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突撃の縦ロール

 「ご主人さま~~~。なんだか、最近変なお客さんが多いスラー」

 忙しい時間帯が過ぎて、のんべんだらりとしていたメタ子がそう言った。


 「ん? そうかー。どんなお客さんだ?」 

 店内の品切れ品の補充とかをしていた俺はそう聞き返した。


 「ほらスラー。あのシャンプーやリンスをごっそりと買っていくおかしな連中スラー」

 メタ子は最近買ってやったメイド服をひらひらさせて、ちょっと具体的に言ってくる。彼女の頭の中では具体的にイメージできているようだ。

 

 俺は、おやー? そんなお客さんいたかなーと想像してみて、「ふむー」とうなっていると、

 「ご主人様、分からないスラ? 変な言葉を使っていて何だか変な服装をしているれんちゅースラ」

 と、メタ子が言ってきた。

 

 そこで俺はピーンときた。

 変な言葉を使っていて、変な服装をしているれんちゅー。

 そういえば、いた。はっきり、いた。


 なんだか、フツ―にそのへんを歩いてたりする人とは違う言葉に服装を使っている人たち。

 そんな人たちをフツ―は見かけないんだけど、なぜか、この異世界屋プログラマ内では見かける。

 俺は、巫女ちゃんの例もあったりするから、そんな言葉でそんな服装でこの店でしかみかけないというのも、まあ、そんなものだろうなーとおもっていたけど、メタ子には違ったらしい。


 メタ子にはおかしいらしい。

 まあ、それを言うとメタ子も十分におかしい部類なんだけどなーとか思ってみる。


 「おっ、そういえば、そうだなー」

 と、俺はメタ子に返す。


 そんなことを俺たち2人が話しているとき、ガチャ―ンと音を立てて、店のドアが開け放たれた。

 

 「シャンプー、リンスはどこにありまして」

 ・・・・・・、開け放たれたドアから、それまた勢いよく店内に入ってきた女性がよーく響く声で叫んだ。


 そこにあらわれたのは、縦ロールで金髪碧眼のきれいなお嬢だった。ただし、そこまでは分かるのだが、服装がフツ―ではない。・・・・・・着物だ。下に一枚足首くらいまでのを着て、それからもう一枚膝くらいまでのを上から羽織っている。下からのぞいている着物はピンク色で上に羽織っている着物はオレンジっぽい色だ。


 で、その着物金髪縦ロールが入ってきた後から、執事服を着た老人がスーっと入ってくる。

 

 おおー、来たぞ。やって来たぞ。

 メタ子が変なお客さんがーとか言ってきた矢先に来た。

 俺が、そんなものかなーと思っていてメタ子が変なれんちゅーと思っていた人たち。


 とか思っていたら、

 「あなた、シャンプーはどこですの?」

 と、その着物金髪縦ロールが俺に問いかけてきた。

 

 「ああ、それならこっちですよー」

 と、着物金髪縦ロールを誘導して、日用品コーナーに案内する。

 着物金髪縦ロールは縦ロールをばねのようにばいーんばいーんさせて、俺についてくる。で、その後ろから、執事らしき老人がスッとついてくる。


 日用品コーナーについたので、シャンプーを俺は指さして

 「これですよ」

 と言う。


 「ムフフ、ムフフ。これが今、お茶会で有名なシャンプーですのね」

 着物金髪縦ロールはシャンプーを手に取ると、にやりとして、言い放つ。

 お茶会? よく分からないけど、そこでシャンプーすげーとなったから変なれんちゅーの間で人気が爆発したのだろうか?


 「リンスもありますの?」

 「はい、ありますよ。リンスはこっちですよ」

 着物金髪縦ロールがリンスの場所も聞いてきたので俺はこっちですよーと教える。

 

 「ムフフ、ムフフ。これで、わたくしの髪も・・・・・・。ムフフ、ムフフ」

 怖いよー。ムフフ、ムフフと笑いながらほへーという表情をしている。

 何を想像しているか分からないけど怖いよー。


 俺が、恐れおののいていると着物金髪縦ロールがこっちを向いて、シャンプーを指さして、

 「この棚にあるシャンプーとリンスをすべていただきたいのだけれど、よろしくて?」

 全部くれーと言ってきた。


 全部くれだと・・・・・・、大人買い、いやこれは大人買いではない。

 言うなれば、お嬢買いだ。

 初めてみたお嬢買い。本当にあるんだー。

 ・・・・・・、在庫まだあったよなーと俺は考える。


 「今回だけですよー」

 と俺はもうーと言う感じで答える。

 「やったですわ。でも、今回だけですの?」

 着物金髪縦ロールは不思議そうに聞いてくる。


 「そう、ですよ。今回はたまたま在庫がありましたから」

 「それでは、いくつまでならいいんですの?」

 「そうですね、常識の範囲内という言い方しかできないのですが・・・・・・」

 「あら? なんだか曖昧なこと。一人いくつまでと決まってなくて?」

 あいまいねーと着物金髪縦ロールに言われる。

 

