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落人

 仕事を辞めてやった。

 

 空は、青く、とても青く、頭上に広がっている。  


 プログラマーだった。

 学校を卒業してから、昼夜を問わずに働いた。仕事は、やりがいのあるもので嫌いではなかった。

 でも、ある時、急にやめたくなった。


 よし、辞めよう。辞めてやろう。

 思い立ったがなんとやら。次の日には、上司に、一身上の都合でひと月後に辞めるといい、辞表を渡した。

 それからというもの、仕事の引継ぎやらなんやらで一か月はあっという間に過ぎていった。

 

 そして、今日。

 「今まで、ありがとうございました」

 

 仕事を辞めてきた。


 なぜ、辞めたくなったのかははっきりしないけど、辞めた今はとても気分がすっきりしている。

 就職してからというもの仕事が忙しすぎて、空が青いことを考える暇さえなかった。

 でも、この頭上に広がる空に向かって「ヤフー」と叫びたいほど、青々としているのが分かる。

 

 会社を出て家に帰ろうかと思ったところで、ふと、お稲荷さんがついた。

 ごくごく小さい、お稲荷さんだった。

 こんな所にお稲荷さんがあるなんて、初めて知った。数年会社に勤めて初めて・・・・・・。

 会社を辞めてすっきりした効果なのか?


 仕事を辞めた日に初めて気が付いたお稲荷さん。これも何かの縁かと考えて、近くのコンビニに行き、稲荷ずしを買い、お稲荷さんにお供えした。

 信心深い方ではないけど、これも何かの縁。お召し上がりくださいな。

 それから~~~、確か、2礼2拍手1礼? だったよな。

 

 2礼・・・・・・。

 2拍手・・・・・・。パンパン。

 目を閉じて・・・・・・。

 1礼・・・・・・。

 目を開ける。


 さて、家に帰るか。駅に向かって歩いていく。

 これでこの町ともおさらば、と周囲を見回しながら、駅に向かってすっきりと歩いていく。

 しかし・・・・・・?


 何だか、若干・・・・・・・というか、かなり知っている街並みと違うような。

 立ち止まり、これは夢かと思いほほをつねってみるが、痛い。夢ではなさそうだ。

 立ち並んでいる建物が、見知っている建物でない。レンガ作りの、1階だてや2階だての建物だ。いままで、ビルジャングルに囲まれていたはずなのにこれはおかしい。

 で、その建物の看板には知らない文字で何かが書かれている。

 

 立ち尽くす。

 先ほどまで、ビルジャングルにいたはずがいきなり見たことも聞いたこともない場所にいる。

 思考がフリーズする。

 行動がフリーズする。

 

 「そなた、落人じゃろ?」

 道のど真ん中に立ちフリーズしている俺に誰かが話しかけてきた。

 フリーズからよみがえり、声のした方向を見ると誰かがいた。


 かわいいかわいい女の子だった。年のころは18歳くらいで、身長は、160cmくらい。白衣と緋色の袴を着ている。この服装は見たことがある。どこかの神社の巫女さんだろうか?

 ・・・・・・おや、服装に気を取られて気がつかなかったけど、あの頭についているあれはもしかして、”けもみみ”というやつでは――。

 じろじろ、じろじろ、じろじろ、じろじろじろじろ・・・・・・・。

 このこは、俗にいうけもみみ獣人というやつか。

 

 「そなた、何をじろじろ見ておる」

 けもみみ巫女ちゃんは少し不機嫌な表情をして問いただしてくる。しまった、すこしじろじろ見すぎたようだ。

 俺は巫女ちゃんの方向を向き笑顔を作る。

 「いや、ちゃっと珍しかったから」

 

 「ほう、珍しいとな。何が珍しいのじゃ?」

 何か思い当たったのか、したり顔をして巫女ちゃんは問いかけてきた。

 「・・・・・・。そのけもみみとか、ふりふりのしっぽとか」

 なんと、けもみみだけでなく巫女ちゃんにはしっぽまであった。ふりふりしている。

 「そうか、そうか。やはりな。そなたはやはり落人のようじゃ」

 

