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従業員募集ちゅー パート1

 知らない天井だ。

 いちおう、お約束をかましてみるが、異世界にきて2度目である。あきあきだー。でも、2度あることは3度ある。今度はいつかなー。

 

 ベッドに俺は寝ていたようだ。ん~~~? そうだ。ここは店の2階にある俺の部屋だ。たしかー、あまりに昨日お客さんが多かったので疲れ果てて、そのままここにきて寝てしまったんだっけなー。


 「ふいー」

 と、俺はベッドから降りて、今日もがんばるぞーと、体を伸ばした。

 それから、朝食を食べるために共同ルームに向かうことにした。


 共同ルームにはすでに巫女ちゃんがやってきており、まだかまだかと、俺を待っていた。

 「イナリさん、早いね。おはよう」

 「おはよう、なのじゃー」

 「わざわざ、待ってくれてたの? 適当に食べてくれててよかたのにー」

 意外に、そういうところはちゃんとしているのか? と俺は感心した。


 「何を言っているのじゃー。玩具が壊れてないかどうか、確認しているだけなのじゃー」

 巫女ちゃんがぷりぷりと言ってのける。玩具って・・・・・・。

 「玩具って。いつから、俺はイナリさんの玩具になったの?」

 当然の質問を俺は返す。


 「拾ったときからじゃー」

 拾った時からだとー。確かにあのとき、「暇ぶつしになるわい」的なことを言ってた気がするけど、玩具見つけたやったー、という感じだったのか?


 俺と巫女ちゃんはそんな会話をしながら、今日も今日とて稲荷ずしをぱくりと食べた。彼女の要望で朝食は稲荷ずしオンリーだ。残された人生の1/3の食事が稲荷ずしにルーティーンされてしまったかっこうだ。おりゃー、スポーツ選手じゃないぞー。なんとか丸じゃないぞー。


 巫女ちゃんと食事を終えたあと、俺は歯磨きをするために外に出た。シャカシャカと歯を磨きながら、昨日のこととを考える

 シャカシャカ。


 昨日はお客さんがいっぱい来て大変だった。ずーっとあの状況は続かないにしても俺一人では無理だ。店員を雇う必要がある。う~~~ん。

 う~~~ん。シャカシャカ。

 う~~~ん。シャカシャカ。


 ピコーン。そうだ、とりあえず、店員募集の張り紙でも張っておこう。


 歯磨きを終えた後、俺は従業員募集用のチラシを作った。俺は異世界の字が書けなかったので巫女ちゃんにも手伝ってもらった。彼女は「業務外イナリズシじゃー」とか、ぶつぶつ言ってたけど手伝ってくれた。

 で、それを店のドアにぺたんと張り付けた。


 チラシの内容は、

 「異界屋プログラマの従業員募集。朝の10時から昼の5時まで勤務。給料は相談の上、決定」

 とした。


 よ~~~し、今日もがんばるぞー。


 ◇

 朝の10時になった。

 開店だ―。


 お客さんをくる。

 お客さんをさばく。

 

 お客さんがおーぜいくる。

 お客さんををおーぜいさばく。


 ぜーはー、ぜーはー。


 昼の5時になる。

 閉店する。


 今日も、昨日と同様にお客さんがいっぱいやってきた。開店ロケットブースターが続いているとはいえ、これじゃあ仕入れにいけない。カレーがやはりいっぱい売れて、その他のものもちらほら売れた。結果、品薄になっている商品も出てきているのでそろそろ仕入れに行きたいが、今日もつかれた。


 その後、あまりいろいろ覚えてないが、てきとーにイナリさんと話して、夕食を食べて、すぐに部屋のベッドで眠りに入ってしまった。ゆったりできてないぞー。

 

 ◇

 じゅわー。シュワシュワ。じゅわー。シュワシュワ。

 じゅわーーー。シュワシュワ。


 パチリと俺は目を覚ました。あたりが暗いからまだ夜のはずだ。


 じゅわー。シュワシュワ。じゅわー。シュワシュワ。

 じゅわーーー。シュワシュワ。


 階下の店から何か怪しい音が聞こえる。じゅわ、じゅわという音がする。

 なんだ、なんだーと、俺はベッドから降りて床に耳をつける。やはり、じゅわ、じゅわと音がする。

 

