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従業員募集ちゅー パート2

 俺は空を飛んでいる。

 

 「やっほーい」

 飛んだことない空だ。

 雲はひと~~~つもない。

 ずーっと、あっちの方までキレイな青色が続いている。


 俺は気持ちよくなって、ずーっと、ずーっと、飛び続ける。

 ずーっと、ずーっと、飛び続ける。

 でも、なんだか、途中で疲れちゃった。


 「どこか、休めるところはないかな?」

 疲れちゃったので、休憩できる場所を探す。

 キョロキョロ、キョロキョロ。

 けど、なかなか、そんなところは見つからない。


 しか~~~し、なぜか俺は焦っていない。ここではなんでもできる気がする。

 そんなおっきなおっきな気になったので、俺は念じてみる。

 

 「なんか、出てこい。なんか、出てこい」

 

 すると、青色しかなかった空に雲がぷりんぷるんと登場した。

 ちょうど、寝るくらいのスペースはある。

 

 「やったー」

 と、俺はそこに飛び込んだ。


 すると、

 ぷりん、ぷるん。ぷりん、ぷるん。

 と、なる。

 

 気持ちよすぎたので、俺は何度も何度も、その雲の上で、もみくちゃに暴れまわった。


 ぷりん、ぷるん。ぷりん、ぷるん。

 たゆん、ぷりん。たゆん、たゆん。


 暴れまわっているうちにだんだんと眠くなっていき、ついに俺は夢の世界へ・・・・・・。


 ◇

 ・・・・・・、俺は目を覚ました。

 見たことある天井だ。天井に刻まれた歴史はまさしく昨日のものと同じ。


 だが、しかし、なんかおかしい。

 天井は見たことあるんだけど、なんだか、触ったことない感触が右腕に伝わってくる。

 ぷりん、ぷりん。たゆん、たゆん。

 そんな感触が俺の右腕を海のように包み込む。包み込むったら包み込む。


 おそるおそる、俺は右腕をごそごそと動かす。

 やはり、ぷりん、ぷりん。たゆん、たゆん、となる。海が激しく波打っている。

 だけど、

 「むみゃー」

 と、何かの鳴き声? がした。


 ん? どういうこと? 俺の部屋には俺以外の生き物はいないはず。

 でも、しっかりと「むみゃー」と鳴き声がして、今も、ぷりん、たゆんしている。

 う~~~ん、う~~~ん。ピコン。

 そうだ、メタルスライムを拾ったんだった。


 なんだーと思った。

 なんだーと思い、ばさっと、左手で掛け布団をまくりあげて、右腕の無事を確かめた。


 ・・・・・・、え?


 「キャー」

 俺は、思わず叫び声をあげてしまった。

 なんだ、なんだ。なんだ、なんだ。

 なんか、女の子がいる。なんか、女の子が裸で俺の右腕に抱き着いて寝ている。

 すべすべ、たゆんたゆん、ぷりんぷりんする。

 

 どういうことー。俺は、生まれてこのかた女の子といっしょにベッドに寝たことなんかないのに・・・・・・。それに、もちろん昨日の夜も一人でベッドに入ったはず。

 でも、現実は違う。女の子が俺の右腕に抱き着いて、裸で寝ている。

 現実と記憶が合わない。ぼけたか? いや、もしかしたら、新しい能力かも。寝ているうちに女の子と寝てしまう能力とか・・・・・・。いやいや、そんなことはないだろ。


 とか、いろいろ考えてしまう。

 考えた時間は一瞬だったはずだけど、いろいろ走馬燈のように考えてしまう。

 感触を楽しむとかじゃなくていろいろ考えてしまう。

 でも、しょーがない。だって、ファーストだから。

 

 そんなことを考えていると、部屋の外からばたばたと足音が聞こえてきて、

 「どうしたんじゃー」

 と、ドアを開けて、巫女ちゃんが登場する。


 シ~~~~~~~~ン。

 俺には、死~~~~んに聞こえたが、一瞬、そんな音が聞こえた。

 

 恐る恐る俺は巫女ちゃんの表情をうかがうが、うつむいていてはっきりは見えない。しかし、けもみみとけもしっぽの毛は逆立ち、今にも、人を一人殺してしまいそうなオーラを出していることだけはわかる。

 

 「ほう、玩具が所有者の許可なく、所有者が寝ている部屋の真横の部屋で女と同衾する。おもしろい状況じゃ。ふふ。ほれ、どうした、見といてやるから、いろいろするのじゃ」

 そう言うと、巫女ちゃんは顔をあげた。

 きゃー、こわいよー。巫女ちゃんの顔はいままで見たことがないほど無表情な怒りに満ちていた。


 「ほれ、どうした、なんもやらんのか? ほれほれ、だーいすきな反復運動をしたらどうなのじゃ?」


 やばい。やばい、という言葉しか思いつかないほどやばい。

 どうこの状況を打破するか、選択を誤ると死ぬ。

 俺は、この状況を打破する解答を脳みそをフルに使って、探しまくる。


 きゅいーん。きゅいーん。

 どこだ。どこだ。

 きゅいーん。きゅいーん。

 ピコーン。解答がないことが分かった。


 解答がない問題も存在するの?