 着物金髪縦ロールに言われて初めて「そういえば、あいまいだなー」と気が付く。

 そういえばあいまいだけど、日本ではこれが通用する。みんな知ってるからだ。

 でも、ここは日本ではない。あいまいではよく分からないのかもしれない。

 

 「まあ、5つとか?」

 「とか? やっぱり曖昧ですわ」

 

 う~~~ん、難しいなー。

 

 「お嬢様、そろそろ戻りませんと」

 俺がう~~~んとうなっていると、執事らしき老人がと着物金髪縦ロールに言った。

 「そうですわ。わたくし、忘れていましたわ。では、シャンプーとリンスをいただくわ」


 どうやら、タイムアップらしい。

 そう言うと、着物金髪縦ロールはパンパンと手をたたく。

 すると、店の外に控えていたらしい使用人と思わしき者たちがやってきて、棚にあったシャンプーとリンスを根こそぎもっていってしまった。


 唖然としていると、着物金髪縦ロールは執事らしき老人に袋を受け取って、それを俺に手渡してきた。

 どうやら、代金らしい。ずっしりしている。ずっしり、ずっしりんこ。


 「おい、これたぶん多・・・・・・」

 袋を持った感覚で俺がそう言おうとしていると、

 「またですわー」

 とか言って、着物金髪縦ロールは店を出て行ってしまった。


 ・・・・・・・・・。

 てんてんてん。


 「やっぱり、変なれんちゅースラ」

 「そうだな」

 メタ子と俺はどっと疲れたようにはーという感じになった。

 

 ◇

 後日。

 

 店内でメタ子と俺が仕事をしていると、

 ドガチャ―ンとドアが開けられて、着物金髪縦ロールがすごい形相で店内に押し入ってきた。

 急いできたのか、縦ロールがなんだかごわごわしている。


 「なんですのー。店主、どういうことですのー」

 「どういうことですのーって何かありましたか?」

 着物金髪縦ロールの問いに俺は問い返す。


 「何かありましたかではないですの。シャンプーを使ったらわたくしの自慢の縦ロールがごわごわですの」

 彼女はキ―っとなって言った。


 今度は俺はしげしげと縦ロールを見る。

 ふむ。ごわごわだ。

 しかも、彼女の口調から想像すると、急いできたからでなく、シャンプーでそうなったと・・・・・・。

 

 ふむ。ごわごわ、シャンプーかー。

 ごわごわ、シャンプー。ごわごわ、シャンプー。

 ピコーン。

  

 シャンプーとリンスの使い方を教えてなかったー。

 あのとき、ささーっといなくなったから、教えそこなったんだー。

 シャンプー→リンスを教えてなかった。 


 俺があちゃーとしていると、

 「で、どうですの?」

 と、着物金髪縦ロールが聞いてきた。


 「あー。シャンプーとリンスには使う順番があるんですよ」

 「順番?」

 

 「シャンプーを使ってそれを流した後にリンスを使うんですよ」

 「ほんとうですの?」

 「本当です。おおかた、両方いっきいに使ったんでしょ?」

 「そうでしたの」

 そんなやりとりをしていると、なんだか、着物金髪縦ロールの顔がいきいきとしてきた。おや、どうしたんだろう。


 「よかったですわー。わたくしにだけ合わないのかと思っていましたの」

 そう言うと、着物金髪縦ロールはほ~と息を吐いた。


 で、ほ~と息を吐いたかと思うと、来た時の勢いで帰っていった。

 

 ふいー。どうやら、ギロチンじゃーとかないようで安心した。

 シャンプーの使い方とか、日本では当たり前だったけど、こっちでは違うよなー。

 そうだ、シャンプーとリンスの使い方をちゃんと説明書きして、張っておこう。


 それにしても、金髪縦ロールで着物を着ているなんてどんな種類の人間なのだろう?

 フツ―の人じゃあないよな。フツ―に見かけないし。

 

 う~~~ん。まあ、いっか。

 ぱこーん。

 

 さ~~~て、そろそろ夕飯どきだー。

 今日も、疲れたなー。

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