 こわいよー。こわいよー。

 じゅわ、じゅわと音がするものなんておいてないよー。

 何が起こっているの? 俺の店で。

 

 よ~~~し。


 ・・・・・・。


 「イナリさん~~~ん。イナリさ~~~ん」

 巫女ちゃんの部屋のドアをどしどしと俺はたたく。

 どし、どし。どし、どし。

 「イナリさん~~~ん。イナリさ~~~ん」

 

 「なんじゃー。なんじゃー。今、何時じゃとおもっとるんじゃー」

 ドアをどしどしとしばらくたたいていたら、巫女ちゃんが出てきた。けもみみとけもしっぱの毛が逆立っている。ずいぶんご立腹のようだ。

 でも、それどころではない。いまこそ、巫女ちゃん大明神の出番だ。


 「大変なんだよー。店からなんか怪しい音がするんだ。じゅわじゅわなっているんだ」

 「なんじゃー。じゅわじゅわじゃとー。で、なんでわしを起こすんじゃー」


 「いやいや、イナリさん、巫女でしょー。こんなときこそ、力を発揮してよー」

 「こっちこそ、いやいやじゃわい。別に巫女は怪奇現象に対応しとらんわい」

 えー。怪奇現象対応じゃないのー。巫女ってそういうもんじゃないのー。

 

 でも、それでもいい。いっしょに確かめにいく仲間を手に入れられればそれでいい。


 俺は巫女ちゃんの手を強引に引っ張って、2階から1階へ降りていく。巫女ちゃんは、じゃーじゃーと文句を言っている。どんどん、じゅわじゅわの音が大きくなっていく。

 で、1階に降り立つ。


 じゅわじゅわ、じゅわじゅわ。

 じゅわ、シュワ―。

 どうやら、音は缶詰コーナーの方からなっているらしい。


 おそる、おそる、俺は巫女ちゃんを引きずって、缶詰コーナーににじり寄っていく。

 こわいよー。こわいよー。

 そして、意を決して俺はじゅわじゅわの正体を覗き見た。


 ・・・・・・、なんとそこにいたのはきれいな銀色をしたどろっとした生物であった。きらいな銀色のどろっとした生物が缶詰をじゅわじゅわ溶かしていた。


 「なんじゃ、メタルスライムじゃー」

 巫女ちゃんはそう言うと、なんじゃなんじゃ、こんなことで起こしおってー、とぷくっとしていた。

 「メタルスライム?」

 「そうじゃー。メタルスライムじゃ。お主のところはどうだか知らんが、この世界にはスライムというやつがおっての、メタルスライムはその一種じゃ。おおかた、野良メタルスライムが缶詰の金属にひかれてやってきたんじゃ」


 「野良メタルスライム?」

 「そうじゃ。野良メタルスライムじゃ。メタルスライム自体はこの辺に住んではおらんのじゃが、ペットで飼うやつがおってのー、捨てられてか逃げたかしたやつが野良なるんじゃ。そいつが腹でも空かせてやってきらのじゃろ」

 なんだ、それ。犬、猫じゃなくて、こっちではこんなのがペットになるのかー。起きたら、襲われて、死んでたーなんてことにならないのかな?


 「で、どうしたらいい?」

 犬、猫ならともかく、メタルスライムの扱いなんてわからない。ここは、異世界の住人である巫女ちゃんに聞くにかぎる。

 「そうじゃのー。とりあえず、お主が異界から持ってきたダンボール? にでも入れて部屋にでもおいておけばいいのじゃー。メタルスライムが食べるのは金属だけなのじゃー。それで明日ペットショップにでも売りに行けばいいのじゃー」

 おや? 俺の部屋にこんなよくわからない生物を置けとおっしゃる。


 「なんで、おれ・・・・・・」

 と、俺は反論しようとするが、

 「これ以上、店が荒らされてもたまらんしの」

 と巫女ちゃんに返される。

 

 ここに、階下じゅわじゅわ事件は一応の解決を見た。

 だが、犯人が店を再び荒らす危険にあったため、よくわからない生物を一晩俺が見ることになる。

 俺は、メタルスライムを段ボール箱に入れて部屋に持っていき、ベッドに横になり、はやく従業員来ないかなーと思いながら、眠りについた。

 

 あーした、従業員こないかな~~~。


 スヤスヤ。

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