 そんな疑問を抱いて、俺は死を覚悟した。


 さて、逃げよう。

 俺はその場から逃げようと、右腕につかまっている女の子を振りほどこうとする。


 そんなとき、

 「むにゅー、どこ行くスラー」


 「「スラ―?」」

 俺と巫女ちゃんは顔を見合わせて、ポカーンとした。


 「そうスラ、わたしはメタルスライムですスラ」


 ◇

 「苦しい、スラー」

 「うるさいのじゃー。裸はいかんのじゃー」

 巫女ちゃんは、メタルスライムを名乗る女の子をかけ布団でぐるぐるにする。

 そして、こてんとベッドの上に乗せた。

 顔だけが布団から出て、こっちを向いている。 


 俺は、巫女ちゃんに疑問に思ったことを聞いてみる。

 「イナリさん。メタルスライムって人化するの?」

 「いや、そんなことは聞いたことないのじゃー」

 「だよねー。しないよね」

 やはり、メタルスライムは人化しないようだ。そうだ。そうだ。そんなことあってたまるか。


 でも、メタ子? は

 「そうスラ。普通は、メタルスライムは人化できないスラ。わたしも、今日初めて人になったスラ。不思議スラ」

 と、これには同意しながら、メタルスライムだぜと言う。

 

 「うむ。もしかしたら、あれかもなのじゃー」

 巫女ちゃんが、ピコーンと何やら思いついたご様子。

 

 「あれ?」

 「ふむ。あれじゃ」

 「あれ?」

 「あれじゃ」

 なんだか、既視感のある抽象的な感じになってしまった。これでは、いけないので軌道修正をする。

 

 「イナリさん、あれじゃわからないよ」

 「ほら、あれじゃよ。お主が持ってきた缶詰じゃよ」

 にやり、と巫女ちゃんが言う。

 「缶詰?」

 缶詰?

 「昨夜のことを思い出すのじゃ。メタルスライムが缶詰を食らっておったのじゃー」

 そして、巫女ちゃんが得意げに言い放った。ピンピコ、ピンピコとけもみみが動いている。


 「そういえば、そうだ。う~~~ん。でも、しかし。いや、ここは異世界だ。そういうこともあるかも。・・・・・・メタ子、缶詰を食べた後、何か体へんじゃなかった?」

 俺は、疑問を解決するためにメタ子? に問いかけた。


 「そうスラねー。・・・・・・、そういえば、あの缶詰を食べた後、しばらくは大丈夫だったスラが、急に体が熱くなってきたスラ。それで、気が付いたらあなたのベッドにいたスラ」

 メタ子? が掛け布団から顔をのぞかせながら説明した。


 「ふーむ、なのじゃー。ほぼ間違いないのじゃー。メタルスライムは異界の缶詰に含まれる金属を食べて、人化したのじゃー」

 巫女ちゃんがそう断言する。


 「だとして、どうするかだなー。やっぱり、ペットショップ行きか・・・・・・」

 う~~~ん、とうなって、俺はつぶやいた。


 すると、メタ子? が

 「いやスラ~~~。ここにおいてスラ~~~。もう、あの缶詰がなくては生きていけないスラー」

 と、ぐすんぐすん言い始めた。

 

 ぐすん、ぐすん。

 じゅわ、じゅわ。シュワ、シュワ。

 ぐすん、シュワ、じゅわ。

 

 ・・・・・・ん?

 おや、なんだか、じゅわじゅわいったと思ったら、ふとんからぷしゅーと煙が立ち始めた。

 巫女ちゃんは、メタルスライムは金属を溶かすとか言ってた気がするけど、少なくともこいつは布団も溶かすようだ。

 くそー、俺がかかわるやつはなんでこうも強硬派なのか?


 とはいえ、ペットを飼うつもりはない。俺は、ぐるぐる、ぐるぐると頭を回転させる。

 ぐるぐる、ぐるぐる。ぐるぐる、ぐるぐるん。

 そうだ、人化できるってことは接客できるってことだ。そうに違いない。

 

 「店員ゲットだぜ」

 

 この日、俺は念願の店員を確保できた。

 名前は、メタ子。店の従業員兼ペット。

 人化後は、140cmの身長に銀髪で銀色のひとみを持ち、きれい系。

 たゆんたゆんする体の持ち主。でぶではない。でも、たゆんたゆんしているところがある。

 

 しかも、給料は缶詰の金属だけでいいそうだ。

 とはいっても、いろいろと他にも必要なものはあるだろうし、そういった場合はその都度、支給という形をとる。


 こうして、新たにメタ子を従業員に迎えて、異世界屋プログラマはますます繁栄していくのか?

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