 「落人? 俺は武士でもないし、落ちのびてもないよ。いや・・・・・・、ある意味”落ち”ては来ているけど」

 「いやいや、落人はそんな意味じゃない。異界から落ちてきたものをそう呼んでいるんじゃよ」

 「異界から落ちてきたって、分かるの?」

 「そりゃ、分かるわい。キョロキョロと周りを見ていたと思えば急にフリーズして、きわめつけは獣人が珍しいときている。それに、面妖な服装をしておるしの」

 「面妖な服装?」

 俺は、キョロキョロと周りを見渡して、そして、自分を服装を見た。

 確かに。会社帰りだから俺の服装はスーツだ。でも、そこいらを歩いている人の服装はスーツではないし、日本でも見たことがない。なんだか、古いし・・・・・・。


 「そんな言葉があるってことは、俺みたいな人いるの?」

 「うむ。いることにはいる。少ないがの」

 なんてことだろうか。今までの人生は普通といえば普通だったけど、ここにきてすごく不思議な・・・・・・、そうファンタジックな世界に迷い込んでしまうとは。


 「そうじゃ。落人ならなんも分からんじゃろ? なんなら、しばらくうちに泊まっていけばよいわ。わしは、神社で巫女をやっておる。その神社の敷地内に宿泊用の建物があって、部屋は余っておるからの」

 「いいのか?」

 「いいんじゃ、いいんじゃ。落人を拾うなんて珍しいからの。いい暇つぶしになるわい」

 巫女ちゃんは、右けもみみをぴこりと動かしてにやりと笑い、そう言った。

 なんだかおもしろい玩具を見つけたといわんばかりのものいいだけど、まあいいか、泊めてくれるんだし。

 

 「じゃあ、ついてくるのじゃ」

 そういった巫女ちゃんについて神社にたどり着いた。

 神社は、すぐ近くにあった。

  

 「ほれ、ここがわしが巫女をしている稲荷神社じゃよ。なかなか、立派じゃろ」

 巫女ちゃんは、貧相な胸を張り得意げな顔をして、そう言った。しっぽがぴこぽこ左右に動いている。

 なかなかに立派な神社だ。敷地はなかなかに大きいし、そのなかなか大きい敷地に鳥居・楼門・拝殿・本殿があり、そのほかにも何か建物がある。

 

 「あそこにある建物が宿泊施設じゃ。その一部屋を貸してやるからついてくるのじゃ」

 そう言った途端に巫女ちゃんは宿泊施設の方に歩いて行ってしまう。

 「ああ、おい・・・・・・」

 おーい、巫女ちゃん。なかなかにせっかちな巫女のようだ。

 巫女ちゃんについて宿泊施設の中に入り、ある部屋の前までついていく。


 「ここをしばらく貸してやるから、好きにするのじゃ」

 部屋の大きさは5畳ほどでベッド・机・いすだけが置いてある。なかなかにシンプルな部屋だ。でも、居候の身、贅沢はいうまい。

 「ありがとう。助かるよ。しばらく、やっかいになるから、何か手伝おうか?」

 いくら俺でも、なにもしないままに居座るのは気が引ける。

 「そうじゃの。この神社にはわししかおらんから、雑事に神事にと何かと大変なんじゃ。さすがに、神事はダメじゃから、雑事を手伝ってもらおうかの。まあ、にしてもじゃ、今日はゆっくり休むのじゃ。雑事は明日からでよいわ」

 そう言って、巫女ちゃんはどこかにいってしまう・・・・・・。

 

 さて、疲れたとりあえずイスに座るか。よっこらせっと。

 ボケー。なんだか、今日はいろいろありすぎて疲れたな。とか、しばらく考える。


 「ほら、今日はこれを食べて寝るのじゃ」

 「わっ・・・・・・。巫女ちゃんか、びっくりするだろ」

 巫女ちゃんが急に現れて、机の上に何かを置いた。どうやら、パンのようだ。

 「今、何か聞き捨てならない呼び方をされた気がするのじゃが、まあいい。その辺は明日にするかの。じゃあ、今日はさっさと休むのじゃぞ」

 巫女ちゃんは、急に現れたかと思うとそんなことをいって、急に立ち去った。せっかちな巫女ちゃんである。


 パンを食べてベッドに横になる。

 今日は、いろいろなことがあった。会社を辞めた。異世界に来た。巫女ちゃんに拾われた。

 うん、本当にいろいろなことがあった。

 何かよくわからないファンタジックな世界に迷い込んでしまったようだけど、いい出会いがあった。プラスマイナスでいうと、けもみみ獣人の巫女ちゃんに会えたから、プラス100点は固いな。

 そんなことを思いながら、いつの間にか俺は眠りについていた。

おそまつさまです。

粗小説ですが楽しんでもらっているでしょうか?

とりあえず、書いたものをupしただけなので、誤字・脱字や前後関係おかしいところとかあるかもしれません。

土日あたりに推敲を行う予定です。

では、では。

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