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閑話 巫女ちゃんの一日

 巫女の一日はけっこう忙しい

 「ふわー、眠いのじゃー。でも、起きるのじゃー」

 巫女ちゃんは、眠たいお目目をこしこしして、ベッドから起き上がる。

 巫女になってけっこう経つ彼女だが、朝起きるのは苦手だ。


 ベッドから起き上がった巫女ちゃんは部屋着をするすると脱ぐ。 

 するする、するする。

 するする、するすると、衣擦れが聞こえる。

 

 つるーん。

 すっぽんぽんになる。


 これは別に巫女ちゃんが変態とかではなく、古来より巫女は装束を着るときに、すっぽんぽんになるおきてがあるのだ。

 決して、変態ではない。


 「よいしょ、よいしょじゃー」

 すっぽんぽんになった巫女ちゃんは、巫女の仕事着である白衣と緋袴をよいしょよいしょと着ていく。

 ぴしっと最後まで着終えると彼女は満足したようにフンスーと胸を張る。

 巫女ちゃんのお胸は貧相だが、巫女装束にはそれがはえている。それが正義なのだ。

 イッツ、ジャスティス。


 着替えの後は、朝食である。

 「朝食なのじゃー。でも、どうせ、かったいパンなのじゃー。やる気でないのじゃー」

 だが、そんなに豪華な食事をとる余裕はこの神社にはない。巫女ちゃんは、けもみみとけもしっぽをだらりとして、脱力してしまう。

 「さすがにあきたのじゃー」

 彼女もそれなりに生きてきたけもみみ獣人である。神社で出されるかったいパンにはあきあきなのだ。


 朝食を終えた巫女ちゃんは、本殿に向かい神様に挨拶をする。

 「神様、今日もよろしくなのじゃー」

 巫女ちゃんは、正座をしたまま、礼じゃー、礼じゃー、拍手じゃー、礼じゃーとする。


 挨拶を終えた巫女ちゃんは閉じられた門まで行き、

 「開も~~~んなのじゃー」

 と、閂をずらして開門する。

 非力な巫女ちゃんにはなかなかに大変な作業のようで、ふひー、ふひーと荒く呼吸をしている。

 

 それから、ふひー、ふひーと巫女ちゃんは苦しそうにしながら、用具入れから掃除道具を取り出し、境内をはき始めた。

 ざっざ、ざっざ、ざっざ。

 ざっざ、ざっざ、ざっざ。

 

 掃除を終えた巫女ちゃんは神社に戻り、昼食を食べる。

 しょーきゅーし。


 それから、

 「う~~~む、じゃー。今日も、祭祀の予定が入っているのじゃー。大変なのじゃー」

 昼食を終えた後に巫女ちゃんは今日入っている祭祀の予定を確認して、大変じゃーとなる。

 

 「今日は、あそこで地鎮祭があって、それから命名もするのじゃー」

 そう言うと、巫女ちゃんはいろいろと準備を始めて、地鎮祭に向かう。


 てくてく。てくてく。

 てくてく。てくてく。

 とうちゃーく。


 「巫女様。本日はよろしくお願いします」

 「うむ、なのじゃー。まかせるのじゃー。わしにかかれば、神様もよろしくなのじゃー」

 巫女ちゃんは神様に土地利用のお願いをするために、準備を始める。


 そして、

 「神様、よろしくなのじゃー」

 「神様、よろしくなのじゃー」

 と、幣を左手でばさばさしながら、土地に酒を振りまきまくる。

 「神様、よろしくなのじゃー」

 

 ふりまき、ふりまき、ばさばさ、ばさ。

 ふりまき、ふりまき、ばさばさ、ばさ。


 地鎮祭を終えると巫女ちゃんは神社に戻り、命名を始める。

 「う~~~ん。こういうのがよいか? でも、最近はああいうのがはやっておるようじゃし~」

 う~~~ん、う~~~んと考えている。

 ・・・・・・ピコーン。

 「そうじゃ。この名前にするのじゃー。これでいいのじゃー、感がそういっているのじゃー」


 最後に、

 「閉もんじゃー」

 と、門を閉めて、閂をする。


 こうして、巫女の一日は終了を迎える。

 一日、それなりに忙しいながらも、単調である。

 しかも、巫女ちゃんは結構長いあいだこのようなことを続けている。


 だから、巫女ちゃんは、いつもいつも最近は考える。

 「つまらないのじゃー。何かおもしろいものでも落ちてないか? なのじゃー」


 巫女ちゃんがグラマ=プロと名乗る青年と会うのはもう少しあとになるが、この彼女のささやかな願いを近くにいた超越的な何者かが聞いていたかどうかはその超越的な何者かにしかわからない。


 では、私は何者か? だって、さて、何者でしょーね。

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