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閑話 名もなきメタルスライムの物語

 ある日、1匹のメタルスライムが生まれた。


 「ムニャー」という鳴き声と共に誕生した。

 きれいな銀色のどろっとした小さな生き物? だ。


 いや、誕生ではないかもしれない。

 おおきなメタルスライムが分裂して、小さな2匹になった。

 2匹のうちの1匹。


 「「ムニャー」」

 と2匹はまるで別れを告げるように荒野を別の方向に向かって、ドロっ、ドロっと這い始めた。

 それこそ、ドロっとした思考しかないはずだが、ちょっと前まで一緒だった細胞に別れを言っているのかもしれない。


 ムニャー、ドロっ、ドロっ。

 ムニャー、ドロっ、ドロっ。

 と、荒野を這い続ける。

 

 やがて、荒野にポツネンと放置してあった社の前にメタルスライムはやってくる。

 その社は小さく朽ち果てていたが、雨を防げる屋根があった。


 「ムニャー」

 と、メタルスライムはその社の屋根の下にもぐりこんで、ドロッと丸くなった。

 どうやら、メタルスライムはこの社を住処に決めたようだ。

 まるで、猫のような生き物だ。鳴き声も「ムニャー」だし。

 

 その日から、メタルスライムはこの社を拠点としながら、そこいらの土に含まれる金属を食べながら、スローライフを送り始める。

 

 「ムニャー」

 と朝に起きて、ぐにゃ、ぐにゃ、ドロドロと体を変形させる運動を最初に行う。

 朝のメタルスライム運動だ。

 メタルスライムがなぜ運動を行うのかは話せないのでわからない。

 

 「ムニャー」と上に伸びる。

 「ムニャー」と左に伸びる。

 「ムニャー」と右に伸びる。

 そんなことを何度か繰り返す。


 すると、メタルスライムは満足したように「ムニュー」とうなる。

 

 で、それが終わるとメタルスライムは食事を始める。

 社を離れて、ドロッ、ドロっと荒野をさまよいながら、じゅわじゅーと食事をしていく。


 じゅわー、じゅわー、ごっくん。

 じゅわー、じゅわー、ごっくん。

 ドロリ。

 

 土に含まれる金属はちょっとなので食事に時間がかかるが、まあ、このメタルスライムには時間なんてなんのその。

 電車に乗るわけでも、会社に行くわけでもない。大丈夫なのだ。


 そうこうしているうちに食べ終わったようだ。

 ニュルーと満足そうな顔? をしている。


 満足そうな顔を浮かべたメタルスライムは社に戻っていく。

 社に戻ったメタルスライムはドロっと丸くなる。

 しばらく見ていると、「すぴー」と音が聞こえてくる。

 どうやら、寝入ったようだ。


 すぴー。すぴー。

 ドロロン、ドロロン。

 

 ぱちん。

 メタルスライムが目を覚ましたようだ。


 それから、また、社から出てきて、食事を始めた。

 じゅわー、じゅわー、ごっくん。


 食事が終わると、社に戻ってまた寝始める。

 すぴー、すぴー。ドロロン。

 

 社を拠点としたメタルスライムは一日をこんなサイクルで回していった。

 来る日も来る日も、体操・食事・おねんね・食事・おねんね。

 メタルスライムは特に退屈だと思うわけでもなく、毎日、毎日、この究極のスローライフを繰り返した。

 

 ◇

 数年後。


 数年たっても、メタルスライムは同じようなスローライフを送っていた。


 しかし、メタルスライムのこのスローライフを脅かす出来事が世に起こった。

 ・・・・・・、なんと、メタルスライムのペット人気に火がついてしまったのだ。

 女の子を中心にメタルスライムのきれいな銀色が受けたらしい。


 その結果、町にある冒険者組合にペットショップから依頼が殺到して、メタルスライム狩りが行われることになった。

 

 そのせいで、のんびーりと暮らしていたメタルスライムがいっぱいつかまってしまった。

 バッファーローのごとく狩られてしまった。

 社に住まうメタルスライムも例外ではなく・・・・・・。


 「ムニャーーー」

 と、あっけなく捕まってしまい、そのスローライフ生活に終止符が打たれた。


 ドナドナ、ドナドナ。

 ドナドナ、ドナドナ。

 メタルスライムは、かごに入れられて町に運び込まれる。

 

 ドナドナされてしまったメタルスライムはしかし、結構、たくましかった。

 「ムニャー」とかごを突破して、逃げだしたのだ。


 ムニャー、ドロドロ、ドロドロ。

 ムニャー、ドロドロ、ドロドロ。

 逃げまくる。


 逃げ切ったー。


 逃げ切ったメタルスライムはあんしんしたのか、町にあるそのへんの草むらですぴーと寝た。

 すぴー、すぴー。すぴー、すぴー。しばらく、すぴー。

 

 しばらくすると、

 「ムニャー」

 と、目を覚ました。


 目を覚ましたメタルスライムはつかまってから、何も食べてなかった。

 ので、なんかないか、なんかないかとドロドロっと探し這い始めた。

 

 なんかないかー。なんかないかー。

 ドロドロ、ドロドロ。

 ドロン。


 「ムニャー」

 メタルスライムは何かを探し当てたようだ。


 

 そして、

 「なんじゃ、メタルスライムじゃー」

 「メタルスライム?」

 

 名もなきメタルスライムは一人の人間グラマ=プロに拾われた。

 そして、名もなきメタルスライムはメタ子という名前を付けられる。


 人化したメタルスライムメタ子の物語はこのあとも続く。

 続くったら続く。

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