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ルービックキューブ 君に決めた?

 「スラー、おつりスラ」

 メタ子がお客さんにおつりを渡す。

 いつものように異世界屋プログラマの看板スライムであるメタ子は接客をしている。

 

 お客さんはどうやら、カレーを買って帰ったようだ。

 最近はカレーだけでなく、コンソメフープやらシャンプーやら人気商品が増えてきてはいるけど、やっぱりカレーの人気は根強い。

 なにやら、噂によるとカレーばかり3食たべている猛者もいるらしい。

 カレー人気恐るべし。


 「やっほー、じゃ」

 俺がそんなことをふへーと妄想していると、巫女装束の巫女ちゃんが店内に入ってきた。

 歩くたびに、けもみみとけもしっぽがかわゆく動いている。

 ふむ。黙っていればかわいいのにーと俺は思う。

  

 巫女ちゃんの業務は基本的に店の横にある社で商売繁盛を祈ることだ。

 詳しいことは知らないんだけど、ひまになったら遊びにやってくる。

 そんなんだったら、手伝ってよーと思うけど、それを言ってはいけない。危険だよー。


 「やっほー」

 「やっほースラ」

 俺とメタ子はあいさつを返す。


 「さて、なんかおもしろいものでもあるかのー」

 と、やっぱり、ひまになったから遊びに来たようだ。

 けもしっぽをふんふんとして、店内をキョロキョロと歩き回っている。


 「これはなんじゃー?」

 しばらくして、俺が棚の整理をしていると巫女ちゃんが話しかけてきた。

 何やら、お手手に何かを持っているようだ。

 

 「なに? イナリさん。今度は何をもってきたの?」

 「ほれ、これじゃー」

 巫女ちゃんはほれーと言って、俺に四角いものを手渡してくる。

 彼女の瞳が期待で光り輝いている。なんだー、なんだーという感じ。


 で、俺は手渡されたものを見た。

 おやおや、これはメンド―なものを持ってきたなーと思いながら、

 「ルービックキューブ」

 と、俺はいった。

 

 「るーびっくきゅーぶ?」

 巫女ちゃんは、はてなーという表情とぱあーっと光輝く表情をもって、聞き返してきた。

 右けもみみもはてなーとしている。


 「ルービックキューブ」

 「で、それはなんなのじゃー。なんなのじゃー」

 ピコン、ピコピコンとけもみみが左右上下に動いている。

 ふむー。なかなか。


 「ルービックキューブだよー」

 「むー、それは分かったのじゃー。なんなのじゃー」

 巫女ちゃんがすこしむすっとして、でも、聞いてくる―。

 ここらへんか。ここらへんが境界かなー。

 さじ加減がじゅーよう。


 「それは、うーん?」

 俺は、ルービックキューブを触ったことはあっても、やりこんだことはない。

 いざ、このおもちゃについて説明を求められても急にはでてこない。

 そうだなー。


 「これは、俺の世界のおもちゃでー・・・・・・」

 「・・・・・・っ、どうやって、遊ぶんじゃー?」

 「それはー」

 

 ガチャ、ガチャ、ガチャ、ガチャ。

 ガチャ、ガチャ、ガチャ、ガチャ。

 ガチャ、ガチャ、ガチャ、ガチャ。

 俺は、まず、ルービックキューブをぐるぐる回して、色をバラバラにした。


 「まずは、こうやって、そろっている色をバラバラにする」

 「で? どうするんじゃー」

 

 「それから・・・・・・」


 ガチャ、ガチャ、ガチャ、ガチャ。

 ガチャ、ガチャ、ガチャ、ガチャ、ガチャ。

 ガチャ、ガチャ、ガチャ、ガチャ。

 それから、俺は、ルービックキューブをぐるぐる回して、1面をそろえようとした。


 ・・・・・・、できなかった。

 できるわけないよー。触ったことあるぐらいだし。


 「で? どうするんじゃー。ぐるぐる回すおもちゃなのかじゃー?」

 巫女ちゃんは、あーあーとちょっと落胆した顔で聞いてきた。

 

 「いや、そういうわけじゃあ、なくて。バラバラになった色をそろえるおもちゃなんだけど」

 「じゃあ、なんでそろえないんじゃ?」

 「・・・・・・、きない」

 「ん? どういうわけなんじゃー」

 「できないんだよー」


 てんてんててー。

 てんてんててー。


 「ふはは、じゃー。ふはは、なのじゃー」

 巫女ちゃんは、文字通りに腹を抱えて笑っている。

 けもみみもけもしっぽもそれと同調するようにわっさわっさなっている。


 くそー。


 ◇

 俺は、巫女ちゃんからバカにされた日から暇を見つけてはルービックキューブを回しに回した。

 

 ガチャ、ガチャ、ガチャ、ガチャ。

 ガチャ、ガチャ、ガチャ、ガチャ、ガチャ。

 まわすよー。


 ガチャ、ガチャ、ガチャ、ガチャ。

 ガチャ、ガチャ、ガチャ、ガチャ、ガチャ。

 まわすよー。


 来る日も、来る日も回し続けた。

 で、ようやく、一面が完成するかに思えたころ。

 

 ・・・・・・・・・・・・。

 

 あきた。

 すぐに飽きた。

 2、3日であきた。


 でも、

 「なんじゃー。あきっぽいやつじゃのー」

 と、言いながら、巫女ちゃんは続けている。


 ガチャ、ガチャ、ガチャ、ガチャ。

 ガチャ、ガチャ、ガチャ、ガチャ、ガチャ。


 俺は、しょーじき、よくやるなーと思った。

 じろじろ、よくやるなー。じろじろ、よくやるなー。

 ピコーン。

 

 おや、そういえば、これほっといたらいい宣伝にならないか?

 店内でルービックキューブを回し続ける見た感じきゃわゆいけもみみ獣人。

 雇ったらいくらするか分からないけど、幸いに文句も言わずに回している。


 よ~~~し、巫女ちゃんにはこのまま働いてもらって、ルービックキューブを売るぞー。


 ◇

 結論から言うと、ルービックキューブはだめだった・・・・・・。

 いや、少しは売れた。

 ルービックキューブを一心不乱に回し続ける巫女ちゃんをみて、「おもしろそー」と子供たちがやってきて、買っていった。

 

 でも、そこから続かなかった。 

 俺は、子供から子供へと、子供から大人へと、広がっていくと思ってた。

 けど、ダメだった。

 

 で、子供になんでダメか聞いてみた。

 「あきちゃった」


 てんてれー。

 そうかー、あきちゃったかー。

 俺と、同じだねー。


 その後、ルービックキューブは店頭から姿を消した。

 で、たまにキューブマスター巫女ちゃんが遊ぶだけとなってしまった。 

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