、うはうは儲けないと。
おや? そういえば、商品ってどうやって仕入れたらいいんだろう? 品物は日本からこっちに持ってきたらいいのはわかるけど、お金はどうしよう。こっちで儲けたお金はまだ残っているけど、こっちのお金は日本では使えないよな。
おや~~~。どうしよう。
店を手に入れて、開店許可を取り付けて今日はうはうはに向けて大進展だったんだけど・・・・・・。
また、新たな問題が見つかってしまったな。う~~~ん。
まあ、でも、なんとかなるだろう。これまでも何とかなってきた。
よ~~~し、明日からは、日本のお金を手に入れるぞー。そして、仕入れだ―。
あれ? 行商しないの?
どう入れるか考え中です。